19.魔力測定
ローブの着方を正されたあの日以来の、魔術の授業だった。
先生は私を見ると、小さく頷いて「いいですね」と微笑んだ。
ちゃんとローブ着てますよ。
トーマ様に怒られるの嫌ですもん。
まずは基本ということで、自分の魔力を測定してみよう、とのことだった。
丸い手鏡のような魔道具を使ってするらしい。
そう言えばオーウェン様も、これと同じものを持ってた気がする!
「これを手のひらに乗せてください。出来たらもう片方の手でそっと鏡にかざします。魔力を鏡にうつすイメージで流していきます。何色に変わったかチェックしてくださいね。おそらく今の皆さんなら学科に関係なく、最低でも鏡の色が青になると思います」
では始めてください。
先生の言葉に、生徒たちはいっせいに手鏡に向き合った。
周りの様子を見ていると、手の中の鏡が、青くなる子、紫になる子が多いようだった。
赤い子も少しいて、彼らはみんなから「すごい!」と驚かれている。
そしてびっくりしたのは、ふと見たトーマ様の鏡も赤かった。
さすが、お城仕込みの魔力ですね!
ロイ君が「お前、教養科だからってオールマイティすぎねぇか?」と文句を言ってるのが見えた。
先生が教室を回りながら、「魔術科なら紫は欲しい所ですね。赤くなったら充分です」と言った。
なるほど。
魔術科は紫が基本というところなのね。
アイナちゃんを見ると、彼女は青になっている。
「綺麗な色ですね!」
「ありがとう!リラちゃん魔術科だし、紫になるのかな?」
にこにこ笑うアイナちゃん。
よし、私も挑戦だ!
ということで鏡を手に乗せてみたけれど……。
「あれ?」
何も変わらない。
壊れてます?
鏡の裏表を確かめ、なんどもやってみたけど、鏡の色は変わらなかった。
先生が各生徒を回って、色のチェックをし始めている。
「あれぇ?なんでですかね?」
「リラちゃん大丈夫?」
アイナちゃんが本当に心配そうに私を見る。
やり方が違うのかしら?
「先生!私、全然光りません!」
さっと手を上げて大声でそう言ってみた。
するとクラス全員がばっと私を見る。
「またお前か」感がすごい。
「あら、壊れてるのかしらね?」
そう言って先生が、鏡を別のものと交換してくれた。
けれど……光らない。
「ファルケさん、確か魔術科だよね?こないだ魔術師団に入りたいって言ってたし」
「え、でも魔術科で光らないとかあるの?」
「いや、ないでしょ?」
「どうやって入試通ったんだろ?謎」
そんな声がちらちらと聞こえてくる。
あぁ、まずい。
不正入学疑惑が出てしまうわ!!
「先生、どうしたら魔力を流せますか?」
すがるように先生を見ると、先生はしばらく考えてから「あぁ、そういえば」と言った。
「ファルケさん。あなた、確か薬学科も受けてましたよね。そうしたら、魔力はあるはずですから、落ち着いてやってみてください。ポーションやエーテルを作る時と、同じ要領で魔力を流すって薬学科の先生がおっしゃってましたよ」
「なるほど!わかりました!」
流すってそういう意味ね!
私はもう一度、丸い鏡を手にのせると、エーテルを作る要領で魔力を流してみた。
オーウェン様へのエーテルを作る時と同じように……。
そう思って、手のひらに魔力を集めて集中した瞬間だった。
「!!」
「わぁ!先生、光りました!でもこれ色、変じゃないですか?」
私の鏡はオレンジ色に光っている。
「あら!!すごいわね」
先生が目を丸くした。
クラスメイト達もざわついている。
「リラちゃん、すごすぎる!!」
アイナちゃんが、両手を口に当てて驚いていた。
「え、なんですか?なにかまずかったですか!?」
びっくりして鏡をぽいっと机に置くと、先生が言った。
「ファルケさん、この鏡はね、魔力に反応して色が変わるのよ。
青、紫、赤、オレンジ、黄色、最終的には白く光ります」
「え、ってことは魔力がちゃんとあるってことですね?」
「魔術科の平均が紫ですから、今オレンジのあなたは、学年でもトップクラスですね」
なんと!
驚いてしまう。
でも、そんなことよりも確認したいことがあります!
「先生、確かオーウェン様はこの鏡を持っただけで黄色く光ってました!それってものすごいってことですよね!?」
「え、えぇと……魔術師団の団長ですよね?」
「はい!!」
「またオーウェン様かよー」
「ブレないねーファルケさん!」
面白がる声が聞こえてきたけれど、なんとなく親しみを込めた言い方だった。
「あなた方が今使っている鏡は学生用です。魔術師団が使っているものは、もっと判定がシビアなので……。触れるだけで黄色く光るのは、さすが天才魔術師といったところですが……ファルケさん。もう少し現実的なところを見てくださいね」
先生の言葉がすごくうれしかった。
やっぱりオーウェン様は天才だったのね、と改めて思えたからだ。
「ファルケさん、団長への夢に一歩近づいたな!」
「ありがとうございます!オーウェン様に向かってがんばります!!」
私の宣言に、クラスのみんながぱちぱちと拍手をしてくれたのだった。
「すげーな、リラ。一気に味方につけたぞ」
「ほんと。おもしろいね」
ロイの言葉に、頷きながらトーマが満足そうに笑う。
「飼い主が自分の犬に満足してる、みたいな顔してるぞ」
「あぁ、言われてみればそんな感じかもしれない」
からかうつもりが、真面目にそう答えられてしまい、ロイは肩をすくめるのだった。




