18.女子ってこんなんなの?
その日のお昼休みだった。
アイナちゃんと学食へ行ったら、トーマ様とロイ君がいた。カイル君も一緒だ。
「おー、リラとアイナ。ここ空いてるぞー」
ロイ君が手を上げて、目の前を指し示した。
「ありがとうございます」
私とアイナちゃんが座ると、トーマ様と目が合った。
「リラさ、オーウェンのローブ話。あれはちょっと、クラスのみんながドン引きだからね?」
いきなり言われて、え?と固まる。
ロイ君とアイナちゃんが苦笑した。
「え、なになに?」とカイル君が興味津々で身を乗り出す。
「そんなに変でしたか?」
「魔術科の生徒ならまだしも、他の学科はそこまでオーウェンのこと知らないでしょ?」
「え!そうなんですか!?」
思わずアイナちゃんを見ると、彼女は申し訳なさそうに言った。
「うーん……そうだね。存在は知ってるけど、ローブの着方とかそこまでは全然……」
「だいぶマニアックな情報だったよな」
ロイ君はそう言って頷いている。
「……そうだったんですね。オーウェン様の素敵さを暴露してしまって……これでライバルが増えてしまったらどうしましょう!?」
「その心配はないと思うよ」
きっぱり言うトーマ様を、ロイ君が笑いながら小突いている。
「でも、トーマ様がオーウェン様のすばらしさを、さらにお伝えしてくださってましたよね!?あれがとどめになってるかもしれません」
「たぶん大丈夫だよ。というかそもそもの確認だけど、リラはこの学校を卒業して、魔術師団に入るというのが目標なんだよね? 僕はそう思ったから先生に聞いてみたんだけど……」
「そうですね。オーウェン様の近くに行けるならどこでもいいんですけど、一応魔術師団かなと思ってます。でも、最終的な目標はオーウェン様と結婚することですね!」
私が力強く語ると、トーマ様とロイ君が「ふぅん」と気の抜けたような返事をした。
ちゃんと聞いてました?
するとアイナちゃんから、ローブのくだりを聞いたらしいカイル君が言った。
「リラちゃんは、どうしてそんなにオーウェン様が好きなんだ?」
理由を知っているトーマ様以外の三人が、私を見る。
「えーそれ聞いちゃいますー?やっぱりあのすべてを見透かすような紫の瞳と~、魔術師なのにすごく背が高くて~……」
「あ、ごめん。そうじゃなくて、『好きになったきっかけ』みたいなのってないの?」
「あぁ!そっちですね!覚えていますよ。私あの日のことをはっきりと!
そう、忘れもしません。あれは私が四歳の時でした。父の職場の王宮内薬局について行ったんです。
そこで、オーウェン様と出会いました。
初めて見た時からカッコいいなーって思ってたんですけど、オーウェン様が、薬局員のクレアさんをからかうようにお話をされていたんです。そこからですね」
「……え?」
「なにが?」
うっとりとあの日のことを思い出す私に、その場にいた三人がきょとんとした。
トーマ様だけがにこやかに私を見る。
「リラ。あんまり伝わってないみたいだよ」
おや、そうでしたか!
「私も、オーウェン様にからかわれたいな~って思ったんです」
ぐっと力を籠める私。
ぽかんとする皆さん。
そして、トーマ様は笑いをこらえるように横を向いていた。
「Mっ気あるんだね、リラちゃん」
アイナちゃんがズバリとそう言った。
「そうなんですよ、私の性癖をあの人が決めてしまったんです。責任取ってほしいですよね!」
「俺、よく知らないけどそういう人なんだ? オーウェン団長っていうのは」
ロイ君の言葉に、私ははっとした。
しまった!
オーウェン様の魅力はこんなものじゃないってことを伝えなければ!!
「あのですね、それだけじゃないですよ!ちょっと意地悪なところも魅力なんですけど、魔術の才能も好きだし、なんだかんだ面倒見のいい所も好きです。それから顔だってもちろんかっこいいし、もう存在?そのものがヤバいんですよ!わかってくれます!?」
ぐいぐい身を乗り出す私。
紙パックのリンゴジュースを飲みながら、トーマ様が「リラ。ロイが若干引いてるよ」と言った。
王子様もそういうの飲むんですね。
「まぁでもわかるなー俺。討伐の時に、あの人いると安心感がやばいもん。俺らみたいな新人にチャンスくれるし、面倒見はいいかも」
うんうん頷くカイル君。
すると、ロイ君が怪訝な顔をする。
「え、待って。お前、新人って何?討伐??」
「あー、うん。俺、王立騎士団在籍中」
あっさり言うカイル君に、アイナちゃんとロイ君が固まった。
「え!?」
「マジか!……そういう特別枠で入ってきたわけね」
「あははっ!実はそうなんだよ」
びっくりした?と笑うカイル君に、ロイ君は素直に頷く。
「いや、普通にすげぇよ。でもなんか納得。お前、普通の体つきじゃないからな」
「やだ、ロイ君たら!俺の体、そんな風に見てたの?」
「お前バカじゃねぇか?騎士団の評判を下げんなよ」
呆れたような顔をするロイ君は、カイル君からトーマ様に視線を移す。
「じゃあなに?トーマは王立騎士団員を舎弟にしてんのか?」
「あー、そうなるよねぇ」
おっとりと答えるトーマ様に、ロイ君が怪訝な顔をする。
「なんなのお前。どういう経緯でそうなるわけ?」
「カイルに付きまとわれてるだけだよ」
「え、トーマ様、俺そんな認識なんですか!?」
ひどいなーと言いながら、カイル君は拗ねたように口を尖らせた。
「騎士団員に付きまとわれるってやばい奴なんじゃねぇの?トーマってその見た目で、危険人物だったりするわけ?」
「そんなわけないでしょ」
ロイ君の意外な考察に、トーマ様が苦笑する。
普通に「王子と護衛」っていうのが、わからないものなのかしら?と思いながら見ていた私。
ふとカイル君を見ると、なんとアイナちゃんが彼の筋肉に興味津々だった。
「カイル君。上腕二頭筋、触ってみてもいい?」
「え。」
「実は、うちの兄がボディビルダーなの」
「……マジ?」
「使う筋肉と魅せる筋肉の違い、ちょっと知りたい!」
戸惑うカイル君に手を伸ばすアイナちゃん。
意外過ぎる彼女の言動に、私達は黙り込んだ。
「……女子って本当はみんなこうなの?」
トーマ様がぽつりとつぶやく。
お姫様しか知らなかったんだから、カルチャーショックは仕方ないです、トーマ様。




