15.小論文はラブレター
スペシャル定食の食券を手に入れた私たちは、この勢いで優勝して食券を根こそぎもらおう!とさらにやる気をみなぎらせた。
「じゃあさっそく、次の問題をパパパッと解いちゃいましょう!!」
私はそう言って、魔術会館のドアをギギギっと開けた。
そこは魔術会館は、外から見ると大きめのホールだったけれど、中に入ると、部屋がいくつも分かれていた。
「わるーい魔術師が隠れ住んでます」みたいな、いかにも怪しい雰囲気が満載の場所があったり、魔道具が置かれている倉庫や、魔法陣を試し書き(?)できそうな空間がある。
廊下の壁には、魔力で灯されているらしい光が揺らめき、歩いているだけでも雰囲気に飲まれそうだった。
一番奥の部屋までやってくると、そこでブレスレットが光りだした。
『最終問題。魔術師に一番必要なものとはなんでしょう』
「一番必要なもの?……魔力??魔術師ですもんねぇ??」
私の様子にアイナちゃんが不安を覚えたらしい。
「リラちゃん、魔術科だよね?試験受けたんだよね??」
まずいわ。
アイナちゃんが私の魔術科をだいぶ怪しんでいる。
不正入学だと思われたら困ります!
「受けました。受かりました。でも、全部忘れました。っていうかですね、私小論文に命を賭けたんですよ。テーマが王立魔術師団に関するものだったので、ここぞとばかりに、団長であるオーウェン様についてびっしり書いたんです。たぶん、その愛と情熱が評価されたんだと思います」
「ギリギリっていうか、ラッキーで受かっただけじゃねぇか」
ロイ君がきっぱりとそう言った。
隣ではトーマ様がけらけらと笑っている。
「あぁ、もうだめ。ほんと、リラってすごすぎる。真面目に生きるのがバカバカしくなってくるよね」
珍しく大爆笑している彼に、私は言った。
「私はいつだって大まじめです!でも問題はわかりません。トーマ様わかりますか!?」
「えっ、諦め早すぎない?リラの専門学科でしょ?」
「すみません。これから勉強しますから、今日のところはお願いします!」
「リラちゃん、今から薬学科に変えてもらった方がいいんじゃない?」
本気のトーンでアドバイスをしてくれるアイナちゃんの言葉を聞いて、トーマ様がますます笑うのだった。
トーマ様って意外と笑い上戸なのかしら?
「あぁ、もういいや。とりあえず今日は食券をもらおう。えぇと、魔術師に一番必要なものだよね」
トーマ様ははーっと息を整えると、説明を始めた。
「これは確か、魔力じゃなくて魔力制御じゃなかったかなぁ」
「……魔力制御?魔力があったほうがよくないですか?」
「それはもちろんあったほうがいいけど、その力を制御できなかったら困るでしょ」
「確かに、使いこなせなかったら意味ないもんな」
トーマ様の説明に、ロイ君が頷いた。
「そうなんだよ。確か、王立魔術師団に入るためには、魔力の高さだけじゃなくて、制御能力の高さも必要だった気がするよ」
「そうなんですね!!メモメモ!」
魔力制御も必要ね!
オーウェン様に一歩また近づけたわ!と思いながらメモしていると、アイナちゃんがトーマ様を見た。
「……トーマ君、王立魔術師団のことも詳しいんだね」
「彼ら、城の所属だからね」
「うん、そうなんだけど……なんでそこまで知ってるの?」
アイナちゃんの疑問に、トーマ様は動揺することなく「広く浅いだけだよ」と笑って見せた。
王子たるもの、ピンチにも動揺しませんね。
「お前は王立騎士団員のくせに、そういうの知らないわけ?」
ロイ君がちらりとカイル君を見る。
「え!俺!?知らないよ!騎士団だもん。魔術師団は怖くて近寄れない」
完全に専門外だと油断していたらしいカイル君は、びくっと体をはねさせた。
動揺しないトーマ様とは全然違いますね。
「魔術師団て怖いの?」
「オーウェン様は全然怖くないですよ!?」
アイナちゃんと私の言葉に、頭をかきながら答える。
「いや、なんか魔術師団て頭良さそうじゃん。怖い」
「なにそれ。偏見じゃない?」
頭良さそうな集団は怖い、という謎の意識を持っているカイル君にトーマ様がぶっと噴き出している。
「とりあえず『魔力制御』で答え合わせしようか」
そう言って、トーマ様はブレスレットのボタンを押した。
『正解です!おめでとうございます。ボーナスステージを含めて、全て合格となりました。スタート地点へお戻りください』
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そんなこんなで、クイズラリー大会は幕を閉じた。
私達はなんと本当に優勝してしまい、食券を一人五枚ももらってしまった。
「五日分浮いたな!」
「スペシャルも入れると六日分ですよ!最高ですね!!」
カイル君と私の言葉に、トーマ様が「よかったね」となぜか上から目線で頷いているのだった。
普通の生徒なら一緒に喜ぶべきところですよ、トーマ様。




