11.クイズってそういうやつ!?
教養室にたどり着いた私達は、扉を開けてびっくりした。
そこは、まるでお城のパーティー会場のような空間が広がっていたのだった。
高い天井にいくつも吊り下げられたシャンデリア。
円卓がいくつも並び、その上には今すぐお茶会が始められそうなティーセットやお菓子が用意されていた。
よく見ると、円卓ごとに違いがある。
こちらはお茶会、あちらはディナーというように色々なバージョンになっていた。
「え!あれ?教室間違えた!?」
慌てて教室の位置や札を確認してみるけれど、ここで間違いはないようだった。
「……ここでクイズするってことかな?」
「お茶会しながら!?」
ロイ君とカイル君がそんなことを言っていると、ブレスレット型魔道具が光り始めた。
そして、音声が流れ始める。
『問題。この円卓にお客様をお招きします。正しいセッティングに直してください。円卓一つにつき、間違いが一つあります。ただし、間違っていない円卓も一つあります』
「……え。クイズってそういうやつ!?」
全員驚いていると、ブレスレットがさらに続ける。
『制限時間は五分。それではよーい、スタート!」
勝手にカウントダウンが始まった。
「え!始まっちゃいましたよ!?」
「やば!!どうする!」
「トーマ様、わかります!?」
「え、わかるかもしれないけど、五分でこの数はちょっと……」
そう言って、慌てる私達の前に、アイナちゃんがすっと立った。
「私、たぶんわかると思う」
「え!?」
驚いて見ていると、アイナちゃんは円卓に近づいて、ティーセットをじぃっと眺めた。
「あ、ここだ。カップの向きが違う」
そう言って繊細な手つきでカップを直すと、次の円卓へと向かう。
「えぇと……ここは、ナプキンのおり方が一つだけ違う」
「それから……これは、お菓子の数が一つ合ってない」
彼女は、ナプキンを畳みなおし、お菓子を給仕台から一つ足した。
「アイナちゃん、すごい!どうしてわかるんですか!?」
驚く私に、アイナちゃんがこちらを見てにっこり笑った。
「私、メイド志望なの。この学校の『侍従・侍女科』を受けたんだよ」
「そうだったんだ!!」
納得する私に、トーマ様も感心している。
「でも、他にわかる人いたら手伝ってくれるかな?あと二分しかないから。残り四卓の間違いを探さないと!」
その言葉に全員が円卓に近づいた。
「うーん、わかりません。私にはさっぱりです」
「俺もわかんねぇや」
お手上げの私とカイル君。
そんな中、トーマ様が言った。
「これ、たぶん違うんじゃないかな。フォークのサイズ」
「サイズ?」
「うん、もっと大きいはず」
「え、マジで?」
トーマ様の言葉に、ロイ君が顔をしかめていると、アイナちゃんが来て言った。
「本当だ!違う!すごいね、トーマ君!そこに置くフォークはお肉用のはずだからサイズが間違ってる!」
これと取り換えて、と言ってアイナちゃんがトーマ様にフォークを渡した。
「さすが王子様系だな」
ロイ君が言った一言に、トーマ様は一瞬びくりと反応していた。
「この円卓は間違いがないから、これで出来上がりのはず!」
アイナちゃんはそう言うと、ブレスレット型魔道具のボタンをぽちりと押した。
『お見事!正解です!』
音声とともに、何とも言えないファンファーレのような音楽がブレスレットからピロピロと流れてきた。
「すごーい!!アイナちゃんカッコいいです!!」
「本当だね!すごく手際も良かったし、頼もしかったよ」
「俺達だけじゃ無理だったな!」
私達の言葉に、アイナちゃんが恥ずかしそうに「ありがとう」と笑った。
すると、タイミングを計ったようにブレスレットが言った。
『次のポイントへ向かってください。次は中庭の温室です』
ブレスレットはそれだけ言うと、静かになった。
「温室なんてあるんだ?」
「じゃあ行ってみよう」
教養室を後にした私達は、地図を片手に中庭へと向かうのだった。
*********
「クイズって、この学園の学科に関するクイズなんだな」
ロイ君の言葉にアイナちゃんが頷いた。
「そうだね。今のは完全に侍従・侍女科向けだったもん」
「アイナちゃんがいてよかったよなー!」
カイル君はそう言いつつ「あ、でも、トーマ様も活躍できたんじゃないですか?」と笑う。
「いや、あんまり細かいところまではわからないよ」
首を振るトーマ様に、ロイ君が言った。
「フォークのサイズだって充分細かいけどな?お前、なんか育ち良さそうだと思ってたけど、本気ででかい家っぽいな」
「私も思った!」
アイナちゃんも声を上げる。
トーマ様は否定も肯定もせずに、「どうかな」とおだやか~に返していた。
話を切り上げるように、カイル君が言った。
「まぁ、なんにしても中庭に行ったら、次の学科が待ってるんだろ?」
「次は何でしょうねぇ?」
なんかテストみたいでドキドキするなぁ。
そんな私に、ロイ君が指を折りながら答える。
「侍従・侍女科、騎士科、魔術科、薬学科、商業科だろー?あとは教養科か」
「でも、専門学科に分かれるのって二年生からのはずなのに、入学してすぐ試されるのってけっこう怖いね」
「しかもさ、集まったメンバーが全員騎士科とかだったら積んじゃうぜ?」
アイナちゃんとカイル君の会話を聞いて、なるほどなーと思う。
あんまり深く考えずにグループを組んだけど、学科被りが少なそうでラッキーだったなぁ。
そう思う私は、ふと隣を歩くトーマ様を見た。
すると、彼はとてもご機嫌なようで、お城では見たことのない顔だった。
「トーマ様、楽しそうですね?」
「うん、すごく楽しい。協力して何かをするのっていいね!」
結果よりも、過程をとにかく楽しんでいるらしいトーマ様に、私はなんだか嬉しくなるのだった。




