10.目指せ食券!!クイズラリー大会
クイズラリー当日。
入学式をした講堂に、私達一年生は集められた。
「みなさん、おはようございます。学園生活には慣れましたか?
本日は、一年生の恒例行事であるクイズラリー大会です。
学園のあちこちに問題が用意されていますので、全て答えたグループは今いるこの講堂に戻ってきてください。
グループ全員で力を合わせて、問題を解いてくださいね!」
なんでクイズ?
この年齢で?
という雰囲気が漂う中、先生が言った。
「問題の正解率とゴールまでのタイムを他グループと競います。優勝したグループには食券がプレゼントされますので、がんばってください!」
その瞬間、講堂が歓喜に包まれる。
「食券!!」
「食券!!」
食券コールが響き渡り、会場が一気に盛り上がった。
カイル君がしっかり食券コールしている横で、トーマ様が不思議そうな顔をしているのがおもしろい。
なんとものんびりな行事だなぁ、と思っていたら目の前のロイ君が言った。
「まさかこの学園に入って最初の行事が、クイズ大会だなんて思いもしなかったな」
「ほんとですね。ここって厳しそうなイメージがあったけど、意外と楽しい学校なんですね」
私が同意すると、隣のアイナちゃんが言った。
「私のお姉ちゃんがここの出身なんだけど、これ、楽しいだけじゃないんだって」
「そうなんですか?」
「うん。親睦を深めるためっていうのと、学園内を知るっていう目的ともう一つ大事なことがあるって……」
「えー!なになに?」
身を乗り出すカイル君につられて、私も身を乗り出す。
「私達の『今の実力』を試す場でもあるらしいの」
アイナちゃんの言葉に、私とカイル君が首をかしげた。
「今の実力?」
「まだ何も習ってないのになぁ?」
すると、ロイ君が考え込むように言った。
「つまり、ただの楽しいクイズ大会じゃないってことか」
「試験みたいな感じなんですかねぇ?」
うーん、とみんなで考え込んでしまう。
するとトーマ様が、いつもの笑顔で穏やかに言った。
「でも、グループのみんなで協力してクリアすればいいんでしょ?楽しそうじゃない」
その言葉に、みんなが「確かに」と妙に納得した雰囲気が流れる。
「ですよね!楽しそう!食券目指して頑張りましょう!!」
カイル君が拳を上げて笑うので、私もつられて「がんばりましょう!」と拳を上げるのだった。
ダメだ、この人が隣にいるとテンションにつられてしまうわね。
その後、各グループ順番にスタート地点へと呼び出されていった。
グループに一枚の地図と、人数分のブレスレット型魔道具を渡される。
この後使うらしい。
私達は、紫色のブレスレットをはめると、「はい、いってらっしゃい」とスタートの先生に事務的に見送られて出発した。
「まずはどこ行くの?」
ロイ君は、トーマ様が持つ地図を覗き込みながら聞く。
「僕らのグループは、西棟三階の教養室だって」
「教養室?なにするところだろ?」
ぞろぞろと歩きながら進んでいると、アイナちゃんが言った。
「リラちゃん、なんだかすごく機嫌がいいね。どうしたの?」
「え、わかります?もう、私さっきから舞い上がりそうな気持ちを、必死に抑えていたんですけれども……これです!!」
私はブレスレットをばーん!とみなさんに見せつけた。
「え、うん。これ、みんなつけてるけど……?」
首をかしげるアイナちゃんに、私は説明をした。
「はい。これ、紫色ですよね?オーウェン様の瞳と同じ色なんです~!!!」
声高らかにそう言うと、一瞬その場が静まり返った。
「……あ、そうなんだ?」
アイナちゃんが苦笑すると、トーマ様がぷっと吹き出し、カイル君が笑いをこらえるようにぎゅっと唇を結んだ。
「オーウェン様の瞳と同じ色のものを身に着けるなんて、もうどうしましょう!見つめられている気がして、ドキドキしちゃいますよね!」
あぁ、会いたくなっちゃう!
オーウェン様元気かしら?
そんな風に想いを馳せていた私に、ロイ君が首を傾げた。
「オーウェン様?って誰?」
ロイ君一人だけピンときていないようだったので、私は立ち止まって彼を見た。
「ご存じありませんか?王立魔術師団の団長オーウェン・ブルー様です!」
一瞬顔をしかめたロイ君だったけれど、すぐに「あぁ!」と頷いた。
「知ってる知ってる。あの髪の長い団長ね!俺の母がすごいファンだよ」
「え!なんて理解のある素敵なお母様!!私お母様と語りたいです!!」
ロイ君の手を思わず握ると、彼はびっくりしたように一歩身を引いた。
「はいはい、リラ。落ち着いてね」
トーマ様は私の手をロイ君から引っぺがすと、ロイ君を見た。
「リラは十二年間、本気でオーウェンに想いを寄せている人だから、扱いに気を付けてね」
「えっ!十二年?って四歳から?」
目を丸くするロイ君に、私は深く頷いた。
「はい!そうです!」
「え……でも、オーウェン団長って確かうちの母親と同い年だから、もう三十七歳とかだろ?」
「はい!大人の男性って素敵ですよね!」
「あー、そういう受け取り方なんだな……」
私の言葉にロイ君が黙り込むと、アイナちゃんが言った。
「でもさ、二十一歳も違うと気にならない?自分のお父さんと同じくらいじゃない?」
「大丈夫です!うちの父より、確か三歳年下なので」
「いや、そうじゃなくて、自分との歳の差ってことなんだけど……」
「え?なにか問題あります??」
首をかしげる私に、ロイ君が呟いた。
「意外過ぎる……ファルケさん、見た目詐欺じゃん」
ロイ君の言葉に、私以外の三人が噴出した。
「見た目詐欺?なんですか?私、誰も騙してませんけど?」
そう言った瞬間、カイル君が大笑いし始めた。
「いや、騙されてる人多いよ、B組の奴ら!教えてあげたい!!」
「だよな?普通騙されるって!その見た目で、そんな意味わからないこと言うとは思わないもん」
ロイ君とカイル君がわかりあっているらしい。
その横にいたトーマ様が言った。
「本人は騙してるつもりないんだから、そこまで言ったらダメだよ」
「そうでした!ごめんね、リラちゃん」
「ごめん、ファルケさん」
「いえ、別にいいんですけど。それよりもロイ君、ファルケさんじゃなくてリラでいいですよ」
そんなこんなで、私達は西棟三階の教養室へと向かうのだった。




