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エピローグⅢ これから

□ □ □

 イサムが、この世界から消失した。

 その場所に刺さるは、勇者の聖剣。輝きは未だ、喪われていない。


 オレは聖剣の柄をもう一度、握った。

 かつて、オレの掌を灼いた聖剣を。


「イサム。国に帰ろう」


 聖剣を大切に、背中に収める。


 カランと、何かが落下した音が聞こえた。

 瞬間、ゴンの大声が響く。


「あれ!? メルルさんはどこ行ったんですか!?」


 続けて、リリス様が。


「え!? いつの間に!?」


 振り返ると、メルルが立っていた場所に、魔杖が落ちていた。

 いったい、あいつは何処に行ったんだ……?


 風がひとつ吹いた。

 何かがはためいて──空から降りてきたそれを、手で掴み取る。

 紙だ。


「手紙か? 読むぞ」

「『やっほー! キミたちの賢者、メルルです。この度、イサムを追いかけることにしました。実はさっき、魔杖から強大な魔力と魔方陣を抽出する方法を確立してね。正確に言えば、今の私だけの力じゃないけど……。まあ、それはさておき、ここでお別れだ。これからも応援してるよ、私の大切な仲間たち。成功するかは分からないけど、イサムはお姉さんに任せなさい!』」


 読み終えた瞬間、オレは呆然とした。

 それはオレだけではなく、リリス様もゴンも、言葉を失っていた。


「な、なんて行動力なのでしょう……お別れも言えませんでした……」

「オイラも見習わなきゃなぁ」


 オレは、喉の奥から湧き上がる感情を、抑えきれなかった。


「ふ……ふはっ、わはははは! 確かに、お前がいれば安心だ!」


 思わず、声を上げて笑った。久しぶりだ。ここまで、心の底から笑えるなんて。

 声と共に、涙が溢れてくる。


「ああ──イサム、メルル。頑張るよ、オレも」


 ──二度と、聖剣を振るうことの無いように、この世界を良くしていくよ。

 寂しくなったら、同じソラを見つめて。


 だけど、まずは。

 宙を見上げる時、隣には彼女が居てほしい。


「リリス様──」


 オレは彼女の前で跪き、右手を差し出した。


「愛しています。オレと、結婚してください。必ずあなたを幸せにします」

「────」


 時間が止まったかのような、静寂が訪れる。

 そして、彼女は静かに、オレの手を取った。


「──はい。私も、あなたを愛しています」


 どくんと跳ねる鼓動。

 オレは、彼女のその手を掴んだ。

 掴めなかったものを──いま、ようやく掴めたのだ。


 瞬間、大きな拍手が鳴る。

 それはゴンによるものだった。彼も、感極まるように、涙を流していた。


「式は、戦士の里で挙げますよね!?」

「はい、喜んで!」

「聞き捨てならんな。ウェルバインドでも執り行うぞ」

「え! じゃ、じゃあ……王国でもやりませんか、バルムンク?」

「ええ、是非」

「これから忙しくなりますねえ……あ、王命は終わりましたが、良ければ、オイラがボレアス王国まで護衛しましょうか?」

「頼む、最後まで一緒だ」「そうですよ!」


 次々と交わされる言葉。思わず、笑い合った。

 オレたちは、新たな一歩を踏み締めるために、未来へと歩き始めた。


ご覧いただき、誠にありがとうございます。

感想や評価、ご指導ご鞭撻を賜れば幸甚に存じます。

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