エピローグⅢ これから
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イサムが、この世界から消失した。
その場所に刺さるは、勇者の聖剣。輝きは未だ、喪われていない。
オレは聖剣の柄をもう一度、握った。
かつて、オレの掌を灼いた聖剣を。
「イサム。国に帰ろう」
聖剣を大切に、背中に収める。
カランと、何かが落下した音が聞こえた。
瞬間、ゴンの大声が響く。
「あれ!? メルルさんはどこ行ったんですか!?」
続けて、リリス様が。
「え!? いつの間に!?」
振り返ると、メルルが立っていた場所に、魔杖が落ちていた。
いったい、あいつは何処に行ったんだ……?
風がひとつ吹いた。
何かがはためいて──空から降りてきたそれを、手で掴み取る。
紙だ。
「手紙か? 読むぞ」
「『やっほー! キミたちの賢者、メルルです。この度、イサムを追いかけることにしました。実はさっき、魔杖から強大な魔力と魔方陣を抽出する方法を確立してね。正確に言えば、今の私だけの力じゃないけど……。まあ、それはさておき、ここでお別れだ。これからも応援してるよ、私の大切な仲間たち。成功するかは分からないけど、イサムはお姉さんに任せなさい!』」
読み終えた瞬間、オレは呆然とした。
それはオレだけではなく、リリス様もゴンも、言葉を失っていた。
「な、なんて行動力なのでしょう……お別れも言えませんでした……」
「オイラも見習わなきゃなぁ」
オレは、喉の奥から湧き上がる感情を、抑えきれなかった。
「ふ……ふはっ、わはははは! 確かに、お前がいれば安心だ!」
思わず、声を上げて笑った。久しぶりだ。ここまで、心の底から笑えるなんて。
声と共に、涙が溢れてくる。
「ああ──イサム、メルル。頑張るよ、オレも」
──二度と、聖剣を振るうことの無いように、この世界を良くしていくよ。
寂しくなったら、同じ宙を見つめて。
だけど、まずは。
宙を見上げる時、隣には彼女が居てほしい。
「リリス様──」
オレは彼女の前で跪き、右手を差し出した。
「愛しています。オレと、結婚してください。必ずあなたを幸せにします」
「────」
時間が止まったかのような、静寂が訪れる。
そして、彼女は静かに、オレの手を取った。
「──はい。私も、あなたを愛しています」
どくんと跳ねる鼓動。
オレは、彼女のその手を掴んだ。
掴めなかったものを──いま、ようやく掴めたのだ。
瞬間、大きな拍手が鳴る。
それはゴンによるものだった。彼も、感極まるように、涙を流していた。
「式は、戦士の里で挙げますよね!?」
「はい、喜んで!」
「聞き捨てならんな。ウェルバインドでも執り行うぞ」
「え! じゃ、じゃあ……王国でもやりませんか、バルムンク?」
「ええ、是非」
「これから忙しくなりますねえ……あ、王命は終わりましたが、良ければ、オイラがボレアス王国まで護衛しましょうか?」
「頼む、最後まで一緒だ」「そうですよ!」
次々と交わされる言葉。思わず、笑い合った。
オレたちは、新たな一歩を踏み締めるために、未来へと歩き始めた。
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