エピローグⅣ イサム/メルル
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この匂いは──真夜中の校庭。
現代に、帰還したんだ。
天を仰ぎ、おもむろに目蓋を開く。
砂金を黒の幕に散りばめたような、星々煌めく夜空──とはいかなかったけれど、強く輝く星が、ひとつだけ見えていた。
あれ──? 宙が、滲んでいる。
輝く星の輪郭が、ぼんやりと広がっている。
まるで、ピントの外れたカメラを覗いているみたいだ。
変だな──って、目を擦った。そしたらたくさん、涙が出てきた。
思ってもないことを──いや、思いたくないことを、思ってしまった。
あんなに、頑張ったのに。必死に頑張ったのに!
──なんで、俺はこんなにも、苦しいんだよ。
仲間たちの顔が、心に浮かび上がった。
それで、彼女の顔だけが、消えない。
雪原の光みたいな髪を靡かせた、碧色が消えない。
「会いたい──! 君に、会いたい──!!」
いつの間にか、声に出していた。
大声で叫んでいた。
抑えたくても、抑えられなかった。
そんな時に、空気を読まず、神様の声が頭に響いてくる。
なんなんだよもう。
『感想戦とはいかないが、すまないね。とにかくお疲れさま』
…………。
『これが最後の会話になるからさ、ちょっとは我慢してよ。──本来、時の因果を超えるなんて、許していないんだ。かつての世界では、不正をした奴らがいたから。でもキミも、あっちのキミも頑張ってたからさ、特別サービスをしようと思って。お陰様で神力も溜まったし』
『──頑張った奴が報われないなんて、俺は許せないんだ。でも、最後のお願いだけど、絶対……絶ッ対に!! 他の奴に言うんじゃないぞ!? 「探索者」を名乗る奴とか、名探偵とか、怪しい組織の奴とかに! あと、僕/オレへの信仰心も忘れないように! 一番の信者になれよ! 絶対だぞ!!』
『ああ、それとね。君の彼女のことだけど、彼女は間違いなく、神の領域に辿り着いた。さっき喋ったもん。まったく……特別感があるから、俺はこの領域に居るのに。ま、礼を言われたのは気分が良かった。ちゃんと褒めときなよ。──じゃあ、これからも、頑張って』
宙で強く輝いていた星が突如、光を増す。
耐えきれないとでも言うように、光が弾けた。
一本の光の柱を、地に落とす。
雷撃のような轟音を伴い、柱は俺の背後へと降り立った。
────それはまるで、魔法のようで。
驚いて振り向いた。
光柱は次第に細まり、宙へと還っていく。
そこに立っていたのは、メルルだった。
「マジ、か」
無意識に、そんな呟きが漏れた。
メルルは自分の手足を確かめるように動かして、全身を触った。
そして、俺を見た。
俺の顔を見て、力が抜けたように、彼女はぺたんとへたり込む。
視線が交錯した。
刹那、彼女の目から涙が零れた。
「良かったぁ……また会えたぁ……」
その声に応えるように、駆け出した。
──彼女を抱きしめるために、駆け出した。
俺たちは、強く、強く抱きしめ合う。
その腕の中で、笑い合う。
結局、俺は大人になれなかった。
成長の実感も無い。
だけど。
──明日からはきっと、退屈しない日になる。そう思えた。
【二度目の異世界、三度目の勇者】完。
最終回です。
ご覧いただき、誠にありがとうございます。
感想や評価、ご指導ご鞭撻を賜れば幸甚に存じます。
この後、設定資料・蛇足的な物を投稿し、【二度目の異世界、三度目の勇者】を締めさせていただきます。
読者様、本当に、本当にありがとうございました。




