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ダンジョンのエレベーター

先週は38度の熱が出てダウン……

その分、GWも休日出勤に。季節の変わり目、恐るべし。

 ダンジョンの入り口に到着した俺は、今までの出入り口ではなく、エレベーターが設置された場所へと向かう。

 名称はエレベーターとなっているが、実際は転移装置である。帝魔の中へと入るものなどと、仕組み自体は同じだが、なぜか呼び方は『エレベーター』なのだ。

 この世界に馴染みのない言葉は、多くの生徒にとっては「そういう名前の転移陣」という事になるが、俺やリオにとっては、階層を移動する為の装置だからエレベーターというのかという憶測もできる。

 さらに俺の場合は、ゲームに関する知識が豊富なので、最古のコンピュータRPGと呼ばれる3Dダンジョンを探索するゲームで、こうした昇降機が出てきた事も連想させた。


「やっぱり、帝魔を作った人は、俺達と同じ記憶をもってるよな」


 この世界と記憶にある世界。文明の進み具合でいえば、記憶の世界の方が進んでいるようだが、その世界には魔法は無く、蘇生術といったものもかなり制限がある。

 どっちがより高度な文明かというのは、判断が難しい。少なくとも農業に関しては、あの世界の方がはるかに進んでいるし、料理の分野も豊富な知識が詰め込まれているのだが。


「空間転移なんかはないしなぁ」


 また火力を使用した際に出る公害のようなものも、この世界では魔力で行う為に大気の汚染なども心配する必要がない。

 多少の空気の汚れは魔法で解消できるしな。


 そんな事を考えるうちにエレベーターの順番がやってきた。俺がやってきたのは6〜9階に通じるエレベーターで、自分がアクティベートした階までは自由に移動できる。

 俺は迷わず8階を選び、転移を開始した。複雑な術式は装置の方に刻まれていて、使用者は学生証を差して、ボタンを押せば目的の階に転送される。その際に魔力の消費などもない。転移魔法自体はかなりの魔力を消費して、連発して使用できるのはそれこそA級の魔力を持つシャリルくらいのものだ。

 もし使用者の魔力を消費するようなら、これから探索という時にごっそりと魔力を持っていかれる事になり、利用者はいなかっただろう。


「実際どうなってるんだか……」


 考えられるのは、ダンジョンの中から魔力が供給されているという事。ダンジョン内は魔素が濃く、魔石が結晶化するような環境だ。そこから魔力を抽出して転移魔法に使用しているというのは十分にありえる話。


「でもそんな事ができるなら、ダンジョンに潜る理由もなくなりそうだが」


 ダンジョンで採れる魔石は、帝魔が買い取り、街なかの照明に使用されたり、馬車代わりの車に使用されたりしている。しかし、魔石がなくても魔力を供給できるなら、わざわざ生徒から魔石を買い取って使用する必要はない。


「……まあ、ダンジョンがあくまで訓練施設で、魔石は生徒へのご褒美とすれば納得できるが」


 ただダンジョンは事故もあり、帰らぬ生徒もいないではない。そんな危険を冒させてまで、訓練する必要があるのか……いや、かなり管理された環境で訓練できている事は僥倖か。

 異世界の記憶で命がけの仕事に対する認識にズレがあるので、生徒を危険に晒すなんてと思ってしまうが、この世界で魔物を相手に戦うのは必要な事。いきなり暴走ランペイジの魔物と戦う事態に陥るよりも、ダンジョンで訓練された生徒が事にあたる方がはるかに被害を少なくする事ができるだろう。


「ただ訓練である事を知らせてない理由は何か……もちろん、危機感を煽る効果はあるが、無理をしてしまう事にも繋がる」


 いやまて、これだけ転移装置を配したり管理が行き届いたダンジョン。各所に監視カメラのようなモノが無いとは思えない。

 本当に生徒が危機に陥ってたら、助け出す仕組みがあるのか?

 しかし、帰らない生徒がいるというのはどういう事だ?

 ダンジョン内で力尽きるような生徒は、助けることはあっても、そのまま退学処分ということだろうか……。


「生徒に知らされてないことは多そうだな」


 異世界の記憶に繋がる品々にせよ、このダンジョンの魔物の特異性にしろ、帝魔が隠している事はかなりある。

 ただそれが悪なのかどうかは判断できないが。

 実際、魔物との戦い方が学べたら、この世界に置いては有用。変に知識や個体差の出る実物よりも、画一的にシミュレーションされた魔物を相手にする方が経験は積みやすい。

 帝魔で開発される品々も、軍事産業よりも日々の生活を豊かにするための物が多いようだ。

 この世界のパワーバランスを崩すような……例えば核兵器など……も、ある程度の知識があれば作れるはずだが、そうしたものは開発されていない……とは限らないのか。


「ダメだな、情報が少ないのに憶測だけしてても、陰謀論をこねくり回してるのと大差ない」


 今は自分の為に利用できるものを利用する。そのことだけに集中する事にした。

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