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装備の新調

 リオに食材を渡した見返りに、それなりの資金をもらえた。更には8階を探索してそれなりの数のキラーオクトパスなどの魔物も撃破した。その際に出た魔石は1階の奥深くにいる成長した雑魚に比べるとかなり大きく、買取額もかなりのものに上る。

 おかげでかつてない程に懐が豊かになっていた。

 とはいえ散財するわけにはいかない。

 未だ借金を背負う身であるし、ダンジョンの探索は続く。まずは武装を整える必要があった。

 この街の鍛冶屋は夕方からが本番で、ダンジョン帰りの生徒の武具を、明日の放課後までに修理、メンテナンスするのが主な仕事。夕食時を過ぎても、開いている店がほとんどだった。

 その中の1軒に入ってみることにした。


「いらっしゃい、修理かい?」


 背の低いおばちゃんが、受付のカウンターから声を掛けてきた。


「いえ、武器の新調と防具の手配をお願いしたくて」

「へぇ、そりゃ豪勢だね。どんなのがいいんだい?」


 俺の要望としては、魔力が高まった事で多少の重量は問題なくなったとはいえ、動きが制限されるのは好きではない。

 以前と同じ様に、部分鎧の組み合わせで自由さに重点を起きたいと説明した。


「ふぅん、なるほどね……とりあえず、採寸するからこっちきな」


 俺は更衣室らしき個室へと誘われ、鎧の為の採寸を行われる。それはメジャーを手にしたおばちゃんが、胸回り、腕周り、腰回りと要所をそれなりの数で採寸するという異世界のオーダーメイドする時のような丁寧さ。ここにもこの世界にない知識の片鱗を見ることになる。

 この学園というのは、かなりのオーバーテクノロジーが導入されているのだ。

 その思いは強くなる。


「ふ〜む、アンタ。細っこい割には、ちゃんと鍛えてんのね。感心、感心」

「ひゃぉうっ!?」


 おばちゃんの指先が撫でるように這う感触に、思わず身をひねって逃げる。おばちゃんはかかかと笑いながら、メジャーをしまって何事も無かったかのように更衣室を出ていった。



「ここの連中は魔力に頼りがちだからね、基礎をしっかりしときゃあ、E級だってDやCに勝てる事もあるわよ」

「は、はぁ……」


 さっきのスキンシップは無かった事にされ、年長者の助言のような事を言われる。俺としては既にC級相手の集団戦に勝利しているので、今更感はあるのだが一般的に見れば級の差は大きい。

 しっかりとした技術を修め、たゆまぬ努力の果てに、格上撃破という金星が手に入るのだ。


 俺はエトランゼ様の下、魔力の成長に気づかずに過ごしてきた。そこで農業を開墾からはじめて畑を作り、模擬戦として多くの魔物と戦っていたが、それは魔力に頼らない自力でのこと。相応の筋肉がついていたようだ。

 魔力で補強するにしても、基礎が大きいに越したことはない。これからも鍛錬は欠かさないようにしないとな。



「まだまだ成長期なんだから、ちゃんと食べなさいよ。そんな細っこかったら、力なんてでないわよ。そうだ、おばさんのところで晩ごはん食べて行きなさい」

「え、遠慮しますっ」


 妙に艶っぽいおばちゃんの目つきに怪しさを感じて、俺はそそくさと店を後にした。というか、吟味とか何もなくいきなり発注までして良かったのか……。一気に8階まで進んだ高揚感からか、普段の慎重さが欠ける行動に、気を引き締めねばと頬を張った。




「ただいま〜」

「おかえりなさいませ、レント様」


 借家とはいえ一軒家へと帰り、メイドが迎えてくれるという贅沢。俺はつい最近までゴブリンと雑魚寝で生活してきたのが、ウソのような展開である。


「先に沐浴されますか? お食事の用意もありますが……」


 やや眉をしかめながら、入浴を促すアイラ。正直、毎日の入浴なんてのは贅沢の極みで、生まれてからこっち、近くの川で行水程度で過ごしてきた。

 帰宅後に入浴を促される事実がまた立場の変化を実感させたくれた。


 ただそれもアイラの小鼻がヒクヒクと動いているのに気づくまで。眉間のシワと合わせて、かなり我慢しているような……。


「うおっ、俺、臭い!?」


 袖口をクンクンさせながら聞くと、アイラは言葉無く頷いた。


「わ、わかった、風呂に入ってくるよっ」


 俺は逃げるように風呂場へと急いだ。

 8階は海のステージだが、海水浴と違って上がってシャワーなんてない。更には海産物を散々集めて回って、その生臭さが体に染み付いていた。

 この国では海が遠く、磯臭さとは無縁。動物とも違う異臭にさしものアイラも表情を変えざるをえなかったようだ。

 俺は贅沢な石鹸……まあ、学園内では技術が進んで、かなり安価に量産できるようだが……をたっぷりと使い、人肌よりも少し高いくらいに調整された浴槽に浸かる。


「ふえぇ〜」


 弛緩する筋肉に思わず声を出しながら、軽くのぼせるまでゆったりと浸かってしまった。

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