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チームワーク

 ゴブリンと言えば雑魚の代名詞とも言える存在。大柄なホブゴブリンは、人間と変わらないほどの身長があり、それなりに怪力ではあるが、オークと比べると断然弱い。10人で掛かったとしても、オーク1人に勝てないだろう。

 それなのに7階というそれなりの階層に配置されているのには、理由があった。


 体の大きなホブゴブリンが壁となり、中衛に魔法が使えるゴブリンメイジ、後衛に弓を持ったゴブリンアーチャーと小隊をまとめるゴブリンキャプテンが並んでいる。

 パーティーとしてこちらに向かってきていた。

 ホブゴブリンは170cmほどとゴブリンに比べると頭2つ分くらい背が高く、上半身マッチョな逆三角形。肩幅も広く、後衛を守るタンクとしてそびえる壁となっている。

 その脇を抜けるようにメイジの火の玉が飛んできた。サラマンダーの吐く球と違って、ある程度誘導性を持つソレは、しっかりと避けないと当たってしまう。かといってそれに集中しすぎると、後衛からアーチャーの矢が飛んでくるのだ。


「連携が取れてるなっ」


 火の玉を手に魔力を込めて弾きつつ、バックステップで矢を躱す。そこへホブゴブリンが肉薄してきて、体ごとのぶちかまし。着地直後の重心が安定していない所を狙われて、壁際まで吹き飛ばされた。


「なるほど、7階レベルって訳だ」


 個々の力はそこまででもないが、連携をとって攻撃してくると、こちらは守勢に回らされる。チームワークの何たるか教えてくれるような模範的な動きだ。

 実際のゴブリンではこうも上手くは連携しないのだろうが、シミュレーションとして構成されたこのゴブリンは、こともなげにタイミングを合わせてくる。

 更に上位種とも言えるキャプテンが遊撃手として、ホブゴブリンの影から飛び出し、一撃を加えて去っていく。


「勉強にはなるが……五里霧中、ダークミスト


 俺は視界を霧で隠す魔法を放つ。するとホブゴブリンを中心に、守りを固める隊形を整える。堅実な戦い方を見せてきた。

 どうやらキャプテンの声に従って行動を行っているようである。こちらの声は届かないのに、キャプテンの命令は聞くらしい。

 そのキャプテンの判断能力は、通常のゴブリンより優れているみたいだ。パーティーとしての役割を崩すには、キャプテンをどうにかするという手法も取れるが……まあ、個の力はそれほどでもなく、B級になった俺はオークを凌駕し、オーガともタイマン張れるくらいの実力になっている。

 ここは小細工なしに力技で崩すことにした。


「ぐぎゃっ」


 霧で視界を奪ってから、ホブゴブリンを迂回して、背後のキャプテンから強襲を掛ける。流石に一撃とはいかなかったがかなりのダメージ。悲鳴に反応したホブゴブリンが振り返るが、そこにはもういない。

 俺は更に移動を続けて、次はメイジへと斬りかかる。攻撃に呪文という準備が必要なメイジは反応が遅れ、一気に倒し切れる。

 そこへ短刀ダガーを抜いたアーチャーが襲ってくるが、すぐに霧の中へと身を潜める。追撃してこようとしたアーチャーだが、キャプテンが呼び止め、踏みとどまる。

 やはり常のゴブリンよりも統制はしっかりしていた。しかし、それでこちらが不利になるかというとそうでもない。霧の中でもある程度気配を感じられる俺と違い、ゴブリンは狭い視界で全周囲に警戒するしかなかった。そして、それはどうしても綻びを生む。

 ホブゴブリンとアーチャーが背を向けた隙間を縫って、キャプテンにトドメを刺すと、気配に気づいて振り向いたアーチャーと正対。アーチャーは普通のゴブリンで、身長は低く、獲物も短刀ダガーでリーチが短い。ハンドアックスもリーチが長い武器ではあるが、腕の長さも合わせてこちらの方が有利だ。

 大きく振るったハンドアックスを、アーチャーは短刀で受けるが、得物の重さと勢いを止めることはできず、肩口へと刃が食い込む。


「ぎひっ」


 体勢を崩した所にもう一撃を加え、沈黙させると、残ったホブゴブリンと向かい合う。目くらましの霧も晴れ、仲間をやられた怒りで雄叫びを上げるホブゴブリン。ただ力こそ強いが、動きは単調で鈍い。相手の一撃をサイドステップで避けつつ、すれ違いざまに胴を薙ぐ。

 僅かに前屈みに体勢を乱したその背に、上段から斧を振り下ろす。重さを活かした適した一撃は、容易に背骨を砕く。もはや立ち上がることもできないホブゴブリンの首を速やかに切り飛ばし、戦闘を終了させた。


「ふう……シミュレーションと割り切っても、仲間と同じ姿を斬るって後味悪いな……」


 俺は魔法も使用して気配を消すと、ゴブリンと遭遇しないように注意して、次の階を目指すことにした。

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