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ソロで無茶は厳禁

 戦闘したエリアから少し離れて壁が窪んだところで一息入れる。壁を背に慌てて集めた魔石を確認した。


「少しは大きいか?」


 掘り集めた魔石は最低ランクの微と呼ばれるサイズだが、レプラコーンから出た魔石は2周りほど大きく感じる。

 魔石は大きさによって値段が上がっていく。微サイズは、使用用途が限られて、暖炉などの火種としてがほとんど。瞬間的な魔法にしか使えない。

 小サイズになると、街灯や浄水といった継続的に少量の魔力を必要とする道具に使えるようになる。

 中、大サイズとなると攻撃魔法を撃ち出せる大砲などにも使用されるため、地方都市の防衛などに必要となり相応に高価となっていく。


「もう少し欲しいところだが……」


 ここで欲張ると全てを失う可能性もある。魔法陣のストックもそうだが、何より魔力が頼りない。

 早めに切り上げて装備を買いに行くことにした。




 ダンジョンの入口で採掘セットを返却し、魔石を買い取ってもらうと、1時間ほどで銅貨20枚と、昨日の4時間に匹敵する収入になっていた。

 やはりサイズの違いで実入りに差が出てくるようだ。


「レプラコーンクラスだと単体は弱いから、掘るよりも早く稼げそうだな」


 魔術師としては範囲魔法で一掃が理想的だが、そんな大魔法は使うと1発で魔力が底をつく。魔力を失うと身体の動きにも影響がでるので、グループを倒せたとしても他から来たのに対応できなくなるだろう。

 面倒でも各個に倒す方法を持つべきだった。



 魔力を使わずに敵を倒すには、物理的に殴るのが最も早い。つるはしでは小回りがきかずに付け入る隙を作ってしまう。

 距離を保って戦うには槍がいいが、ダンジョンという限られたスペースで振り回すのは制限がかかる。

 やはりオーソドックスに剣がいいかな。それも取り回し重視で、ショートソードと呼ばれる刃渡りが短めの剣。

 威力よりバランスの良さと振りの早さで勝負するつもりだ。



「いらっしゃい」


 アパート近くの中古ショップに顔を出すと、愛想のよい店員から声がかかる。食堂のおばちゃんや、ダンジョン入口のレンタルショップもそうだが、貴族社会において偏見なく接してくれる人がいる。

 これは皆がE級魔術師、庶民出の元学生だからだそうだ。かつての自分たちと同じ立場の生徒を、少しでも支えたいと帝魔に残って仕事をしてくれていた。


「武器と防具を見たいんですが……」

「あいよ。駆け出しでも手が出さる中古品でいいな」

「はい、それで」


 時期的にそうした需要が高いのだろう、カウンターの側に箱詰めされてたのを見せてくれる。

 革製のグローブやブーツ。人の汗が染み込んだ品々は、あまり使いたくはないところだが、背に腹は変えられない。先立つものがなさすぎだ。

 水虫も魔法で治る為、その手の感染症を気にしなくていいのは幸いか。


 自分の身体にあったサイズのセットを選び出す。防具としては格安でそれぞれ銅貨5枚。

 後は武器だが、丁度片手で扱える刃物があった。


「これってナタかな?」

「ああ、そうだな。専門の剣術を習ってないなら、こうした道具の延長線の武器の方が扱いやすいぞ」


 小枝を払ったり、獲物を解体したりと、大きめの包丁のように使ったりもする刃物だ。片刃でやや重さがあるが、その分押し切るのに向いている。

 持ってみるとバランスも悪くない。手首のスナップで操り、後は重さで叩き切るには十分そうだった。

 そのナタが銅貨10枚で今日の稼ぎは飛んでしまうが、明日からの為には必要な出費と割り切る。


「毎度あり。武器を持ったからって無茶はするなよ。稼ぐことより、生き残ることが大事だからな」


 ダンジョンはかなり管理されてはいるものの、相手にするのは魔物だ。毎年、事故は起こっている。その多くはやはり魔力の少ないE級生徒ということになっていた。

 攻守に魔法、魔力の強さは関係してくる。武器に頼っている時点で、その力の不足があるとも言えた。


「ありがとうございます。気をつけます」


 俺は礼を言ってショップを後にする。稼ぎ分は使ってしまったので、晩御飯は諦める事にした。

 昼に食べた半チャンラーメンは強烈で、下手な食事では満足できずに色々と追加してしまいそうだ。おばちゃんには悪いが、リオの料理は異次元だった。


「あの塩スープに味噌でも溶かせば、かなり違うんだろうけどなぁ」


 食べることを考えると、抗議するようにお腹がくぅと鳴いた。

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