表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/129

初めてのダンジョン

 新たな借金を上乗せされて、いよいよ稼ぐしかなくなった。のちに聞いた話だと、全身やけどの瀕死状態からの回復に掛かる治療費は、銀貨5枚ほど。ハンバーグに比べればなんてこと無い金額だった。ちゃんと治療費を調べていれば1ヶ月もしないうちに自由になれたはず……。

 調べる時間を与えなかった所までを含めた罠だったらしい。


 なぜ治療費がそこまで高くないかというと、魔法技術による治療で、それなりの魔力は必要だが手間はさほど必要ないこと。またダンジョンで負傷した者が、不利になりすぎないための措置だ。

 もう一人の医療に関する記憶から、入院必須の重傷は、どうしても高額になるイメージを抱いてしまっていたのも勘違いの一因だった。


 そして、お嬢様は俺を罠に嵌めるべく、わざと手の込んだ高級食材を使い、手間暇惜しまずに作られたハンバーグが、異常に高価に作られていた。

 金貨一枚よりかは安いミノタウロスの肉だが、帝魔の学生でも簡単に手に入れられる代物ではない。

 その強さはC級魔術師が束になって倒すべき相手。そこへ無闇に特攻するほど俺は命知らずではない。利子は付けないという事だし、地道に励むしかなかった。




「返却期限は今日の夜までです。掘るのに必死で周囲の注意を怠らないようにしてください」

「ありがとう」


 ダンジョンの入口で採掘道具の一式を借りる。つるはしにシャベル、ランタンにヘルメット、魔石を入れる袋をセットにして、新入生へと格安でレンタルしてくれている。

 お嬢様との昼食を終えて教室へと戻っても、既に誰もいなくなっていた。いつ帰ってくるかも分からない俺を待てるほど、彼らも余裕があるわけじゃないのだ。

 それにまだ1階層で魔石を採掘する程度なら、パーティを組むほどの事もない。



 ランタンを手にヘルメットを被ってダンジョンへと入っていく。制服から実技練習用の体操着に着替えている。本来ならこの上から防具を着けるんだろうが、まだ買うだけの余裕がなかった。

 この帝魔にあるダンジョンは、王に反発した宮廷魔術師が作って篭ったとか、魔界から侵攻する為に魔王が作ったとか、神々が試練のために用意したとか、様々な憶測はされているが、真相は不明なままだ。

 現時点で最高到達点は、地下17階。このスコアは何十年と更新されていない。それは現皇帝が叩き出した記録だからというだけではなく、深層に降りるほど魔物が強くなり、深層に降りれる高い魔力を持った者は、命を掛けるほど無理をしなくても上級貴族としてやっていけるからだ。


 そしてもう一つの要因として、年齢制限がある。このダンジョンは、成長期の間しか潜ることができなかった。

 魔石が生み出されるほど濃度の濃い魔素は、成長期を終えたものが入ろうとすると、その身体を蝕み、最悪は魔物へと転じてしまう。

 逆に成長期の間は、その魔素を己の魔力へと取り込むことができるらしい。

 その為に庶民出の魔力持ちは、長時間ダンジョンに潜る事を推奨されていた。


 ダンジョンの深層へと挑戦できるのは最長で5年ほど。深く潜れるほどの魔力、強さがあれば無理はしなくても良いと言うことで、記録の更新を狙うものはいなかったのだ。

 ただ今年はシャリルがいる。

 皇帝以来のA級魔術師。爵位は子爵とまだ上を目指せる位。ここで能力を見せる為にも、記録の更新が期待されていた。

 そのシャリルとパーティを組もうと、既に多くの者が名乗りを上げているらしい。


「ま、俺には関係ないけどな」


 魔力Eの俺がそんな所に引き込まれたら、待っているのは死あるのみ。シャリルにとっても足手まといになる俺を連れて行く事はないだろう。

 深くダンジョンへと潜るうちに、仲の良いパーティと過ごしていたら、気まぐれで拾った俺の事など忘れてくれるかもしれない。

 是非ともパーティ候補者達には頑張って欲しいところだ。




「お、ここかな」


 薄暗いダンジョンを進むうちに、探知の魔法に引っかかる場所があった。魔石自体が魔力を持つため、魔力探査の魔法に引っかかるのだ。

 下の階まで進むと、魔物が持つ魔石の力も強くなるため、探査の魔法では魔物も引っかかってしまうので、採掘ポイントを探すのは難しくなるらしい。


 そんな先の事は考えず、俺は壁に向かってつるはしを振るう。魔力によって多少は強化されている筋力で、貸与されたつるはしを振るうと、思ったよりも簡単にダンジョンの壁が掘れる。

 そして10cmほど掘った所でぽろりと黒っぽい石が転がり落ちた。直径3〜4cmの小さな石だが、魔力を内包した石に間違いはない。大きさによって価値は変わるが、小さくても無価値という事はなかった。



「よ〜し、サクサク掘るぞ!」


 初めての収穫に気を良くした俺は、更につるはしを振るっていく。生徒がこんな感じで掘っていたら、ダンジョンはすぐにボコボコの穴だらけになりそうだが、ダンジョンは自己修復機能を持っていて、常に修理されていくらしい。

 数日もすれば貫通した穴も修復されるという事で、ショートカットルートを作成する事はできなかった。


 やがて探知魔法に魔石の反応がなくなり、それ以上はそこに魔石が無いことが分かる。

 そうなればポイントを変えて、探知魔法を使い、魔力の反応があれば掘っていく。

 小一時間ほど掘ると、それなりの数の魔石が溜まっていた。

 1ついくらというよりは、重さでいくらと測る程度のクズ石だらけだが、それでもご飯代くらいにはなっているはず。

 続けて明日の朝ごはんと、更なる蓄えを目指して、ひたすら掘るべし。


 そうやって幾つかのポイントを巡っていた時、向こうからやってくる人影に気づいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ