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いざ登校

「意外とすっきり目が覚めたな」


 家にたどり着いてベッドに潜り込んだのは明け方。それから一時間ほどしか寝てないが、目覚めは良かった。

 よく考えれば3日も寝たきりで、マッサージと言う名の拷問の後も眠っていたから、睡眠時間は十分に足りていたのか。

 何にせよ数日ぶりに帰った我が家での就寝は、全身の疲労が取れたようで清々しい。


 ベッド脇のサイドテーブルにはおろしたての制服が一式置いてあった。初日の模擬戦でボロボロになった制服を学校側が用意してくれていたのか。

 何にせよ、酷い目にあったが、今日が俺にとっての初日だ。気合を入れて臨もう。



「レント! 生きてたのかっ」


 家を出た所で声を掛けられた。隣に住むニコルソンだ。


「おう、何とかな」

「重症で復帰も難しいとか言われてたぞ」

「治癒魔法で治して貰ったからな」

「……それはまた、大変そうだな」


 治癒魔法が高額だというのを知っているんだろう、ニコルソンの表情が曇る。


「行事中の怪我だし、帝魔側に補填してもらうさ」

「できればいいんだけどね」

「だ、大丈夫だろ」


 心配性なニコルソンに深刻そうな顔をされるとこっちまで不安になってくる。


「ようレントっ、生きてたかーっ」


 そこへ他の部屋の住人も合流してきて、雰囲気が変わり、俺達はわいわい騒ぎながら帝魔へと登校した。




「治療費の補填……?」

「ええ、学園の行事で負傷したわけですし、治療費を負担して頂けないかと」

「あのなぁ、帝魔は慈善事業じゃないんだ。将来性のある生徒になら融通するが、魔力4のお前に投資する価値はないぞ」


 治療費の肩代わりを願うために職員室へと向かって担任に訴えたが、あんまりなセリフに愕然とする。


「どうして治療されたんだ。あのまま負傷扱いなら年金の支給を受けられたんだぞ」

「そ、そんな、だって、寝たきりで生きろと!?」

「その方が稼げるんだ。親御さんも喜ぶだろう」

「うちの両親はそんな非道ではありませんよ!」

「何にせよ、帝魔は生徒の健康は自己責任だ。治療が必要なら自分で稼ぐのが当たり前。甘える生徒などいらんのだよ」

「なっ……」

「魔力に応じた融資制度はある……が、Eランクでは期待はするな。申込書はこれだ」


 机の引き出しから取り出される借用書。イマイチ貴族の金銭感覚は分からないが、治療費に足りなさそうなのは理解できる。


「今はメンドーサ子爵の預かりで料金は保留されている。補填を願うなら、子爵様に直接交渉してみるんだな」


 負傷させて、治療して、治療費を請求するだと。なんてヤクザな商売が成立するんだ。しかもそれが学園側に認められている……。

 持てる者、貴族に有利な制度が、学園内でも当たり前のようだ。

 メンドーサ家としては、金銭での支払いは期待しておらず、肉体奉仕で返上させるためのペット契約。これを抜け出すには、治療費を自力で稼ぎ出すしかないのか……。




 四百名を越える生徒は大体40人ずつの学級に分けられていた。魔力に応じて振り分けられるので、庶民出身の魔力Eランクの生徒は1つのクラスにまとめられている。

 その教室へと向かうと、登校時に合わなかった他の男子生徒にも、温かく迎えられた。

 そうだ、ここは帝魔で稼ぎ口はいくらでもある。仲間と一緒なら、苦難だって乗り越えられるはずだ。

 早くダンジョンへと潜れるようにならないかな。


 その機会は思ったよりも早くに訪れる。帝魔の授業は午前中に座学を行うと、午後は選択式になるらしい。

 魔法学や礼法、剣術などの分野ごとの授業に加え、ダンジョンでの実地研修もあった。

 Eランクの生徒は魔力が低いので戦闘力も乏しいのだが、それ以上に資金がない。魔物を倒して魔石を集められるダンジョン研修で、一定の資金を集める生徒が多かった。


「しゃーねぇなぁ、レントも俺達の班に入るか?」

「ああ、頼むよ。治療費を早く稼がないと大変な目に遭いそうでな」

「やっぱり補填はなかったんだね」

「魔力に応じた融資……つまり、借金しろってさ。お前らも怪我には気をつけろよ」

「その辺はわかってるぜ。ダンジョンといっても入口付近は魔物も少ないから、魔石を掘って集めるんだと」

「なるほど、それなら大丈夫か」


 休み時間にそんな感じで情報を提供してもらい、午後にはダンジョンへと潜って治療費を稼ぎ、早くメンドーサの束縛を逃れる為の算段を立てていた。

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