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貧乏令嬢、軍神伯爵に嫁ぐ~「君を愛するつもりはない」と言われましたが、わたくしは超好きですわ!~  作者: 八星 こはく


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第22話 貧乏令嬢、約束をする

 夕飯ができたことをパーシヴァルの部屋へ伝えにいくと、部屋の中から小さいけれど楽しそうな笑い声が聞こえてきた。

 耳を澄ませてみると、ぎこちないながらも、二人がちゃんと会話をしていることが伝わってくる。


 つい嬉しくなって笑うと、同じ顔をしたリオンと目が合った。


 ――すると。


「……なんで見つめ合ってるんだ」


 いつの間にか部屋から出てきていたブラッドリーが、鋭い形相でグローリアを睨みつけていた。


「えっ、ブラッドリー様!?」

「ずいぶんと楽しそうに見つめ合っていたが」


 不貞腐れたように、グローリアの手を引きつつリオンを睨みつける。その様子に、どうしようもなくときめいてしまう。


(ブラッドリー様が、やっ、やきもちを……!?)


「リオン。人の女性に手を出してはいけないよ」


 グローリアがときめき過ぎてかたまっていると、部屋の中からパーシヴァルも出てきた。

 休んでいたからか、先程よりも顔色がよくなっている。


「分かってますし、出してませんって。冤罪ですよ、冤罪。俺がモテるからって」


 笑いながら、リオンは自然にパーシヴァルを支えるために移動した。

 そんなリオンを見て、ブラッドリーが少し安心したように微笑む。


(……やっぱり、悪くない空気よね)


 一緒に暮らすことはできなくても、かつてのように密接な家族関係には戻れなくても。

 グラッドストン兄弟は今でも、ちゃんと相手のことを大切に思い合っているのだ。





「今日はご馳走だね」


 パーシヴァルは食卓に並ぶ料理を見てそう笑った。けれど彼が真っ先に口へ運んだのは、リオンが作った胃に優しそうな卵粥である。


「……グローリア殿は、いつも料理を?」

「いつもではありませんが、時間がある時は手伝うようにしていますわ」

「へえ」


 パーシヴァルは少し驚いたように目を見開いた。

 やはり、伯爵家の夫人になったグローリアが家事をしていることに違和感を覚えたのだろう。


「ブラッドリー様のために、自分にできることを精一杯探していますの!」


 グローリアが明るく付け足すと、パーシヴァルは目を細めて笑ってくれた。


「本当に、弟は幸せ者だね」


 彼に弟、と呼ばれたことが嬉しかったのだろう。隣に座るブラッドリーが、テーブルの下でぎゅっと拳を握った。


「……はい」


 噛み締めるように頷いたブラッドリーがすごく幸せそうな顔をしていて、グローリアは泣きそうになってしまった。





「それでは兄上、失礼します」


 夕食を食べてしばしの間歓談した後、グローリア達は家へ帰ることになった。

 この屋敷にはリオンの他に使用人がおらず、二人が泊まるのは困難だったからだ。


(それにきっと、ここはパーシヴァル様にとって、もう二人のお家なのよね)


 他の使用人を解雇してしまったのも、静かに暮らしたかったからだろう。

 強引に距離を詰めるべきではないことは、グローリアにだって分かる。


「ああ。二人とも、健康に気をつけて」

「……兄上もですよ。それと、その、旅に出られても……お元気で」


 ブラッドリーが寂しそうな顔をしていたから、グローリアは慌てて口を開いた。


「あのっ! 旅先から、たまには手紙を送っていただけませんかっ! どこにいるか分かっていると、わたくし達としては安心ですの!」


 グローリアが言わなくても、気を利かせたリオンが知らせてくれたような気はする。

 でも、こうして言葉にすることが大切だと思ったのだ。


「……兄上。俺からも、どうかよろしくお願いします」


 ブラッドリーが深々と頭を下げる。ブラッドリーが顔を上げると、パーシヴァルが優しく笑った。


「手紙と一緒に、土地の名産品を送るよ」

「兄上……!」

「君達も、なにかあったら教えて。甥っ子か姪っ子の誕生は、さすがに祝いにいくよ」

「まあ……っ!」


 つい顔を赤くしてしまった二人を見て、リオンが呆れたように溜息を吐いたのだった。

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