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3話目 プレイアブル

冒険者ギルドは、朝から賑やかだった。

やれ討伐が成功した宴やら、やれ新米冒険者の歓迎会やら。そんないつも通りの騒々しい集会所を、受付のエエルダは眺めていた。


「今日もフツーに終わってくれたらいいんだけどねぇ~」


独り言のように小さな願いを呟く。

――だがそれは、叶うことはなかった。


ギィィ……。


ドアが開く鈍い音が、騒々しい集会所の中でもやけに大きく響き渡る。


「……え?」


エルダの顔が引き攣った。

誰もいないはずの、地下倉庫へと続くドアがゆっくりと、周りの注目を集めるかのようにひとりでに開いていく。


そこから現れたのは、黒装束に身を包み、刀を帯び、白い翁の面を被った奇妙な男。


瞬間、集会所の時間が止まったかのように静まり返る。

だが、その注目の的である男は、周囲の怯えを気にする様子もなく、真っ直ぐこちらへと歩いてくる。


――つま先立ちで、やけにクネクネと。

まるで軟体生物が無理やり二足歩行をしているかのような、異様な奇妙さ。


そして、ついに男がエルダの目の前に到着した。白い翁の面が笑っているのが、さらに恐怖を駆り立てる。

だが、エルダもギルドの受付としての誇りがあった。


「な、なにか御用でしょうか……っ?」


声が裏返っていたが、目だけは翁の面の奥にある瞳を見据える。


「ここは冒険者ギルド……で、合っているか?」


翁が喋った。抑揚のない、機械のような声。

特徴的だが、この世の言葉と言い表すことのできない不気味な響き。


「は、はい! ここは冒険者ギルド本部です!」


と言と言葉が通じたことに驚きつつ、エルダは必死に答えた。


(よかった。日本語は通じるみたいだな)


一方、一明は心底安堵していた。

第1関門である『切腹の痛み』を超え、次の関門である言語の問題をも突破できたからである。


「そうか」


一明は受付に背を向け、のらりくらりと歩き出す。

ここがゲームの世界というのは確定でいい。となれば、次の目的地は【笑撃団】のアジトで決まりだ。


そう考えながら出口へ向かって歩いていると、前方に大きな影が差した。


一明の行く手を阻むように、一人の大柄な男が立ち塞がる。

見るからに正義感の強そうなモヒカンの大男。その逞しい肩には、身の丈ほどもある巨大な大斧が担がれていた。


(おいおい、早速お出ましかよ。そうだった、こいつの初期リスは冒険者ギルドだったな…ゲームの初期実装キャラ、確か名前は熱血正義漢の…)


一明の脳裏に、その男のデータが瞬時に浮かび上がる。


「……たしか……ガンダ……だったか?」


翁の面から漏れ出た機械的な声に、男がピクリと眉を上げた。

不敵な笑みを浮かべ、大斧を握る手に力を込める。


「へぇ……俺の事知ってんのか?」


ただならぬ2人が、真っ向から相対する。

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