11話 初陣
―――冒険者ギルドのある町から数キロ離れた森のほとり。
そこには岩に腰掛け頭を抱える奇妙な風貌の男が一人佇んでいた。
「...やらかした」
依頼の受注書ができるまで、その場から少し離れようとした途端、体に染みついた動きが俺をブリッジで走らせた。とまるに止まれずこの森までノンストップで駆けてきた。この体は気持ちの悪い事に息も上がっていないし、汗一つかいていない。
(しかも普通に馬くらい早くなかったか?ほんと気持ち悪くて最高のキャラだぜ)
あれ以上注目されたくなくて、とりあえず近くの森まで走ってきただけだったが、偶然にもここがオーク討伐の目的地らしい。
「運が良いのか悪いのかわかりかねますね...まぁ、依頼は事後報告でもいいでしょう。」
汚い言葉で悪態をついたつもりでも、景清の丁寧な言葉に変わって発せられる。これも、もう慣れた。
「さて、行きましょうか」
ゲーム内マップはいやというほど叩き込んでいる。この岩を背にまっすぐ進めばオークの村だ。村という名前ではあるものの、ただ沢山オークが湧く場所ってだけだ。
「結構湧いてますねぇ」
目を凝らす、5、6体は確実だろう。あの依頼の内容は【オークの討伐】だった。数は考慮されていない。
(だったらやる事は一つ)
木の後ろに隠れながら、少し離れた所に佇んでいるオークの背後に忍び寄る。
「こんにちは。」
肩に手を置き挨拶する。本当は触れるだけでいいのだが。
まぁ、この世界にきて初めての戦闘でテンションが上がっているので仕方ない。
オークの頭上に赤いゲージが現れる。敵対モブの体力ゲージだ。プレイアブルキャラやNPC以外は接触するだけで戦闘になる。ここも変わらずらしい。
「グオォォォォ!!」
力任せに振るった棍棒を後ろにステップを踏み回避する。
敵対モブには三種類いる。
こいつみたいに特定の攻撃しかしてこないやつ。通称雑魚
そして、プレイヤーのキャラの様にコンボや回避、無敵までついてるやつ。通称ボス
最後に一番糞キャラ。ある特定の行動のあとしか攻撃が通らないイベントキャラ。通称時間食い。その名の通り時間をかなり取られる。精霊とかその辺のやつらだ。
そんなことを考えていると、自分の視界の左端に緑の棒が現れる。モブと戦うときのHPだ。
プレイヤーとの戦闘では、このバーは現れない。没入感を出すため、本当にこのキャラが戦闘できないとシステムが判断するまで、負けにはならない。しかし、キャラの動きは次第に悪くなる。その怪我が反映されているかのように。そこに大技や為技をたたき込んで決着となるのだ。
「...なんて。誰に説明してるんでしょうね私。」
おもむろに胡坐をかき、そしてその足を首の後ろに通し、手で立ち上がる。
そのままの体制でオークにとびかかる。
「グギャ!?」
頭よりも上にあるつま先で鼻を強打されオークが大きくのけぞった。
すかさず胡坐にオークの首を通し、両手を地面に付き勢いそのまま木へとたたきつける。
そして仰向けになり、こぶしを頭の上の位置で構える。角度は内側に45度。
瞬間。肩と肘に激痛が走る。骨が本来あるべき場所から押し出されるような強い痛み。
「ッ...!!ですが、切腹よりはマシですねッ!!!」
腕が約三倍の長さまで伸びる、そのまま気に打ち付けられていたオークのみぞおちにヒットする。
「ガッ...!ギィ!」
オークから声にならない声が漏れる。この時点でもう残りのHPは半分を切っていた。
そしてそのまま伸びた腕で、オークの顔をがっちりとつかむ。
「関節って...戻す時も痛いんですよ...ねっ!!!!」
そしてつかんだまま腕を元に戻す、外れた間接が元の位置にゴリっと元の位置にはまる。当然とても痛いが、どこか気持ちがいい。
そしてその勢いのまま膝をオークの顔面にたたきつける。これぞ威力は弱いがめちゃくちゃ隙の少ないコンボ。【テケテケ始動】だ。
そしてここまで当たれば確定する大技が一つ。
足を素早く離し、頭を挟み胡坐をかく形でホールドする。そして上半身を270度右にねじる。だがとまらない、360、720、1050度。骨が本来動かない位置にまで動く、筋肉がミチミチと音を立てる。骨がきしむ。しかし痛気持ち良い程度の痛み。
「人間ヘリコプター!」
ネジった身体が元に戻る反動でオークの体が、首を吊るかのように空中に浮かび上がる。
そしてオーク一人分(約2M)ほど浮いた所から後頭部を地面に向かったたたきつけた。
後頭部が見事に陥没したオークが光となって消える。そしてその場にはオークの首飾りが落ちていた。
「初クエスト...完了ですね。」




