12話目 種族
CoNには多種多様な種族がいる。
人型で言えば人間種、エルフ種、ドワーフ種、獣人種、亜人種、魔人種。
どちらかと言えば人型じゃないのは、獣種、魔物種、龍種、ゴーレム種。
そして、そのどちらの形もいるのが、精霊種、機械種、悪魔種、天使種。
そしてその種族から一人、プレイアブルキャラが選出されている。
ガンダは亜人、ラルは獣人、メリアは魔人。
では、景清は?軟体生物の魔物?メリアの言うようにオートマタの機械種?
否、人間種である。貴重な人間としての1枠を景清は持って行ってしまったのである。
そんな男が、オークの首飾りを手にし、アジトへと歩く。今度は急がないように、きちんと二本足で立ちながら。
(しかし、間接外しの痛みまであるとはな...まぁ仕方ないか、ゲーム内に入っちまったようなもんだし。)
歩くたびに頭上の木ががさがさと揺れているのは気のせいだろう。粗い息遣いが聞こえるのも気のせいだ。きっと。
そしてアジトへ続く道が見えてくる。さっきよりは大分時間がかかってしまった。しかし、それでいい。ブリッジ走りは二度とするまい。これ以上目立つのはまずい。どこから伝わって例の勇者が駆けつけてくるか分からないからだ。
土だけの道が徐々に舗装された道へと移り変わってきた頃。ちらりと視界に映った街の明かりはほとんど消えかけていた。
「そうでしたね。すっかり忘れていましたが、もう夜更けも夜更けですね。」
朝にこの世界への転生?転移?憑依?とガンダとのひと悶着、アジトへの帰還、クエストの受注・達成。これだけの事がたった一日の間の出来事だったのだ。時間が早く過ぎたと感じるのも無理はない。
(報告も明日にするか。)
足音も二重に聞こえており、後ろに誰かがいる気配がするが、それも疲れのせいだろう。一番会いたくないやつが頭をよぎったが気にしない。
コツン。コツン。
気にしない。石が頭に当たってるが、きっと歩いた石が跳ね返っているだけだろう。
「おい。いい加減にしろ。気づいているんだろう化け物。」
あら、幻聴まで聞こえてきた。今日は本当に疲れているらしい。しかも一番嫌いなキャラの声で再生されているあたり、よっぽど精神的に参っているらしい。早めに寝よう。
「...というわけにもいかないですよね。」
観念して後ろを振り返る。
そこには予想通り、身長3mの肩幅が大きいヤギの顔。額には五芒星。黒色の体毛で覆われたゴリラのような肉体に腕が四本。背中には広げると2mほどの蝙蝠の羽が生えており、下半身はライオン、尻尾はサソリ。見まごう事なき化け物。悪魔種のホース。一位二位を争うほど俺が嫌いなキャラだ。
「おい、化け物。みてたぞさっきのオークとの闘い。人間離れしてたな、空まで飛びやがって。俺と同じ悪魔種だと思って近づいたが、全くその気配がしねぇ。何の種族だよお前。」
(俺よりも見た目が化け物のやつに言われたくないけど...まぁ無視したら余計面倒くさそうだしな。性能も糞面倒だし。)
「化け物とは失礼な。あなたの方こそ私のような人間から見たら化け物ですよ。」
丸く真っ黒な目が細められる。その瞳には驚きと興味、そしてほんのわずかな喜びが宿っている。
「ほう。化け物と、俺をそう呼んだのか。人間。」
サソリの尻尾が揺れる。喜んでいるのだ。悪魔種にとって化け物とは誉め言葉である。そう、全く逆の意味なのだ。要するに価値観が理解できないキャラなのだ、こいつは。
「ええ。それで、立派な化け物さん。こんな普通の人間に何か用ですか?それを聞くためだけにわざわざ後をつけてきたのですか?」
「ああ。それだけだ。」
ほら、何か裏があるかと思わせといて単純な興味。本当に読めない。だからこそこの世界では出会いたくなかった。
「そうですか...それでは...」
背を向け足早に立ち去ろうとする。その時だった。
「———ってのも味気ねぇよなっ!!」
「なん―――ガハッ!!」
初めての自傷以外のダメージを食らい、受け身を取り振り返る。目の前には[back attack]の文字と、その後ろの巨体が目に映った。




