独白(その6)
そういえば、「若者の草食化」なんて言葉が流行ったことがあったわね。
私、あれ、今でも意味がよく分からないの。
「え? 何のこと?」って感じ。
だって、「草食」の反対は「肉食」でしょう?
草食動物は狩をしなくていいけど、肉食動物は狩をする。
もしそれが性欲の処理方法や強さを表すメタファーだとしたら、
「草食」は自慰行為派?
「肉食」はナンパでもして、ガンガンセックスする人?
じゃあ、お金を払って風俗を利用する人はどっちなのかしら。
私はどっちかなぁ。
自慰行為もするし、男とのセックスも好きよ。
うーん、やっぱり分からない。
まあ、どうでもいい話なんだけど、ある時ふと、
「草食化って、本当なの?」
って考えたの。
例えば、満員電車の中の、あの息が詰まるような痴漢の気配。
あれって、昔と比べて本当に減ったのかしら。
それに夜の街へ行けば、
「風俗」という名の完璧なシステムが今でも溢れている。
お金を払えば、
面倒な愛の言葉も、
将来の責任も、
何ひとつ背負うことなく、
その場限りの欲望を処理できる。
私は暇だったから、ちょっと調べてみたの。
日本の風俗産業の市場規模は、年間で五兆円から七兆円くらいあるらしいわ。
正直、驚いた。
でも数字だけじゃピンとこなかったから、
さらに調べてみたの。
アパレル業界。
ホテル・旅館業界。
外食チェーン。
その辺と同じくらいの規模なんだって。
つまり、それだけ沢山の人がお金を払って”欲望”を処理しているってことよね。
もちろん、これだけで何かを証明できるわけじゃない。
でも、だからといって「草食化した」の一言で片付けるのも乱暴よね。
でもね。
それでも私は思ってしまうの。
これで「若者は草食化した」って、本当なのかしら、って。
そもそも、誰が言い出した言葉なのかしらね。
「私は草食系です」なんて、自分から言う人いる?
「あの人は草食系だから安心」なんて、本気で思う人いる?
うーん。
やっぱり、どうでもいいわ。
私には関係なさそうだし。
でも、いい暇つぶしになったわ。
さて、今日はこれからホテルで男に会うの。
さっきシャワーを浴びたばかりだけど…下着を変えて出かけなきゃ。
私の今日の気分は、「肉食系」かもね。
じゃあ、続きはまた今度。




