↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜の夢路 〜守れなかった願いが導く異界譚〜  作者: 陰東 紅祢
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/57

動き出す執念

 ひなを始めとし、ヤタたちは「裁きの間」として利用されている広場に集められた。

 窓もなければ色も何もない、ダンスホールかと思われるほど広々とした殺風景な場所。あるのは部屋の中央に置かれた椅子が二つと、机が一つあるくらい。

 閻魔は、その椅子の一つに深く腰を掛け、彼らを待っていた。

「来たか」

 全員が来たことを確認し、周りに自分たち以外の人影がないとわかっていても、閻魔は声を落とした。

 その気迫に、全員が息を呑んだ。

「今後の話をしよう」

 閻魔はひなたちを見据え、前置きを作らず単刀直入に本題に入る。

「阿修羅本体が洞窟から出てくるのは、もはや時間の問題だ」

 閻魔は顎に手をやり、一同を流し見た。その目は鋭く、見る者によっては恐怖に気を失う者もいるほど、強面だった。

「阿修羅の狙いは二つ……」

 流し見る視線は、ひなで止まった。その瞬間、ひなは意図せずびくっと肩を震わせ、拳を握りしめた。

「ひな殿を、力ごと取り込むこと……そしてもう一つ」

 閻魔は、トン、と人指し指で机を一つ叩く。

「麒麟の抹殺」

 その言葉に、理由を知るヤタたちは表情を硬くし、全部を知らないひなは戸惑いの色を露わにする。

「す、すみません……なぜ、麟さんまで?」

「簡潔にいえば、麒麟は帝釈天の命を持たされているからだ。つまり……」

 言葉を続けようとして、閻魔は瞬間躊躇った。

 どう伝えるべきか……。

 黙った閻魔にひなは不安な顔で見つめる。

「つまり……麒麟が倒れれば、帝釈天も倒れ、この三世界の崩壊を生むことになる」

 ひなは顔色を変え、言葉を失う。

 事の真相は、いつもひなの想像の斜め上をいく。心のどこかで、自分だけの問題だと思っていた。だが、事態はより深刻な状況だった。

「……一歩間違えば、全てが崩れるってこと、ですよね」

「そうだ」

 言葉を濁すこともなく、閻魔が深く頷き返す。

 ――君の存在は危うく、そして尊い。

 少し前に言っていた閻魔の言葉の意味が理解できた。

 意図せず寒さを感じ、ひなは身震いをして自分の体を抱きしめる。

「先の対峙とはまた違う戦い方になる。帝釈天、麒麟も今回の対峙には参加できない。と、なれば、ここにいるお前たちと、麒麟の式神とわしで奴を迎え撃たなければならん」

「前回よりも不利ってことか……」

 それとなくヤタが呟く。

「主要人物が欠けているからな。だが、利点があるとすれば、奴の力は半減している」

 もしひなが相手側に渡れば、勝機はない。といい含む閻魔に一層空気が重たくなる。

「ひな殿を奪われないよう、我々はまず配慮しなければならない」

 閻魔の言葉に、ひなを除く三人全員が何も言わず頭を下げた。

「それから、もう一つ。危険因子がいるだろう」

 危険因子。それを聞いてヤタと獅那は小さく反応を示した。

「……マオ、ですか」

 ヤタの視線が微かに陰る。だが、その眼光は鋭い。

「そうだ。ひな殿をここへ突き落すほど、彼女は自分の存在を見誤っている上に、不安定だ」

「……長く共にありながら、見抜けなかったことは、俺の失態です」

 ヤタ自身も彼女の行動や思惑を見抜くことができなかった。それを悔いているのか、握る拳に力が入る。

 後悔を滲ませるヤタに対し、不知火はそんな兄の肩に手を置いた。

「兄上。長く傍にいるからこそ、見抜けないものもあります」

 ヤタは静かに語る不知火を見て、怪訝な顔を浮かべる。

「不知火……?」

「彼女は……」

 不知火は一度言葉を切り、閻魔を見る。

 このことが、彼を追い込むことになりかねない。それを懸念している目だった。

「八咫烏。彼女はな……阿修羅の諜報員という話だ」

 不知火の代わりに閻魔が答えると、ヤタと獅那が驚きに目を見開く。

「!?」

 愕然としたヤタたちは、言葉を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。