第90話 ボス攻略最前線 その2
難攻不落の吸血鬼に何とか攻撃を当てるため、俺達は色々な魔法を試してみる事にした。
「先輩、本当に僕も行くんですか!?」
「どうかお願いします! ヨイスさんの地雷魔法ならワンチャン防がれないかもしれないんで」
手を合わせてヨイスさんに頭を下げる俺。見学だけと言って連れてきたのに申し訳無いが、今はとにかく攻略の糸口が欲しい。
「俺も音魔法セットして来たんで、一緒に逝きましょう」
「“いく”の漢字がおかしい気がするんですけど!?」
そうは言いつつもダンジョンに飛び込んでくれたヨイスさん。ありがとうだぜ。
俺は多彩な奏者を発動し、音の砲撃を放った。
「サウンドキャノン!」
多彩な奏者のランクは最高の5。理由は色々あるが、とくにぶっ壊れなのが弾速と貫通力だ。
弾速は言うまでもない。音速である。スピード特化のボスには避けられる事もあるが、今回のボスなら対処が間に合わない可能性も十分期待出来る。
また貫通力というのもそのままの意味だ。音は物体をすり抜ける。壁の裏側にいる敵に攻撃を当てる事も出来るのだ。
これなら魔法を吸収するというボスの闇魔法を突破出来る、かもしれない。
果たして結果は如何に。
俺が放った音の砲弾は、あっけなく黒いモヤの壁に吸収された。ちっくしょう。
「大竜巻!」
「グラビティーフィールド!」
「呪怨!」
他のメンバーも一斉に魔法を放つ。弾を放つようなの以外の魔法の寄せ集めだ。これならどうだ?
ボスの全身をモヤが覆った。そこに魔法が作用……しない。ことごとく吸収されたと見るべきだろう。
「ヨイスさん、俺達がヘイトを取るんで、その隙に地雷を設置して下さい」
「は、はい!」
ボスの反撃。自分の腕を噛んで血を吹き出させて空中に展開。血液で形作った武器を雨あられと飛ばしてきた。
「ぎゃーーー!!」
「血が! 血があああああっ!?」
「南無散!」
防ぎ切れなかった転生者から次々に死んでいく。俺の方にも攻撃が来た。
「くっ、サウンドバズーカー!」
飛んで来た血の剣を音魔法で迎撃。粉々に砕けたと思ったらその破片が変わらぬスピードで飛んできた。嘘だろおい!?
咄嗟に横に跳んで回避。血の破片がUターンして俺を追尾してくるのが見えた。走って逃げる俺。
「先輩! 地雷どこに置けば良いんですか!? これどうやって踏ませれば良いんですか!?」
ヨイスさんの叫び声が聞こえた。
「ボスさっきから一歩も動いてないんですけど!?」
うん、それはだな、えーっと……、どうしたら良いんだ?
その時だった。
「俺に任せろ!」
突然転生者の1人が俺達の前に躍り出た。
「ぬうん!」
転生者が気合を入れると地面がくりぬかれ宙に浮き上がった。念動力か。
「新人! これに地雷をありったけ設置しろ!」
「え、は、はい!」
言われるがまま岩の塊にタッチし魔法を仕掛けるヨイスさん。それが終わるのを見届けた転生者はその岩をボスに向けて飛ばした。
「魔法は吸収されるが、魔法で動かした物質は吸収されないはず!」
おお、なるほど!
岩は山なりの軌道でボスの頭上から迫った。直撃コース。ボスはそれを見上げ手をかざした。血が集まって盾を形成。そこに岩が命中した。
チュドーン。
地雷魔法がさく裂。あたり一帯が爆炎に包まれ破片が飛び散った。
「「「やったか?」」」
言うなって。
風と共に煙が晴れると、そこにはボスの姿があった。
「お、おい。あれ!」
「ああ、初めてのヒットだな」
「耐久はそれほどでもない、ってことか」
ボスは爆発により右手を失っていた。それ以外の場所も火傷が目立つ。高級感のあった黒コートはボロボロでみすぼらしくなっていた。
『ミョンチー様、先ほどの爆発で敵が操る血の量が減少しました。熱で血が変質して操作の対象外になったようです』
おお、マジか!
『魔法は闇で、物理は血で防ぐというのがこのボスの行動パターンのようです。火属性を付与した物理攻撃なら血の武器を破壊し減らしていく事が出来ます』
ついに見えた攻略の糸口。
だが喜びもつかの間だった。ダンジョンの外で野次馬している転生者の1人が叫ぶ。
「おい、再生してるぞ!」
ボスが血武器を普通の血に戻して飲んでいた。無くなっていた右腕がぐんぐんと生えていく。たった数秒で全ての傷が完治していた。
そして再び展開される血武器。
『血を飲んで得られる回復効果で血を生成しています。まるで永久機関ですね』
なにそれずるい。
血武器が再び飛んできた。雨あられと飛び交うそれらを浴びて、俺達は全滅したのだった。




