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TS斧使い、ダンジョンで脳筋に仕上がる  作者: 源平氏
第三章 これは俺が転生するまでの物語
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第89話 ボス攻略最前線 その1


「先輩、今日はありがとうございました」


 町に帰ってきた俺達。これからの事を考えていると、ヨイスさんがこっそりそう言ってきた。


「ジーナはいつもあんな口調ですけど、最近は落ち込んでるなって時が多かったんです」


 うん、まあなんとなく察する事は出来る。


「足を引っ張っていると思い詰めてたんでしょうね。いくらアドレナリンを出せるからって、あんな腕がボロボロになる戦い方は、普通なら出来無いと思います」


「やっぱりそうですよね。この先も無理はして欲しく無いんですけど……」


 俺達はジーナジョンさんの方を見た。教会の入り口で「我、復活!」と叫んでポーズをとっている。もしかしたらただの中二病ムーブではなく、自身を奮い立たせているのかもしれない。



 よし、決めた。


「ヨイスさん、この後ですけど、ボスの攻略を見学してみませんか?」


 ささやかながら、もう少し彼らへの支援を続けよう。


「ボス、ですか?」


「そうです。このまま次のダンジョンに行く事も出来ますけど、やっぱり仲間とかスキルとかが増えるのを待ってからの方が良いと思います」


「それは僕もそう思ってますけど、ボスに挑むのはまだ早いと思いますよ?」


「はい、なので見学です。何もしないで待つより良いと思うので」


 時間がもったいないというジーナジョンさんの焦りもこれなら和らぐかもしれないしな。


「……はい! ジーナを呼んできます!」


 ヨイスさんはジーナの元へと駆けていったのだった。





~中嶋優斗のダンジョン~


区分 :ボス

タイプ:採石場

人数 :6名以下

対象者:メッチュ




「お疲れ様です、ゲッチーさん。今来ました」


「おお、ミョンチー。待ってたぞ」


 俺はダンジョンの外で転生者の1人とそう言葉を交わした。彼はこのダンジョンの攻略班のリーダー、ゲッチーさん。モジャモジャのひげを蓄えた大男である。


 山賊の親分みたいな見た目だが、その実ボス攻略パーティーを率いていた事もありザ・親分みたいな性格の人だ。


「あ、ミョンチーさん、どもです」


 隣にはこのダンジョンの対象者のメッチュさんも居た。



 ギルドのメンバーが増えたため、俺達は複数の班に分かれて並行してボスの攻略を進めていた。ここはその1つである。


 ゲッチーさん達は中の戦いの様子を見守りながら結果を記録している所だった。手元には粘土を薄く張った板。紙とインクが無いため代用品として用意したギルド自作の記録媒体である。


「ん? その2人は誰だ?」


 俺が連れてきた2人を見てゲッチーさんが聞いてきた。


「新人です。ちょっと見学させたいので連れてきました」


「おお、構わんぞ」


 そんな流れで挨拶を済ませ、俺は戦況を確認した。




 ボスを取り囲み近接戦を試みる転生者達。


 すでに何人かがやられている。しわしわに干からびた死体が光の粒になって消えていくのが見えた。


 血で形作られた武器がボスに操作され飛び交っている。数が多いし速い。囲んでいるのに転生者の方が手数で負けていた。


 また1人ボスにやられた。血の剣が刺さったと思ったら、とたんに傷口から血が噴水のように吹き出しそいつは干からびた。


 噴き出した血は空中を飛んでボスの口へ。それを飲んだ途端、ボスの腕から血が噴き出し血武器の数が増えた。それにより攻撃が苛烈さを増す。


「見ての通りだ。少しでも血を流すと一気に抜き取られる」



 前情報なら俺も聞いてはいた。ここのボスは吸血鬼チート。灰色の肌に銀髪、赤い目、そして黒いマントといかにもな姿である。


 ボスは基本的に転生者の生前の姿をしているが、転生後の種族を指定するとボスはその種族になるのだ。


 メッチュさんによると、神に要求したチートは以下の通り。


・吸血鬼のあらゆる弱点を克服している。

・高い身体能力と魔法の素質を有している。

・血液を自在に操る事が出来る。

・血液を飲めばどんな状態からでも回復する。

・闇を操り、どんな魔法も吸収出来る。



「弱点が無いってのが厄介だ。攻め手はまだ見つかってない」


「フレーバーテキストの方はどうでした?」


 ボスダンジョンにはフレーバーテキストが用意されている。そのボスに対応する転生者の生前の妄想とかが記されており、たまにチートの詳細が分かる事もあるのだ。


「特に攻略に関わる情報は無かったな」


「弱点が無くても無効ってわけじゃ無いでしょう? 回復出来なくなるまで削り倒せないんですか?」


「奴が操る闇を突破出来ないか試行錯誤している所だ。ほら、見てみな」


 ゲッチーさんに促されてボスを見ると、転生者の1人が魔法を放った所だった。傷を負いながらもボスに接近し、血を抜き切られる前に至近距離で魔法を放ったのである。


 突如ボスの前に黒いモヤが展開された。その黒いモヤに飲み込まれて魔法は消失。代わりにモヤが大きくなった。



「ちっ、至近距離でも駄目か」


『魔法を吸収して自身の魔力に変換しています。魔法を撃てば撃つほどボスの闇魔法が強化される事になりますね』


「魔法を吸収するほどボスの闇魔法が強化されていくみたいです」


「やっぱりそうか。武器スキルだけでなんとかするしか無いかもな」


 ゲッチーさんは苦々しくそう言ったのだった。




 ボスの能力は神に要求したチートと少し違う場合がある。おそらくバランス調整によるものだろうというのが通説だ。


 非戦闘型のチートを要求した場合は特に顕著だ。栽培チートを要求したら植物モンスターを大量に生やす能力を得ていたみたいな話はよく聞く話である。


 つまりどんなチートを要求したかの情報を鵜呑みにせず検証する必要があるのだ。


 なのでマオの解析能力はボスの攻略でも有用だ。でもマオの事を話すとどんな反応をされるか分からないので、他の人には俺は解析系のスキルを持っているという風に説明している。結果、俺は解析役としての立場も得ていた。



「血液操作の方は何か分からないか?」


『制限無しで操れるのはボス自身の血だけです。他人の血もボスの血を混ぜる事で操れますが、10秒間だけという時間制限があります。抜き取った血を一旦飲むのは自分の血に変換するためですね』


 その事をゲッチーさんに伝えると、ゲッチーさんはため息をついた。


「遠距離攻撃は敵に吸収されて駄目、近接戦は血を吸われて駄目。どうしろってんだ。おいメッチュ、なんか無いのか?」


「いや、絶対に死なないように能力考えたんで……」


 うん、さすがボス。理不尽オブ理不尽だ。


 そうこうしている内に戦っていた転生者は全滅。ボスは健在だった。



 よくある事である。さあ、ここからが攻略の本番だ。


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