第86話 ギルド始動
3人の狙いまとめ
ホスディア
ギルドを作って転生が滞っている状況を打開したい。またクソ神父相手に団体請求権を行使し転生の詳細について聞き出したい。あわよくば良い条件で転生したい。
ケロンチョ
マオ討伐の邪魔になるであろうミョンチー達を排除するためにこっそり転生を支援。いずれギルドを乗っ取り、転生者を率いてマオを倒したい。
ミョンチー
ギルドがマオを狙わないようにするためにメンバーに加入。マオをダンジョンから逃がす方法を探している。
隠しダンジョンをクリアして2週間が経った。
俺達は今、多くの転生者を引き連れてボスダンジョンに来ていた。ギルドの創立記念式典、兼、デモンストレーションを行うためである。
~佐藤はじめのダンジョン~
区分 :ボス
タイプ:荒地
人数 :8名以下
対象者:ダラント
「諸君、今日はよく集まってくれた!」
ダンジョンを背にホスディアが挨拶を始める。着いたばかりだがこのまま開催式だ。
俺は段取り通り、多彩な奏者を使ってホスディアの声を拡声した。
集まったのは30人程か。今居る転生者の約半数だ。それだけの人数が1日目にして加入を検討してくれているという事だろう。
ホスディアの挨拶は続く。
「我々は無慈悲にもこの世界に落とされ、苦痛を強いられている。この世界に来たばかりの頃は誰もが不安を感じたのではないか? 怒りを感じたのではないか? 恐怖は?」
来場者を見回すホスディア。
「俺もそうだった。直面した理不尽に心が折れそうになった事もあった。だがそれを支えてくれた者が居た。そう、仲間だ!」
拳を強く握りこむジェスチャー。合図である。俺は拡声のレベルを一段階引き上げた。
「我々には境遇を同じくする仲間が居る! 俺達は1人じゃない! 団結し、支え合い、補い合う事が出来る。ダンジョンに、ボスに、理不尽に立ち向かう事が出来る! 我々は同志だ!」
そうだ―! と誰かが叫んだ。
「ギルドは転生者同士で助け合うための組織だ。連携してより早く、より着実に転生するための組織だ!」
転生者達のガヤ声が増えていく。ボルテージが上がっているのは明らかだった。どんどん盛り上がっていく。
「助けてもらう側だけじゃない。助ける側にもリターンはある。ギルドに所属すれば誰もがこれまで以上のメリットを享受できる。今日はそれを証明する!」
ホスディアは背後のダンジョンを指さした。
「ここはボスダンジョンの1つだ。事情を知らない者も居るだろうから説明しよう。1か月前、ボス討伐イベントが開催された。
参加した転生者はボスを倒し、スキルを獲得する事が出来た。ここのボスもイベントで倒された内の1体だ。
だが、しかしっ!
そのイベントにはボスを倒しても転生出来ないというルールがあった。そのせいでイベントでボスを倒された者はその後、ボスに挑む仲間を見つける事が出来なくなった。
なぜか。それはほとんどの転生者はもうそのダンジョンからスキルを得てしまったからだ」
演説に聞き入る転生者達。いい感じだ。
「他人のボス討伐を手伝った者はスキルを得る事が出来る! 今日はこのダンジョンを未攻略の者にスキルを獲得してもらうと共に、転生出来ず困っていたこのダンジョンの対象者、ダラントの転生を手伝う!」
おおー、と何割かの転生者達がどよめいた。多分イベントの後にこの世界に来た新人達だろう。
「安心しろ。ここのボスの攻略方法は既に確立済みだ。攻略要員は1名。残りの7枠は希望者に順に入ってもらう。ダラントは最後だ。では次に主要メンバーに挨拶してもらおう!」
「ダラントさん、挨拶、お願いします」
俺はダラントさんにそう告げた。ダラントさんは恥ずかし気にホスディアの横に立ちペコペコと頭を下げる。
「ダラントです。仲間に見捨てられて、誰も今まで協力してくれなくて、……グスッ、こんなに良くしてもらいありがとうございます!」
ダラントさんの挨拶は終わり。次は俺の番だな。
「ミョンチーです。今回ボスの攻略要員として参加させていただきます。こう見えて男です。よろしくお願いします」
TSだー! と誰かが叫んだ。恥ずかしいなこんちくしょう。
「では希望者は一列に並んでくれ! 順次スキルを獲得してもらう!」
こうして、俺達のボス周回がスタートした。
転生者の中には疑問に思っている奴もいるだろうな。どうやって俺1人でボスを倒すのか。
方法は単純。ボスの弱点を突くのだ。
このダンジョンのボスは過剰ともいえる能力を持っている。
目に見えないほどの超スピードで動き回り、剣を振るだけで遠くの物を切り裂き、追いつめられるとダンジョン全体を火の海にし、挙句の果てには催眠をかけてくる。
どうやって倒すんだって話になるよな。だからこそ、このボスにはバランス調整がされている。
圧倒的紙装甲。しかも状態異常に100%かかるのである。
これが今日俺がセットしてきたスキルだ!
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・多才な奏者(ランク5)
音系能力詰め合わせ。
物理法則から乖離するほど消費魔力上昇。
・壇上の校長先生(ランク2)
声を聞いた者に睡眠と貧血を付与する。
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あとケムシンから剣を借りてきたぞ。
作戦は単純。
ダンジョンに入って早々、ボスに俺の声を浴びせて眠らせる。寝てる間に首を切り落とす。勝利!
実に単純な作業だ。
「それでは突入!」
俺はダンジョンに踏み込むと同時に、拡声レベルを最大にしてこう叫んだのだ。
「おっはようございまあああっす!!」
活動初日にして、ギルドに32人の転生者が加入した。デモンストレーションは大成功で幕を閉じたのだった。




