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TS斧使い、ダンジョンで脳筋に仕上がる  作者: 源平氏
第二章 やりたい事があるんだ
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第84話 やりたい事があるんだ


 隠しダンジョンを攻略してからしばらく経った頃、俺はホスディアにある事を聞いてみた。


「なあ、ホスディアって結構顔広いよな。ケロンチョの奴が今どうしてるか知ってたりしないか?」


「どうした急に?」


「いや、あいつまだ転生するつもりあるのかなって思って」


「ああ、そういう事か」


 転生者1人に対してボスが1体。それがこの世界のルールだ。ケロンチョはマオに対応する転生者なのである。


 俺はマオを奴から守りたいと思っているが、もしかしたらすでにマオに危機が迫っているかもしれない事に気付いていた。



 奴はイベントでバグを利用した罰としてマオ討伐の実績を無かった事にされ、さらに半年間はマオを倒しても転生出来ないというペナルティを受けていた。


 転生者は転生を諦める事が出来る。49日間教会に行かないと体が朽ちて、生き返る事無く消えて無くなるのだ。


 転生者が転生したらボスはダンジョンごと消滅する。ならば転生を諦めて脱落した場合も恐らく同様だろう。


 もしもケロンチョが転生を諦めて脱落したら、マオも道連れで死んでしまうのだ。



 はたして奴は今どこで何をしているのか。


「ケロンチョはイベントの後、自身のパーティーを追放されて集会場にほとんど顔を出さなくなった。だが転生を諦めてはいないようだったぞ。半年後に向けて準備をしているのだろう」


「そうか、ならいいや」


 当分はマオに危険は無さそうだ。その事が分かり安心した俺は、前からやりたいと思ってた事を消化する事にした。


「この後って別行動でも良いか?」


「構わないが、何か用事でもあるのか?」


「ああ、ケムシンと行きたい所があってさ」








 数時間後。森のほとりにて。



~東城真央のダンジョン~


区分 :ボス

タイプ:森林

人数 :10名以下

対象者:ケロンチョ



 俺とケムシンはマオの元を訪れていた。マオにダンジョンの端まで来てもらい、境界越しに顔を合わせているのである。


 各々地面に座り、リラックスした状態でおしゃべり中。



「実はさ、俺がギルドに入る事にしたのには、もう1つ理由があるんだよ」


「もう1つの理由、ですか?」


 ホスディアに提示されたギルド加入のメリットとは、転生を支援してもらえるというもの。確かにそれ自体も魅力的だが、それ以上に俺にはやりたい事があった。


「俺もいつかは転生するつもりだけどさ、それまでにマオの事を何とかしたいんだよ。ケロンチョはこの先もマオを殺そうとしてくるだろ? 安全を確保しておきたいんだ」


「安全ってどんなん?」


「ギルドの初期メンバーならそれなりに意見が通る立場になれるだろ? マオに狙いが行かないように誘導出来ると思うんだ。そうやって時間を稼ぎながら、マオをダンジョンから逃がす方法を探そうと思う」


 マオは一度ダンジョンから抜け出した事がある。その方法は今は使えなくなってしまったが、他にも方法はあるかもしれない。


「マオは転生者じゃないから食べたり遊んだりは禁止されてないと思う。ダンジョンを抜け出したらマオは自由に生きられると思うんだ」


「ミョンチー様、私のために……」


「ええやん、俺も手伝うで!」


「と言う訳でさ、ここから提案なんだけど――」


 俺は今日マオに会いに来た本題を切り出した。




 かくかくしかじか。俺の提案に乗ったケムシンとマオ。


「じゃ、まずはマオの1つ目の夢、とっとと叶えちまうか」


 俺達は立ち上がった。マオは身構え、ケムシンは俺と一緒にクラウチングスタートの体勢を取った。


「たとえ2人が相手でも、ダンジョンに入ったら私の意志とは無関係に襲い掛かってしまいます。躊躇はなさらないで下さい」


「おとりは任せとき」


「オッケー」


 俺とケムシンはタイミングを合わせてダンジョンに突入した。


 一斉に召喚されるマオの使い魔。その群れの中を駆けながら、俺はマオに手のひらを向けた。


「ひとくちサイズのショートケーキ!」


 使い魔に殺される直前、俺はスキルを発動したのだった。


=======================

・独りよがりなパティシエ(ランク1)

  対象1体の口の中に任意のケーキを召喚する。

=======================




 つつがなく教会で復活。俺は念話でマオに話しかけた。


「どうだ? 食べられたか?」


『はい。口の中が感動でいっぱいです!』


 マオの夢。それは食事を体験する事。今はまだこんな事しか出来無いが、いつかはダンジョンを抜け出させてもっとちゃんとしたものを食べさせてやりたい。


『ありがとうございます、ミョンチー様。あなたに会えた事は私にとって一番の幸運です』


 おいおい、そんなに喜ばれるとこっちも嬉しくなっちまうぜ?


 俺は胸が温かくなるのを感じ、そしてある事に思い至った。



「決めたよ。俺、転生したら料理人になる」


 以前から、人の役に立つ仕事に就きたいと思っていた。


 具体性の無いあいまいな思いだったけど、こうしてマオの喜ぶ様子を前にして、俺の中でイメージがようやく固まったのだった。


第二章 やりたい事があるんだ 完


ここまでお読みいただきありがとうございます。

良ければ評価、感想の程、よろしくお願いいたします。

m(_ _)m

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