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TS斧使い、ダンジョンで脳筋に仕上がる  作者: 源平氏
第二章 やりたい事があるんだ
73/119

第72話 亡霊武者への挑戦


~憤怒のダンジョン~


区分 :ノーマル

タイプ:墓地

人数 :5名以下

難易度:☆☆☆☆☆



 その墓地は林の中にあった。切り開かれた土地、たくさんのお墓、ときどき灯篭。お盆の墓参りを思い出させる光景だ。


 唯一日本じゃないと分かる要素は、墓石に掘られているのが見覚えの無い文字である点だ。


 ボウッ。


 俺たちが墓地に踏み入ったとたん、人間サイズの青白い炎が巻き起こった。炎の中から現れたのは鎧武者。


 赤と黒を基調とした、美術品としての価値すらありそうな重厚な甲冑。そして太刀。兜には鬼のデザインの面具がついていて表情はうかがい知れない。


 ただ、目があるべき場所で揺れる青白い炎が人では無い事を物語っていた。


 鎧武者が静かに太刀を抜いた。見惚れるほどの流麗な動作。そして濃密な気配。積み上げられ洗練された武がそこには感じられた。


 雰囲気だけで分かる。こいつは強い。



 だが今さら怖気付く奴は居ない。対峙するのはホスディア率いる俺達5人。


 これまで他の七大罪のダンジョンを攻略してきた事で互いへの理解は十分深まっている。連携はばっちり。作戦だって立てて来た。


 ホスディアは後衛、俺とシリルさんは遊撃、ケムシンは切り札として温存だ。そして敵の正面を引き受けるのは、


「任せるのじゃ」


 バーバラさん。小さい体で前衛を任されたのじゃロリが槍を構えた。



=======================

名前 バーバラ


ステータス

・戦闘外科医(ランク5)

  筋力:☆☆☆☆

  耐久:☆☆

  速度:☆☆☆

  魔力:☆

  器用:☆☆☆☆☆


スキル

・慎重すぎる槍士(ランク3)

  槍を最大10本まで召喚できる。

  この槍に特殊効果はない。


・殴り弓兵(ランク3)

  近接戦を行うほど遠距離攻撃の威力上昇。

=======================



「遍無偏流、免許皆伝、バーバラ。お相手つかまつるのじゃ」


「鮴阪Ω荵?ココ鮗サ蜻ゅ′螳カ譚・縲∝?譫鈴摩蟾ヲ陦幃摩逶エ螳壹?∝盾繧」


 名乗り(?)を交わした直後、両者の間に火花が散った。お互い予備動作ゼロ。一瞬の間に武器が打ち合わされていた。


 太刀の切っ先と槍の穂先。点と点で接して互いの突きが停止していたのである。


「んじゃっ!?」


 太刀が捻られ穂先を横へと弾いた。距離を詰めようとする鎧武者。


 それより早く槍を引き戻し突きを繰り出すバーバラさん。太刀の間合いに入らせないつもりか。


 絶え間なく武器が交差し金属音が鳴る。


「弘法でももう少し不器用じゃぞ!」


「縺昴?鮨「縺ァ縺薙l縺サ縺ゥ縺ョ閻輔→縺ッ」


 達人対達人。技術の押し付け合いだ。リーチの有利を維持しようとするバーバラさんとそれを崩そうとする鎧武者。


 見た感じ鎧武者の方が優勢か。


 だがこっちは5人だ。1対1で戦う気ははなから無い。



 一瞬で、鎧武者の背後にシリルさんが回り込んだ。



=======================

名前 シリル


ステータスロット

・急降下ハヤブサ(ランク4)

  筋力:☆☆

  耐久:☆

  速度:☆☆☆☆☆

  魔力:☆☆

  器用:☆☆☆


スキルロット

・貯金癖の先駆者(ランク5)

  助走をストックできる。

  ストックを消費して加速できる。


・辻蹴り(ランク3)

  強力な蹴り技を放てるようになる。

  このスキルは魔力を消費しない。

=======================



 辻蹴りで地面を蹴る事による速度の限界突破。ステータスの各項目の上限は☆5だが、スキルを使えばそれ以上の性能を発揮出来る。


 速度☆5のステータスが出ていないという理由でランク4のステータスを使い続けている程のスピード志向。


 鎧武者がどれほどの達人であっても、対応が間に合わなければ意味は無い。


 ガキッ!


 鎧の隙間を狙ったシリルさんの短剣はしかし、ほんの少しの身じろぎで的を外され無効化された。


「舐めんなっス!」


 ガガガガガガッ!


 短剣の軽さを活かした連撃。数を撃って隙間に突き刺すつもりだ。


 だが当たらない。


 鎧武者はバーバラさんを相手にしたまま、背中に目がついているかのように的確に、正確に、最小限の動きで背後からの攻撃を防いでいた。


「いかん! 避けいっ!」


 バーバラさんが叫んだ。


 いつの間にか切っ先が背後に。鎧武者は刀身を担ぐようにして背後へ太刀を振るっていた。


「ぬんぅ!? っス!」


 シリルさん、側転するようにそれを回避。その隙をバーバラさんとホスディアが狙う。


「クレイカーペット!」


 ホスディアの魔法。敵の足元を粘土に変えて流動させた。鎧武者の体勢が強制的に崩される。



=======================

名前 ホスディア


ステータス

・バベルの塔の定礎(ランク5)

  筋力:☆

  耐久:☆☆☆☆☆

  速度:☆

  魔力:☆☆☆☆☆

  器用:☆☆☆


スキル

・虹の付与魔法使い(ランク5)

  味方1体の武器に7属性を付与出来る。

  付与される属性は毎回ランダム。


・大釜で粘土を練る魔女(ランク4)

  粘土を生み出し自在に操る事が出来る。

=======================



 間髪入れずバーバラさんが突き込んだ。


「遍無偏流槍術、蛙舌!」


 体重を乗せた一撃。右手を最大限に伸ばし最速で敵の喉へ。


 味方2人が作った隙を拾い、命を貫きにかかる。



「クレイキャノン!」


 さらに駄目押し。バーバラさんの脇をかすめるようにして泥の砲弾が迫る。


「ケムシン!」


「応!」


 俺とケムシンも追撃の体勢に入った。俺は斧、ケムシンは剣。たとえ防がれても俺達でとどめを刺す。


 そうならずに済んだとしても、敵の意識を少しでもこちらに割かせられればそれで良い。



=======================

名前 ミョンチー


ステータスロット

・機動大仏(ランク5)

  筋力:☆☆☆

  耐久:☆☆☆☆

  速度:☆☆

  魔力:☆☆☆☆

  器用:☆☆


スキルロット

・慈悲深い処刑人(ランク4)

  大斧を1つ召喚し扱う事が出来る。

  刃が首に命中した場合威力が倍になる。

  この斧による攻撃は痛みを与えない。


・心のホットライン(ランク1)

  対象1体を登録しテレパシーで通話できる。

  対象と5㎞以上離れていないと繋がらない。

=======================




「遐エ繧後◆髫懷ュ舌r驥阪?縺溘→縺ヲ鬚ィ縺ッ騾壹k」


 攻撃が届くより先に、鎧武者が倒れた。


 否、地表を滑った。


 次の瞬間、俺は吹っ飛ばされ、バーバラさんは槍を斬られ、ケムシンは腕を斬り落とされていた。





 一体何が起こったのか。


 最初に届いた攻撃は泥の砲弾だった。だが太刀で弾かれ俺の方へ飛んできた。咄嗟に斧で受け止めたものの、衝撃で俺は吹っ飛ばされた。


 次に届いたのは槍。体勢を崩されている上に砲弾に対処した事で隙だらけの状態。鎧武者はそのまま貫かれるかと思われた。


 だが鎧武者は倒れるのに逆らわず体をさらに低く倒し、槍をくぐって回避。地面スレスレで突進しバーバラさんの足元へ。


 横薙ぎ。バーバラさんは跳んでこれを回避。まだ空中に居る所へ返す太刀が迫った。


「のじゃーっ!」


 槍を地面へと突き刺し落下の軌道を変えたバーバラさん。太刀を躱す事は出来たものの、代わりに槍が斬られてしまった。



 俺は戦線への復帰が間に合わず、バーバラさんは受け身を取っている最中。残ったのはケムシン。


「あかんっ、1対1になってもた!」


 すでにお互いの剣の間合い。鎧武者はバーバラさんへの追撃よりもケムシンを優先した。


 剣を振るう両者。だがケムシンの剣は虚しく空を切り、太刀は流れるようにその腕を斬り落としたのだった。






「まだや!」


 残った方の手で、魔力の玉が輝いた。



=======================

名前 ケムシン


ステータスロット

・魔力計を破壊する奴(ランク5)

  筋力:☆☆

  耐久:☆☆

  速度:☆☆☆

  魔力:☆☆☆☆☆

  器用:☆☆☆


スキルロット

・決死の魔女(ランク4)

  全魔力を一点に集めて放つ事が出来る。


・歩く棺桶(ランク4)

  致命傷を受けた場合、全身鎧を装着する。

  この鎧は攻撃やその他の効果を無効化する。

=======================



 おおよそ転生者が手に入れられる中で最高火力と思われるスキル、決死の魔女。そして魔力☆5のステータスを手に入れた事で、ケムシンの必殺技がついに完全体となった。


 その必殺技にケムシンはこう名付けた。


「ウイニングボール!」


 捨て身のゼロ距離射撃を敢行するケムシン。当たれば大爆発必須の光球が鎧武者へと放たれた。



 だが鎧武者も黙ってはいない。縮地の逆。後ろへ急加速した。光球と同じ方向へと移動し速度差をゼロに。


 太刀の側面を優しく沿わせ、爆発させる事無く上へとその弾道を逸らしたのである。


 上空で大爆発が起こった。地上に居てなお風圧が叩きつけられる威力。だがそれは殺傷に至るほどのものでは無かった。


 ケムシンの切り札は破られてしまった。




 決して悪い連携では無かったはずだ。各自が得意分野を活かしていた。俺達は十分に実力を発揮していた。


 ただ、奴の剣術の方が上だった。この上なくシンプルで残酷な結果がそこに示されていた。



『ミョンチー様、敵ステータスの推定値が算出出来ました』


=======================

・亡霊武者

  筋力:☆☆☆

  耐久:☆☆☆

  速度:☆☆☆

  魔力:☆☆☆

  器用:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

=======================


 スキルの効果だろうか。敵の器用値が限界突破していた。まさかの☆10である。



「ホス坊無理じゃ。勝てん!」


「ああ、そうだな」



 だがしかし、俺達には攻略情報があった。



「ならプランBだ。怒らせるぞ。あの鎧武者を」


 ここは、憤怒のダンジョンなのである。


「ミョンチー、墓を壊せ!」


「了解!」


 俺は斧を振りかぶり、墓石を叩き切った。


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