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TS斧使い、ダンジョンで脳筋に仕上がる  作者: 源平氏
第二章 やりたい事があるんだ
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第71話 幕間:パーティーメンバーに聞いてみた

憤怒のダンジョンの前に一旦閑話です。


 時は七大罪のダンジョン攻略の隙間時間。ダンジョンへと移動している最中の事である。


「あの、バーバラさんのその話し方って、生きてた頃からそうだったんですか?」


 新しい仲間と交流する中で、俺は思い切って尋ねてみた。


「そんな訳無いのじゃ。これはキャラ付けなのじゃ」


 恥ずかしげも無くそう断言するのじゃロリ。あまりにも堂々としたその態度に一瞬、何故と思う自分の感性の方が間違ってるのかと思ってしまった。


「ど、どうしてそんな事を?」


「そうする事でこれがアイデンティティになるからじゃ。後期高齢者というのは転生者の中では珍しくての。他人と違う事を後ろ向きに捉えても仕方ないから、自分らしさとして表現することにしたのじゃ」


 そうか、こんな世界に老人が迷い込んだんだ。オタクばかりの転生者と話が合わず苦労したというのは簡単に想像できる。


 この口調は転生者のグループの中に入っていくための努力だったのか。


 てっきり可愛い子ぶってるのかと思ってしまった。失礼な事を考えてしまってたな。


「それにほれ、ワシかわゆいじゃろ? きゃるーん♪」


 可愛い子ぶってんじゃねーか!


「……生前はアニメとか漫画とか見たりしてたんですか?」


「もちろんなのじゃ。サブカルは楽しくて好きだったのじゃ」


 確信犯じゃん。のじゃロリ知っててロールプレイしてるじゃん。


「せっかく新しい体になったのじゃ。なりたい自分になるのじゃ!」


 目指す方向性それでいいのか? とは思ったが、俺は口に出すのは控えたのだった。





 なりたい自分、か。


「ケムシンはこの前スローライフに憧れてたって言ってたよな。今でもそう思ってるのか?」


「せやな。大変やと思うけど、やっぱりそう言う暮らしがしたいわ。昼は畑を耕して、夜はのんびり野球観戦ってのが理想やな」


「田んぼはやるのか?」


「ええな。自分で作った白米を口いっぱいに頬張ったら美味いと思うわ」


 やばい、脳裏に米の記憶が浮かんできた。もはや懐かしさすら覚える食の喜び。くすぶっていた欲求も相まって、ケムシンの夢めっちゃ良いなと思わされた。





「転生したらやりたい事? 起業だ」


 先頭を歩くホスディアにも追いついて聞いてみた。そしたらこの即答。きっと普段からそういう事を考えてたんだろうな。


「どういう系の会社にするとか、イメージはあるのか?」


「それはまだだ。まずは市場を調査して産業構造とニーズを把握する必要がある。始めの内は既存の会社なり商会なりに入って下積みするのが良いだろう。場合によってはそのまま出世して経営陣入りを目指すのもありだ」


 えらく具体的なキャリアイメージが出て来たな。上昇志向がハンパない。


「その、これは別に批判とかじゃなくて純粋な興味なんだけど、どうしてそんなに大それた事やりたいんだ?」


「ふむ、モチベーションか。そうだな……」


 ホスディアはあごに手を当てて少し考えた末、こう言った。


「俺は、成果を渇望しているのかもしれん」


「成果?」


「ああ。これまでの努力が報われて欲しいという理由で更に努力してしまっている。執着とも言えるな」


 俺には分からない感覚だ。沢山努力した人なら分かるのだろうか。


「もう少し腹を割って話しても良いか。実を言うと、俺は怯えている」


「それは、何に?」


「いつでも今がそれまでの集大成だ」


 ……? 今? それまで? 何時だって?


「今の自分は果たして人生の集大成として納得出来る状態にあるのか。もっと上を目指せたんじゃないか。そんな不安に怯えている」


「……」


「転生して色々リセットされる部分はあるだろうが、またゼロからやっていくつもりだ」


 一緒に頑張ろうと言ったら、俺以上に努力しているホスディアへの侮辱になるんじゃないか。俺はそんな事を思った。


「まあ、転生先がどんな世界か分らんから今は何とも言えんな。身分が高くないと自由が無いという世界の可能性もある。その時になってから考えた方が良い事もあるだろう」


 軽い口調でそう締めくくるホスディア。俺の反応を見て気を使ってくれたのかもな。




 と言う訳で次はホスディアの隣を歩くシリルさんにも聞いてみようと思うんだが、


 あれ? ホスディアはもし起業したら社長になるよな。


「シリルさんって確か前、秘書になりた――」


「わあああああああああああああっ!」


 思いっきり口をふさがれてしまった。


 シリルさん、顔真っ赤じゃん。


「……社長、なにか聞いたっスか?」


 シリルさんって、ホスディアの事社長って呼ぶんだよな。秘書になりたいんだよな。え、つまりはそういう事?


 憧れ? ラブ? どっち?


「なんだシリル、秘書志望だったのか。ならギルドの役職を決める時は配慮しよう」


「……あざっス」


 ホスディアの反応にがっくりと肩を落とすシリルさん。


 その、なんかごめん。





 最後はマオだ。


(マオは何かしたい事ってあるか?)


『私も、ですか?』


(ああ、この世界ででも良いぞ。皆も夢が叶うかなんて全然分からないまま言ってるんだ。言うだけ言ってみろよ)


『……食事というものを体験してみたいです。ケロンチョ様の記憶として知ってはいますが、自分でも味わってみたいです』


 マオはダンジョンのボスだからな。閉じ込められて、ほとんど自由というものが無い。知識はあっても自分の経験ではないのだ。


 食事、食事かあ。


 俺は脳内のやりたい事リストにマオの願いも追加したのだった。


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