第68話 嫉妬のダンジョン、クリア
煽りに乗って現れた嫉妬の悪魔ことレヴィアタン。シルエットこそ人型だが、その見た目は人間とはかけ離れていた。
全体的に黒っぽい体色。肌は爬虫類みたいな鱗で覆われている。顔つきは蛇っぽい。武器とかは特に持ってないな。
「オークごときに苦戦する雑魚が、調子に乗ってんじゃねーぞ!」
こちらへ突っ込んでくる悪魔。腕を振りかぶり爪で攻撃する体勢。だがケムシンが間に入って止めた。受け止めた剣から火花が散る。
ケムシンが押し返して剣を振った。それを後ろに飛び退いて躱す悪魔。そのままスタジオの壁に着地した。
「チョベリバぁ!」
悪魔の両目が妖しく光った。次の瞬間、俺の視界が暗闇に閉ざされた。さらに体が重くなり動きが鈍くなる。
なんだ? 体が!? どうなってる!?
暗闇の中からケムシンの吐く音が聞こえた。
「ち、血が! 毒!?」
ケムシンの驚愕する声。
『複数の状態異常をランダムにかけるスキルの様です。暗闇と低速の状態異常を喰らいました。ケムシン様も何らかの異常状態と考えられます』
嫌らしい戦い方してくるな、こいつ。
だがまだ戦える。こっちは視界に頼らずに敵を探す事が出来るんだよ。
「エコーロケーション」
音の反響によって周囲を探知。悪魔が右後ろからこっそり迫ってくるのを捉えた。手の平だけをそちらへ向けてノールック射撃。
「サウンドボール!」
マオのエイムアシストにより狙いは完璧。魔法が顔面に直撃した。悪魔が衝撃で吹っ飛びのたうち回る。
『難易度5にしては大したこと無いステータス値ですね。リソースのほとんどをギミックに費やしているのでしょう』
「くそがぁ!」
起き上がろうとする所へ再度サウンドボールを撃ちこみ足止め。悪魔が盛大に転んだ。
暗闇が晴れた。時間経過か、それともダメージを与えたからか。状態異常が解けたようだ。
「ケムシン、行けるか!?」
「応!」
ケムシンが腕を構えた。手のひらには閃光がほとばしる魔力の玉。
決死の魔女。全魔力を一点に集めて放つ1度限りの大技。ケムシンのスキルである。
「波ぁぁー!!」
着弾と共にテレビスタジオが衝撃に晒された。めちゃくちゃになるセット。倒れる照明。傾いたスクリーンに倒れ伏す悪魔の姿が映った。
瀕死だ。普段の俺なら可哀そうと思ったかもしれない。だがここはダンジョン。決着は付けなければならない。
なによりアンチに同情する気にはならなかった。どうやら俺は自分で思ってた以上にイライラさせられていたらしい。
もしわがままを言えるならこいつにタイマンを挑みたい所だ。それも拳で。さんざんやらせ疑惑を吹っかけて来たこいつに殴り勝ったらスッキリするかもしれない。
だが我慢。ここまで来て負けるなんてリスクは仲間に負わせられない。舐めプは無しだ。
「お……、お、おっ……」
倒れたまま何かを言おうとする悪魔。なんだ? お?
「お前らの個人情報晒してやるー!」
それが嫉妬の悪魔の断末魔となった。ケムシンが剣でとどめを刺して終了。少しヒヤッとしてしばらく様子をうかがっていたが、特に何か起こるという事は無かった。
嫉妬のダンジョン、クリア。
という事で報酬のステータスガチャを引いたぞ。俺が引いたのはこれだ。
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・軽快な鉄骨ランナー(ランク5)
筋力:☆☆
耐久:☆☆
速度:☆☆☆☆
魔力:☆☆
器用:☆☆☆☆☆
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うーん、俺のスキルとは合わなさそう。特に器用が高いのがもったいない。マオのアシストがあれば☆1で十分だからな。ガチャだからこういう事もある。
続いてケムシンが引いたステータスはこちら。
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・逆三角ガチムチ(ランク5)
筋力:☆☆☆☆☆
耐久:☆☆☆☆
速度:☆☆☆
魔力:☆☆
器用:☆
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おお、前衛向きのステータスだ。タンク役を任せる時には使えるかも。ちょっと配分がアンバランスなのが気になるが。
「もう少し厳選したいところやな」
「俺のステータスも微妙だし、しばらくはランク5のステータス集めだな」
「了解や」
俺達は今後の方針をそう定めたのだった。
とはいえ少し疲れた。教会で体をリセットできるとは言え、攻略ばかりしてたら気疲れしてしまう。
俺達はいつもの路地裏で一息つく事にした。ぼんやりと雲とか眺めながら雑談するだけの時間を味わう。
「転生したら何食べたい?」
「白米やな」
「みそ汁は?」
「しじみの奴がええ」
「じゃ俺は豆腐を召喚」
「貝殻とぶつかって形崩れへん?」
「いや、一緒に入れるって意味じゃなくて――」
こういう時間を過ごしていると、常に何かしてないと落ち着かなかった日本の暮らしの方が変に感じてくるな。誰も彼もが隙あらばスマホをいじってた。何かに追われているみたいに。
いや、今も追われてはいるか。この後も難易度5を攻略しなければならない。それが終わったらボスにも挑まないといけない。早くこの世界からおさらばしたいからな。
他にも解決しないといけない事もある。
やりたい事があるなら、そのためにやらないといけない事が出てくる。当たり前の事だ。まあ、気楽に頑張ろう。
そんな事を思っていたら、
「ここに居たか、ミョンチー、ケムシン」
俺達に声をかけてくる奴が居た。
「今ちょっといいか?」
「ああ、暇してた所だ。どうしたんだ? ホスディア」
声の主はホスディアだった。以前即席パーティーを組んだ事がある転生者である。会うのはイベント以来だな。一体何の用だろう。
ホスディアは周囲に他の人が居ないのを確認すると、抑え気味の声でこう言ったのだった。
「隠しダンジョンに興味はないか? 難易度は6だ」




