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TS斧使い、ダンジョンで脳筋に仕上がる  作者: 源平氏
第三章 これは俺が転生するまでの物語
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第120話 犯人は


 ある日の夜、暗闇に紛れて町を出る1人の転生者が居た。


 三日月に薄雲がかかった暗い夜である。町の外には虫の鳴き声や風の音が主演を張る世界が広がっていた。その中を静かに進む転生者。


 そいつは容疑者の内の1人だった。これまでの護衛のスケジュールとダンジョンが消えた日をすり合わせた結果浮かび上がった、数人の内の1人。


 監視を始めてまだ初日。早速怪しい動きを見せやがった。


「よし、尾行するぞ」


「了解やで」


 俺とケムシンは追跡を開始したのだった。




 夜中に監視をするにあたって、俺達は以下のスキルをセットしていた。


=======================

・多才な奏者(ランク5)

  音系能力詰め合わせ。

  物理法則から乖離するほど消費魔力上昇。

=======================

・猫の目(ランク1)

  動体視力が上がる。

  暗闇でも目が見える。

=======================


 ケムシンは猫の目による暗視。俺は多才な奏者によるエコーロケーション。さらに音を操る事でこちらの声や足音を消す事が出来る。夜に相手を見張るにはうってつけだ。


 容疑者は道を外れて草むらの中を移動していた。誰かとうっかり出会わないようにだろうか。心なしか物音も立てないようにしているように見える。


 歩くこと数キロ、そいつはあるダンジョンへと入っていった。


 難易度は3。戦闘が始まった。俺達は外からその様子を監視。


 強い。そいつのステータスはランク5だが、それを考慮してもかなりの余裕が見られた。相対するは剣と盾を装備したリザードマン。容疑者を包囲しているが、次々に光線に撃ち抜かれて死んでいく。


 ダンジョンはたった1人にあっさりクリアされた。



「今の所は普通に攻略してるだけって感じやな。ダンジョンも消えとらへん」


「ああ、暇つぶしで来たって言い張られたら困るな。声をかけるのは決定的な証拠を押さえてからだ」


「了解や」


「おい見ろ、ガチャを引くぞ」


 祭壇に手をかざす容疑者。おなじみのステータスガチャだ。光の玉が出てきて胸へと吸い込まれていく、というのがいつもの光景なのだが……


『異常な魔力を検知しました』


 マオの報告。俺達も目視で確認した。祭壇の周りをバリアが覆っている。その周囲に電撃がまとわりついていた。


 闇夜の中をスパークが走る。その放電はみるみる威力を増していた。


『未知のスキル……? いえ、システムの術式と異なります。魔力を使用したシステム外の技能と推定』


 放電の音に混じって、パリーンという音が聞こえた。バリアが粉々に砕けたのである。


 電撃が祭壇を襲う。祭壇はバラバラに砕け、その破片が周囲に散らばった。


「ミョンチー! ダンジョンが、マップからダンジョンが消えたで!」


『こちらでもダンジョンの反応の消失を確認』


 俺もマップを見てみた。本当に消えている。どう見ても意図的な行為だった。あいつが犯人で間違い無い。



 それは俺にとっては意外な人物だった。普段の言動を見るに、そんな悪い奴には見えなかった。


「お前がダンジョンを消してたんだな」


 声をかける俺達。犯人が素早く振り向く。見られていたとは思ってなかったのだろう。その顔には驚きの色が浮かんでいた。


「……ミョンチー先輩? どうしてここに……」


「悪いな、つけさせてもらった。見せてもらったよ。お前がダンジョンを壊す所を」


「…………」


 黙り込む犯人。誤魔化しは無意味だと悟ったのだろう。


 俺はそいつの名前を呼んだ。



「お前が犯人だったなんてな。ヨイス」



 俺が前に面倒を見た新人の1人である。中二病少女のジーナとパーティーを組んでいたおとなしめの少年だ。


 この世界に来たばかりのジーナはスキルガチャで爆死しダンジョンの攻略に手間取っていた。そんな彼女を気遣い奔走していたのがヨイスだ。


 いたって普通の良い奴、というのが俺の印象だったのに。


「……参ったなあ。バレるにしてももう少し後の方が良かったんですけど」


 頭をかくヨイス。面倒くささ半分、余裕半分といった様子だった。


「ええ、そうですよ。ダンジョンを壊してたのは僕です。時間を見つけてコツコツとやってました」


 悪びれる様子は無しかよ。


「ジーナは知ってるのか? この事を」


「いいえ? 今頃お気に入りの場所で星でも見上げてると思います。僕は他の転生者と話してるとでも思ってるでしょうね」


 そう言えば前に聞いた気がするな。2人は夜は別行動してるって。そうやって周りの目から逃れながらダンジョンを破壊して回ってたのか。



「それで、先輩達は僕の事をどうするつもりですか? 僕の事を糾弾でもしますか? それともギルドに報告しますか?」


「ずいぶんと余裕なんだな」


「はい。だって言われてないですから。ダンジョンを破壊するなって。僕はあくまで破壊という方法で攻略していただけです」


 なるほど、そう来たか。確かに禁止されてない。


 だが惑わされはしない。言い逃れようとする相手にはつい追及したくなるものだが、俺は今日、ヨイスを捕まえるためにここに来た訳では無い。



 確かにダンジョンが消えて、モンスターが外に出るという問題は起こっている。住民からすれば不安の日々だろう。


 確かにダンジョンが消えてクソ神父は困り果てている。普通に考えて、ダンジョンを消しまくったら転生という仕組みは崩壊するだろう。


 被害が出ている以上、ダンジョンを破壊するのは良く無い事である。当然の結論だ。



 だが俺の目的は別にあった。


「なあ、ヨイス。何か勘違いしてないか?」


「何をでしょうか?」


「俺は別に、お前を止めに来たわけじゃ無いんだ」



 俺の目的は、ずっと同じだ。マオをダンジョンから解放する事。


「お前のその力があれば、俺の願いが叶うかもしれないんだ。教えてくれないか? その力について」


 俺はダンジョン消失の片棒へと手を伸ばしたのだった。


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