第106話 幕間:ギルド飛躍秘話 前編
箸休め回、全3話です。コメディ要素多めかも。
時はギルド設立の数日後。
佐藤はじめのダンジョンで無事デモンストレーションを成功させて、メンバーを順調に増やしていた頃の事である。
「うぉおい! ギルドの元締めってのはどいつだ!」
新規加入者の受付をしていたら、集会所にガラの悪い奴らがやって来た。総勢十数名。全員男である。
「うわ、ネオの奴らだ」
「こりゃ一波乱あるぞ」
居合わせた転生者達の小声が聞こえた。察するに、ギルドに何か文句があるらしい。
「俺だ。ギルドに何か用か」
即座に前に出るホスディア。闖入者たちの視線が集まる。
「ずいぶんと勝手な事をしているようじゃねーか。俺達に何の断りも無くよぉ!」
相対するように1人が前に出た。やせ型で、逆立った髪の毛がツンツンしている男だ。ホスディアにガンを飛ばしている。どうやらこいつがリーダーらしい。
にしても、まるでヤクザ映画みたいな文句のつけ方だな。ショバ代でも要求するつもりか? 転生者に金を持ってる奴なんて居ないだろうが。
「テメエ名前は?」
「名前を尋ねるならまず自分から名乗ったらどうだ」
「質問してんのはこっちだろうがオラ!」
「そうだな。お前が名乗る必要は無い。お前の名前はタッセル。ネオ元祖転生前夜のリーダーだ。違うか?」
「お、おう。良く知ってんじゃねーか。……え、なんで名前聞いてきたんだよ、じゃあ」
「俺の名前はホスディアだ。直接話すのは初めてだが前に同じ場に居合わせた事があるだろう。覚えてないのか?」
「え、無視? え? ……いや、お前らみてえな弱小チームなんか一々覚えてねえよ!」
「ギルドのメンバーは今朝の時点で49名。これは転生者の過半数だ。お前達に変わって俺達が最大派閥だな。これからよろしく頼む」
「アイドルグループより多いからって調子に乗るんじゃねえ!」
なんだこの会話。
剣呑なのかコントなのかもうこれ分かんねえな。いや、多分剣呑なんだけど。
「末端の奴らが何人居ようとどうでも良いんだよ! お前らの中核メンバーがたった5人なのは調べが付いてるんだ。俺らを差し置いて勝手な真似するのは認めねえ!」
おっと、俺の当事者レベルが急上昇したな。シリルさんとバーバラさんも気付けばホスディアの後ろに控えている。俺も行くか。
ちょんちょん、ケムシンをつついて合図。ホスディアの後ろを指さしたら意図が伝わったらしく、俺達はそろそろと移動した。
「なぜお前たちの許可が要る」
「転生者を取りまとめるのは最大手であるうちの役割なんだよ。他の奴らが好き勝手したら統率が取れねえだろが」
「妙な事を言うな。その役割を担っていたのは転生前夜だろう。お前達では無い」
「転生前夜は分裂して今はうちが担ってるんだよ」
「分裂した後、本家転生前夜と名乗る奴らもそう言っていたな。こちらが正統な後継者だと」
「あいつらはもう解散したからこっちが後継者だ!」
「その割にはここしばらくは転生者でまとまって行動してなかったようだが? 実体のない権限を振りかざすな。それとその理屈だと後継は元祖転生前夜であってネオ元祖転生前夜では無いだろう」
「そのパーティーももう解散した!」
「最後まで残ったからと言って正当性が保証される訳では無かろう。貴様らが勝手に主張しているだけだ。それにそこまで来たらもはや転生前夜とは別物ではないか。なら統率を取るのが我々でも別に良いだろう」
「良くねえ! 俺達が許さねえ!」
「なぜお前達の許可が要る」
堂々巡りだな。これ一生終わらないぞ。
同じ事を思ったのか、タッセルとやらはホスディアにこんな事を言い出したのだった。
「俺達と勝負しろ! 5対5のタイマンバトルだ! 俺達が勝ったらギルドは俺達が率いる!」
こうして、ネオ元祖転生前夜 VS 俺達という負けられない戦いが突如として幕を開けたのだった。
「ルールは簡単よ。両チームから1人ずつメンバーを出して一騎打ちしてもらうわ。先に死んだ方が負けよ。これを5回繰り返して、先に3勝した方がギルドの運営権を得る事が出来るわ」
審判にはギルドにもネオ元祖転生前夜にも所属していない人物が選ばれた。名前はメイラさん。女性だけで構成されるボス攻略パーティー、火葬研のリーダーだ。
「誰がどの順番で出るかはあらかじめ私に申告してもらうわ。相手を見てメンバーを入れ替えるのは無しよ。異論はあるかしら?」
「ねえぜ」
「こちらも問題無い」
そうして決まった対戦票がこちら。
・先鋒:シリル 対 ハッカス
・次鋒:ケムシン 対 ネーム
・中堅:ミョンチー 対 ジュラジュレ
・副将:バーバラ 対 ニル
・大将:ホスディア 対 タッセル
教会で対人戦用のスキルをセットし、町の外の空き地に移動。俺達は野次馬に囲まれて戦いに臨んだ。
「じゃあ1回戦を始めるわ。シリルとハッカス、前へ」
審判のメイラさんに促され向かい合う両者。
対戦相手は猫背の男だった。スキルやステータスがあるこの世界では、見た目では強さの程は伺い知れない。
「準備は良いわね? それじゃあ、デュエル開始!」
負ければギルドは乗っ取られる。負けられない戦い、その初戦が今、始まった。
次回、3連勝。デュエルスタンバイ!




