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TS斧使い、ダンジョンで脳筋に仕上がる  作者: 源平氏
第三章 これは俺が転生するまでの物語
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第102話 それでも俺は


 転生したら記憶も人格もリセットされる。


 クソ神父から語られた転生の真相は、転生者達に大きすぎる衝撃を与えた。


 嘆く奴、怒り狂う奴、意気消沈する奴。反応は様々だったが、心穏やかでない事だけは共通していた。俺だってその1人だ。


 期待を裏切られた。一言で説明するならそんな所か。


 転生したら料理人になるという俺の夢。新しい自分のイメージがようやく固まった後だからこそ、この事実は俺の心を大きく揺さぶった。



 クソ神父の説明を受け、教会に集まった転生者達からは不満の声が続出した。


「そんなの、死ぬのと同じじゃんかよ」

「今までの苦労は何だったんだよ……」

「ふざけるな! 俺を日本に返せ!」


 怨嗟の声が止まらない。気持ちを抑えられない奴が続出するのも当然だろう。何人かは教会の備品に八つ当たりしようとして神罰を食らった。



「お前ら落ち着け。まだ質疑が残っている」


 そう言ってホスディアが前に出てきた。


「クソ神父よ、話は分かった。だがそれでは救いが無さすぎる。来世に希望を持てるような話は無いのか?」


「2つだけ、来世をより良くする方法がありますぞ」


 クソ神父はそう答えた。


「これはこの世界だけで無く全ての世界に適用されるルールなのですが、『徳』という仕組みがありますじゃ。善行を積む事でポイントが与えられ、ポイントに応じて来世で良い人生を送りやすくなるというものですぞ。クエストの達成やダンジョンへの挑戦でも徳は積む事が出来まする」


「なぜダンジョンで徳が積める?」


「ダンジョンは聖域の一種ですゆえ。挑めば聖地巡礼したという扱いになりますじゃ」


「ではどれくらい徳を積んだら良い。目安はあるか? 効果はどれくらいだ」


「基本的にわずかにしか効果は得られませぬ。若干、良い人生を送れる確率がほんの少し上がる程度ですぞ」


「基本的に? 例外があるのか」


「徳ポイントが膨大ですと、確定で特典が付きますじゃ」



 そこからクソ神父が語った特典は以下の通りだった。


・ 1万ポイント:安全な場所で生まれる

・1千万ポイント:良き親の元で生まれる

・100億ポイント:優れた才能を得る

・ 10兆ポイント:支配階級で生まれる

・ 1京ポイント:望みを1つ叶えられて転生


「ですがこれは本当に例外中の例外ですじゃ。ホスディア殿の徳は現在2ポイントですぞ。単純計算ですと今のペースで徳を積んでも、安全な場所に確定で生まれるには1000年、望みを1つ叶えられての転生には1000兆年かかりますぞ。


 あまりに偉大な功績を残した者のための仕組みですゆえ、あなた方には関係の無い話と思って頂いて差し支え無いですじゃ」


「その特典を貰えないと、例えば安全な場所に生まれる事は出来ないという事か?」


「いえ、あくまでそれが保証されるというだけですじゃ。その特典を貰えなかった場合は、安全な場所に生まれるかどうかは分からないという意味ですぞ」


「望みを叶えられてというのは、神によってか?」


「そうですぞ」


 1000兆年かあ。もう想像もつかない長さだ。目指せるようなものじゃ無いな。



「2つ方法があると言ったな。もう1つは何だ」


「それはですな――」


 2つ目については後で語ろう。俺には関係の無い話だった。








 説明会が終わり、転生者達はゾロゾロと教会から出て行った。誰も彼も、その足取りは重そうだった。


 俺もケムシンと一緒に教会を後にした。どちらから提案するでも無くそのまま町をぶらつき、最終的には町を出て丘の上から町を眺めていた。


 体育座りのまま物思いにふける俺達。


 俺達には2つの選択肢があった。今まで通り転生を目指すか、転生を諦めてこの世界で暮らし続けるか。


 転生したら今の記憶と人格が無くなる。俺という存在が無くなるも同然だ。それはつまり、死ぬというのと何ら変わりが無い。


 転生を目指すというのは、死を目指すと言っても過言じゃ無いのだ。


『ミョンチー様、私はあなたの選択を尊重いたします。転生を目指すか否か、どちらを選ばれても私はミョンチー様の味方であり続けます』


 ありがとな、マオ。気を使ってくれて。でも大丈夫だ。確かに落ち込んではいるけど、絶望してるという程じゃ無い。


 俺には料理人になるという夢がある。俺の出したケーキでマオが喜んでくれた事で、どういう形で人の役に立ちたいかというイメージが具体的になったのだ。


 そしてそのイメージは、今でも変わってはいない。俺の夢は今も同じだ。


 だからこそ、


「ケムシン、それでも俺は、転生を目指すよ」


 俺は自分の進む道をはっきりと言葉にした。



 横に居るケムシンの顔を見た。町を見ているケムシンの横顔は、憂いを帯びていた。



 一度は転生を諦めて、それでも俺と一緒に来てくれたケムシン。


 畑仕事をしながらのんびり暮らす事が夢だったケムシン。


 この前クエストで畑仕事に行って、満足げに帰ってきたケムシン。


 俺にとって一番長い付き合いのケムシン。



 だからこそ、俺はケムシンが言う事も予想が出来ていた。



「なあ、この世界じゃダメなんか?」


 ケムシンはきっと、この世界に残る事を選ぶ。


「ミョンチーの考えも分からなくは無いで。でも俺は、認められへん」


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