第101話 語られた真相
「さて、まずはあなた方がこの世界に来た時に伝えた事の再確認から致しますぞ」
クソ神父はそう口火を切った。
「この世界はあなた方が死んでから転生するまでの中間の世界ですぞ。1人1人に用意されたボスを倒せば転生する事が出来ますじゃ。
ご存じの通り、ボスにはあなた方が神に望んだチートが搭載されておりますぞ。いわば自身の欲望に打ち勝つという試練ですな」
そうだったな。自殺したら白い空間で神に声をかけられたんだった。異世界転生させてやるから欲しいチートを言えって言われたんだっけ。
俺はまんまと騙されて、雷撃チートを要求してこの世界に来た訳だ。
「まず一番根本的な部分の話をしますぞ。ボスを倒せば転生出来るというのは本当ですじゃ。転生先の世界は魔法が存在する代わりに科学が未発達な世界ですぞ。
あなた方の世界では剣と魔法のファンタジーと呼ばれているらしいですな」
誰かの安堵の声が聞こえてきた。転生の話自体は本当。その大前提がひっくり返らなかったのは俺としても嬉しいニュースだ。
「後はこれも最初に説明しましたな。今の名前と姿は転生後のものと同じですじゃ。人によっては生活次第で今より太ったり痩せたりする可能性はありますぞ」
そうか、俺は来世でミョンチーという名前のままなのか。それにTSで確定なんだな。もう名前も体も違和感無くなってたから別に良いけども。可愛くなってお得だし。
「さて、これから細かい部分の説明に入りますぞ。まずはそうですな、生まれる環境について話しますぞ。
あなた方は赤子として母親から生れ落ちる事となりますぞ。種族は見た目の通り人間ですじゃ」
赤ん坊スタートかあ。ちょっと精神的にきついな。親になる人に申し訳無い。
「そして両親ですが、選ぶ事は出来ませぬ。愛情をもって接してくれるかどうか、経済的に豊かかどうか、どんな職業か等々、全て生まれてみるまで分かりませんぞ。
同じように、生まれる国や地域、時代なども選ぶ事は出来ませぬ」
そうか……。子供は親を選べないのは言われてみれば当然だが、心のどこかで都合良くいけば良いなと思っていた自分が居た気がする。
他の転生者からも不満の声が漏れ出ているのが聞こえた。
「さて、次にこの世界から持ち越せるものですが……、残念ながら無いですぞ。
あなた方が集めたステータスやスキルはこの世界特有のものですゆえ持っては行けませぬ。チートも当然、授かる事は出来ませぬ」
意外な事に、何気にこれが今までで一番気分が落ち込んだ。苦労して集めた能力だもんな。愛着もある。今や大斧は俺のトレードマークと言っても過言では無い。
聞こえてくる不満の声が大きくなった。都合の悪い真実を知って我慢出来なくなった奴が居るのだろう。
それでも、俺達が知っておかなければならない事だった。
それに一番重要な部分がまだ語られていない。俺達にとって、自分という存在の一番根底になるものの話だ。
生まれ変わったらという話はこれまでもよくした。でも誰も口にしようとはしなかった。それを疑い始めたら、今まで通り仲間と気軽に話す事すら出来なくなる気がした。
多分もうすぐ語られるのだろう。なぜならクソ神父が今説明しているのは、来世に持ち越せるものについてだからだ。
「最後にですが、落ち着いて聞いて欲しいですじゃ。どうか、冷静に受け止める事をお願いしますぞ」
そう前置きするクソ神父。それだけで、俺はクソ神父が今から言う事を察した。
そうか。駄目なのか。
「今のあなた方の記憶と人格は、転生と同時にリセットされまする。純粋に新たな命として生れ落ちる事になるのですじゃ」
説明会は、先ほどまでと比較にならないほど荒れに荒れた。暴動を起こそうとして神罰を食らう奴が出るくらいに。
そうなると分かっていたから、クソ神父は今まで言わなかったのだろう。だが俺達はもう知ってしまった。聞かなかった事にはもう出来ない。自らの意志でそうなったのだ。
今日を境に転生を諦める奴が続出し、ギルドは活動停止の危機に陥る事になる。
マオ救出の手掛かりは、まだ見つかっていない。




