質問
初めて見たあの時の見た目に甘い香り
あの日のまた来ると告げられたのは夢ではなかった
以前と同じように対面で座り向き合っている
あの時と違うのは宗馬に僅かながら余裕があったことだろう
改めてよく観察すると肩まではいかない後ろ髪に揃えられた前髪、絹のような滑らかであろう綺麗な黒髪
真正面から見る顔は全てが端正に整い美人であることを再確認できる
しかし眼が気になった
前は吸い込まれそうな瞳の引力に負けたが何かが引っ掛かる
(見た事ある…?)
どこかで見たような気がする眼と眼の形
わからないまま疑問を投げかける
「黒一さんは」
「黒一で結構でございます」
「あーその黒一は恩があると言うけどいつの話かな?」
「もう数十年の事でございます」
数十年…?言い方がアバウトすぎて絞れない
宗馬の歳は四十代に入ったばかりなので言い方を考えると二、三十年前かもしれない
記憶を辿っていると黒一は立ち上がりまた横に座り出した
「お気になさらず、今宵も癒して差し上げます」
甘い香りが強くなる
前回と同じだ
身体の力が抜けて思考が止まる
不思議と恐怖は無い、むしろ安心感幸福感に満たされていく
宗馬はまた深い眠りに落ちていくのを感じていた
(宗馬様、僅かな時の癒しをお受け取り下さいませ)
沈む意識に聞こえる声が今日最後に聞いた言葉となった




