穏やかに好きなモノ
「気を付けてな」
「悟さんと紫音さんによろしくね、また帰って来なさいよ」
「ああ、二人も身体に気を付けて、もう歳だし」
実家から帰宅の日、両親に見送られ新幹線に乗り込んだ
しばしの新幹線タイム、早く流れる景色を見ながら年末の事を思い出していた
謎、まではいかなくとも気になる事はあった
しかし、神職が言った「些細な事」で大体は片付いてしまう
これまで蓋をして自ら求めず背負うだけ背負い込んでパンクしていたのに、それすら蓋をして生きようとしていた自分に怖さすら感じる
持てるものに限りはあるのだ
過去胸が張り裂けそうな悲しみに遭っても生きる者は生きなきゃいけない
受け止めて前を向く、些細な事だと割り切るのも良い
人は何がきっかけで気付くかわからない
宗馬自身四十代になって気付かされた事だ
やり直しは効く、だから前を向くだけだと考えた
今回神社の神木の下だが墓参りと認識してお参りが出来た、子供時代のトラウマに一区切りした帰省であった
次の満月に墓参りしたはずの相手が来る…は変な話だなと宗馬は一人笑ってしまった
正月休み最終日、宗馬は紫音の下へと向かっていた
店は休みだが互いに動き出す前に帰省のお土産を渡そうとなったのだ
空いてる店は少ないが定休日無しのチェーン喫茶店がある、こういう所は都会が便利だなと宗馬は実家の地域と比べていた
「明けましておめでとうございます、宗馬さん!」
「紫音さん、明けましておめでとうございます」
約一ヶ月ぶりの再会だが変わりないようだ
「そうそう忘れない内にこれを」
「ありがとうございます!わ!こんなにすだちが」
「時期的には少し旬を外れた保管物ですが十分味と香りは保証しますよ」
「ありがとうございます!これだけあるなら店で使ってみようかしら」
「フレンチですだち使うんですか?」
「フレンチと言ってもウチは正統派じゃなく創作も混じりますからね、父が新しい物を試行錯誤するのが好きなんです」
「紫音さんは本当に悟さんを好きなんですね」
「恥ずかしいけど…はい!男手一つで育ててくれましたから」
(そうか、紫音さんも幼い時別れを経験してるんだもんな…)
自分と比べたらやはり強い人だ
宗馬は尊敬の眼差しで紫音を見つめた
「お母様達はお元気でしたか?」
「ええ、ゆったり変わらず元気なままで安心しましたよ」
「またこちらに来ることあれば是非お会いしたいですね」
「実家帰った時も父への自慢話として母が盛り上がってましたよ」
「それは、ふふっ自慢話になれる店としてありがたいですわ」
「僕は今まで流行りやお店選びとかを避けていた人生でしたから、親とあんな話出来たのは嬉しかったです、ありがたい事です」
宗馬の本音だった
今考えれば気持ちに区切りが付くまで記憶も興味も蓋をしていたような生活だったが、楽しい団欒を味わえたのだから
「宗馬さん帰省でなかありました?なんかパッと明るいと言うか踏ん切りが付いたような」
「ふふ、そうですね、そうかもしれません」
「どうしたんですかー楽しそうになって!」
こんなのも良いなと宗馬は思う
とても心が落ち着いていた




