今日と言う日、いつかのあの日
「お口に合いましたでしょうか?」
「ええ!とても洗練されたお料理嬉しゅうございました、ありがとうございますご馳走様です」
「ははは、良かった良かった!重ね重ねになりますが今こうやって腕を使い喜んで頂ける事が恩返しになれば幸いです!」
母と悟さんの会話に出た恩返しと言う言葉に反応する
黒一からの恩返しも元になるものがあり、まだわからない
「宗馬さん、今度私とお酒飲みに行きません?」
「良いですね、是非」
「ではまたスケジュール連絡しますね!」
そんなやり取りをいつの間にか聞いていた親達は微笑みながら聞いていた
店を出て母は言った
「良いお店だったわね〜帰ったらもう食べれないのが残念だわ」
「…また来たら良いさ、父さん連れて」
「ふふ、そうね、先にあんたが年末年始実家に帰るのが先だけどね」
「ああ…」
歳を重ねて両親との付き合い方も変わったが、まあ歳相応に取ってる事なんだろう
母親と二人ゆっくり語りながら自宅へと帰って行った
「それじゃあ元気でね」
駅で母親を見送っていく、歳の割に若々しい方だと思うがやっぱり子供の頃から考えれば歳取ったなと思ってしまう
それは向こうもなんだろうが…
帰る母親を見届けて自宅へ帰る際にスマホが震えた
「お母様と来てくださってありがとうございました!」
紫音さんからのメッセージだった
(良い人か…縁も掴みに行かなきゃ繋がらないよな)
母からの遠回しにお付き合いしないの?と言った願望は感じるが…
とりあえず今度飲みに行きましょうと返して夕暮れの空を見ながら家路を歩く
もうすぐ十二月がやって来る
母親が訪ねて来て紫音親子の店に行き数日経っていた
時期的にクリスマスの雰囲気が街に漂っている
そんな中、宗馬は夢を見ていた
意図的に見ると言えば変な話だが、不思議な少女、黒一から貰った追憶の飴を使い三度目の記憶遡りをしていた
次に黒一に会うまでに知っておきたい事がどうしてもあったのだ
意識が浮いたような感覚、俯瞰で見るあの日の幼い自分と抱き抱えられている黒猫
いつの頃だろう、宗馬の背丈的に小学校に入ったぐらいだろか
小雨降る日にどこかで見つけた震える子猫を段ボールの箱にタオルを入れ神社の片隅にある人目の付かない木々の下へ置いている
助けられた事をわかるのだろうか、子猫は小さな宗馬に寄り添い甘えている
宗馬もまた愛で返す
思えば本格的に動物と触れ合ったのはこの時が初めてだった気がする
家で飼う事は出来ないからこっそり寝床を作り隠すようにするのは小さな子供ならではの発想なのだろう
夢のシーンは幾度か切り替わるがこの頃はずっと一緒に遊んでいたようだ
ただ、この経験を忘れるというのは信じ難い
宗馬は全く覚えてなく、夢を見て少しずつ思い出してはみるが繋がらない
まるで何かが邪魔するような、そんな印象があった
とある頃を映し出された、いつものように猫の所へ行き宗馬は慌てた
見えたものは…子猫の…
宗馬はここで目が覚めた、嫌な汗が出ている
夢の続きを何かが見せまいと変なとこで切られたような
ただ、あの時の感情は蘇っている
何を見た?何があった?宗馬は自問自答した
何かを思い出せそうではある、しかし思い出すにはまだ足りない
少しずつ迫ってきてるのは間違いないと確信して身支度を始めた




