お誘い
(なんでいきなりあんな夢見たんだろうな)
身支度をしながら宗馬は今と昔を比べていた
それなりに良い役職まで昇り疲れ果てていたあの頃よりは今穏やかに過ごせてる
黒一と出会って得たモノのおかげで今が一番うまくいってるまである
独身のままではあるがそれなりの生活力も備えれた
「結婚か…出会いが無けりゃなんともなぁ…」
両親が望むから結婚を考えるのは違う気がする
自分自身の願望が薄いのか、薄くなってしまったのか
地元の友人達は既に結婚してる者が多く子育てに忙しい、連絡も取らなくなって久しい
(そりゃあ若い時はお付き合いもあったが結婚って言葉にまではならなかったな)
仕事に励み過ぎて縁が切れてしまうパターンだった
自分がもっと周りを見て把握してれば違った未来もあったのだろうが
(そういえば結婚しようとはっきり出たのは子供の遊んでた時しか無いか…)
地元の神社の境内でよく遊んでいた女の子に好かれていたのか子供時代は可愛いものだ
もう名前も顔も思い出せない
あの子はもうお母さんになってるのかな
(…ふ、自分の心配するべきだな)
宗馬は自虐気味に笑い家を出た
九月も終盤になり残暑も和らいではいるが、いつまで経っても都会の暑さは慣れないな
休日、宗馬は喫茶店へと入り窓を眺めながら年々暑さ増す環境を憂いていた
少しの間ボーッとしてた時に入り口がカランと鳴る
以前と同じように今度はあちらが顔を見て小走りに
「ご無沙汰してます桐生さん!」
ぱっと笑顔で挨拶してくれたのは月島さんだった
以前に会った頃から時間も経ちお礼の食事の事で待ち合わせていたのだ
「月島さんこんにちは、あれからお父様はどうですか?」
月島さんはより笑顔を増して報告してくれる
「おかげさまで無事退院もしてリハビリも進みました、今はもう自宅で普通の生活してますし後遺症の心配もなさそうです!」
「それは良かった!」
月島さんとお父様が写る画像を見せてくれながら近況を知らせてくれる
具合悪い顔しか見れて無かったので元気になったお父様の顔と心の底から喜ぶ月島さんの笑顔画像がとても眩しい
「それでですね、以前お話ししましたうちの店へのご招待なんですが来月入ってどの辺りが宜しいでしょうか?」
早速のお誘いに少しだけ良いのかな?となるが気にされるのもよくないだろう、素直に受ける事にした
「そうですね…この辺りなら都合付けれますがいかがでしょう?」
スケジュールを確認して大丈夫そうな日を擦り合わせる
「ふむふむ…ではこの日に致しましょう」
「はい、月島さんもお店お手伝いされてると言ってましたが当日も?」
「いいえ、父から桐生さん連れてくる時は最上級のエスコートするようにと強く言われてますので!」
上品に笑いつつ重要なお客様扱いされる事にむず痒くなる
「ははは、そんな僕なんかに大層な、そういえばお店フレンチだそうですがドレスコードとかありますか?」
「そんなお気になさらず!父の個人店ですから自由にして下されば大丈夫ですよ」
フレンチと聞くと少し身構えてしまうが…まあ大丈夫かな?まあスーツで行けば問題無いだろう
「月島さんのお店はどこにあるんですか?」
「ここから二駅向こうの駅ビルの中になります、そうですね…詳しくは当日のお楽しみに!」
クスリと笑いながら月島さんはお楽しみにを強調してきた
なんだか楽しみになってきた、月島さんの人柄もあるのだろう
「ではこの日に、えっと待ち合わせは駅の方が良いですかね?」
「はい、ありがとうございます!本来なら車でお迎えに参りたいのですが店が駅ビルの都合で駐車場の確保が難しく…」
「いやいや気にしないで下さい!頂き過ぎなくらいにお礼されてますから!」
頭を下げようとする月島さんを慌てて止める
本当に気遣いあって優しい人なんだな
宗馬はそんな事を思いつつ次回に決まったお誘い日を楽しみにしていた




