夢の飴
(人と呼べる者ではございません)
はっきりと黒一は言い宗馬は受け入れていた
黒一が訪れ出して色々な変化があり不思議な体験を重ねている、さすがにそこまで頭が硬いわけでも無く受け入れた方が思考の流れがスムーズになるのだ
お土産だと渡された薄紫の黒一と同じような和装生地に似た巾着袋を眺める
とても品があり少し黒一と同じ香りを感じる
何が入っているのか紐を緩め口を開ければ更に香りが強まった気がした
中に見えたのはコロコロとした物体の集まり
「石…?」
一つ手に取りよく見てみる、半透明に透き通る宝石のような物に見える
他の物もあるがそれぞれ色が違い甘い香りを漂わせてる、ふといくつかにザラザラしたザラメのような物が纏わせられている
「…これは飴なのか」
恐る恐る手に持つ色の付いた宝石のような物を口にしてみる
すぐに上品な甘味が押し寄せてくる
渡されたお土産とは飴のようだ
「これが今回の恩返しなのかもな」
誰に聞かれる事もなく宗馬は呟き飴を口に入れた
どうやらこの飴は普通の物とは違うようで、黒一の癒しに似た感覚がやってくる
黒一の香りと甘さを感じてるがそれ以上に安心感が包んできて睡魔が強くなる
(また、何かしら起こるのかもな……)
宗馬は予感しながら睡魔に誘われて眠りへと落ちていった
夢を見てる
感覚的に宗馬はそう感じていた
俯瞰的に見るような意識はフワついてるが何か映像を見ているような
どうやら自分で自分を見ているらしい
黒一と会う前だろう
とても疲れた自分が見える
既にキャパオーバーの業務量に上乗せされてくる人の退職や休職
様々な人や物にモヤが掛かってるのが見えている
でも当時の自分は自分がなんとかしなければと背負い込んで何も見えていなかった
自身の土台が崩れていくのに目の前しか見えてなくて足下が危険なのに気付かずに…
足を踏み外しそうになった自分を見た瞬間景色が変わる
上京してきた頃だろうか、若い
高層ビル群の圧に飲まれていた
そうだったな、田舎から出て都会の空気に何か馴染めずに仕事する事で誤魔化してたんだな
あわあわとしながら当時必死になっていた
両親の顔も浮かぶ
地元から離れる人はそう多くは無かった
皆農家だったり地域の商店の一つだったりで家を継ぐのが多かったから
また景色が変わってく
学生時代か
進路を決める時はあまりにも悩んだ
子供が多くはない地域だ、数少ない同級生達は実家を継ぐ選択をして自分は一人上京を決めた
レールに乗ったまま埋もれるのが嫌だと反抗心があったのだろう
しかし上京をして結果四十代まで周りに埋もれていたのが笑えてしまう
(結局何も見出せていなかったんだ)
少しずつ覚醒し出した頭の最後に浮かび目を覚ました
はっきりと夢を覚えていて反芻していた
「振り返りの夢なんて残酷な事してくれる」
宗馬は夢で遡った自身のこれまでを窓から差し込む朝日で上書きしようとしていた




