モヤ
社内では盆休みに向けた追い込みが始まり宗馬の部署も忙しさのピークを迎えていた
皆これを乗り切れば長期の休みとなるので必死にもがく
その中で確認漏れから起こりうるミスもある
例年何かしら一つ二つ出てしまうものだが、今年は違った
宗馬の眼に不思議な感覚があったのだ
視える物にモヤがかかるような本能的に忌避感を感じてしまう煙のようなモノが視えるのである
初めは眼精疲労かと疑ったがモヤのかかる書類や機械、人を見れば何かしらのミスや不調を先取り出来たのである
二度三度と問題になる前に解決が続けば理解してくる
(視えるのか…?)
宗馬の頭には黒一が微笑んでいた
会社の長期休み前業務ピークもヤマを抜け目前に迫る休みの予定に思いを馳せながら帰宅する途中だった
(あの人…なんだあのモヤ!?)
前を引きずるような足取りでフラフラ歩いていた六十代くらいの年配の男性
明らかに異常を感じるレベルの不気味なモヤが頭から出ている
この数日に視えたモヤとは種類が違う
少し歩みを早め男性に並ぶよう横に付き顔を見た
その瞬間表情を見て宗馬は声を上げた
「大丈夫ですか!」
男性の顔が強張り明らかに何かおかしい
男性はそのまま崩れ落ちた
数分で救急車が到着し宗馬も同乗して病院へと到着した
しばらくすると医師が説明に来て言った
「同情してくれた方ですね?あの方は脳梗塞を患われていましたが早期に見つけて頂いたおかげで大事には至りませんでした、ありがとうございます」
良かったと宗馬は息を吐く
ご家族とも連絡は取れてこちらに向かっている為、念の為入れ替わりで帰宅して欲しいとの説明を受け病院の椅子に腰掛けている
(あんな物まで視えるのか…)
トラブルを察知できるだけじゃなく人の不調も可視化した
ぼんやりと暗い病院のロビーで自分の身に起きてる事を考えている時だった
「宗馬様」
「黒一…?」




