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【懺悔室のシスターさん】に悩み相談すると決まって聖女な『義姉』が全肯定で甘々に甘やかしてくるけど、俺はその理由をまだ知らない~スクールカースト最底辺からのやり直し~  作者: 水瓶シロン
第五章~筒抜け恋愛相談編~

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第51話 俺とシスターさんのアプローチ共同戦線!

 ここ数日で、俺はシスターさんの助言ももらいながら、何度も陽葵へさりげないアプローチを仕掛けていた。


 例えば――――



「お義姉さんはいつも褒めてくれるんですよね?」

「まぁ、そうですね。ことあるごとに」

「では、今度は逆に子羊くんからお義姉さんを褒めてあげるというのはどうでしょうか?」


 カーテンが掛けられた格子状の壁の向こう側から送られてくるシスターさんの提案。


 確かに俺はいつも陽葵に褒めてもらうばかりで、陽葵の行いに対して感謝こそすれ褒めたことはあまりないかもしれない。


 というのも、何となく褒めるというのは目上の者が下の者にするイメージがあって、家では義姉、学校では先輩である年上の陽葵にそういうことをしようという発想がまずなかった。


「褒める、ですか……」

「そう難しく考えなくてもいいんですよ?」

「というと?」

「ほんの些細なことで構いません。お義姉さんのこういうところ良いな、凄いなと思ったら、きちんと言葉にして伝えてあげるんです」


 なるほど?

 ただそうなると、顔を合わせている間は三分毎に一回は褒めることになってしまいそうだが……まぁ、そこは調整だろう。


 それより、だ。


「でも、シスターさん。それって俺を男子として見てもらうための方法としてはどうなんでしょう。ただ単に人として良いことをしてるだけって言うか……」

「ちっ、ちっ、ちっ」


 おっと、シスターさんがノリノリだ。

 やはりこういう恋バナ――恋愛相談が好きなのだろう。


「当然褒めるだけならそうなってしまいます」

「ほう。つまりコンボ技的な何かがあるんですね?」

「その通りです」


 コホン、と雰囲気で咳払いを挟んだと思われるシスターさんが、ここが重要と言わんばかりに一呼吸間を開けて言ってきた。


「褒めにはご褒美がつきものです……!」



 という名言めいた助言を賜った俺は、早速――――




「ふぅ、疲れたぁ……」


 父さんも茉莉さんも寝静まった夜遅く。

 ガチャッ、と暗いリビングに陽葵がやってくる。


「お疲れ、陽葵」

「えっ、司くん……?」


 最小限の照明だけ点けたキッチンに立っていた俺に気が付いた陽葵が、目を丸くしながら近付いてくる。


「まだ起きてたの?」


 両親を起こさないように半分囁くよな静かな声で聞いてくるので、俺も声を抑え気味にしながら答える。


「ああ、ちょっと勉強してて。それに陽葵も何か作業してる風だったから、自分の飲み物用意するついでにと思って……」


 俺はそう説明してから、湯気の立ち昇るココアをマグカップに注いで妃菜に「はい」と手渡す。


「あ、ありがと……」


 妃菜はしばらく両手に包むようにして持ったマグカップへ視線を落としてから、ふっと柔らかく微笑んだ。


「えっと、改まってこういうこと言うと何か凄く恥ずいけど……いつも勉強とか生徒会の用事とかで遅くまで頑張ってて、陽葵は凄いと思う……」

「司くん……」


 ここでシスターさんの助言が脳裏に過る――『褒めにはご褒美がつきものです』と。


 果たしてこんなものがご褒美と呼べるのかどうかはわからないが、いつも陽葵がやってくれていることを俺も返す。


 一緒に出掛けて一日お兄ちゃんをしたときもやったので、少なくとも嫌がられるということはないはず……!


「本当に、偉いです……」


 ポン、と。

 陽葵の頭に手の乗せて、優しく撫でる。


 陽葵は一瞬驚いたように顔を上げたが、拒絶する素振りはなく、気恥ずかしそうに目を細めていた。


「えへへ……」


 うおぉおおお!?

 人を褒めるのって結構恥ずかしいぞ!?

 これをいっつも平然とやれる陽葵凄いな!


 ただ、人褒め初心者の俺にはこれ以上は難しいので、今日はこの辺で退散させていただきます。


「じゃ、じゃあ、俺部屋戻るから――」

「――あっ、待って……?」


 陽葵の頭から手を離し、自分の分のマグカップを持ってキッチンから去ろうとしたところで、陽葵が背中に声を掛けて引き止めてくる。


 振り返ると、遠慮がちに上目を向けてきている陽葵の姿がった。


「その……良かったら一緒に休憩しない……?」


 まさかのお誘いにドキッとしてしまい、その分手に持っていたマグカップの中のココアの水面が波立つ。


「どう、かな……?」

「えと……喜んで……」

「ふふっ」


 その後、俺と陽葵は暗いリビングのソファーに並んで座って、ココアを冷めないうちに飲み切るまでの最大限の時間、静かに過ごした。




 ――と、そんな調子で他の日も…………


「子羊くん、さりげなく手を繋ぎましょう」

「子羊くん子羊くん、次は肩を抱くとか」

「あっ、共通の趣味を作りませんか?」

「あとはあとは――」


 シスターさんはそれはもう日を重ねる度にノリノリでアドバイスしてくれて、俺もそれを参考に陽葵へのアプローチを続けた。


 そんな日々が過ぎていくうちに、気付けばもう十二月の中旬も終わり、目と鼻の先に冬休みが待ち構えていた。


 当然それくらいの時期になると、世間はあの話題で盛り上がる。


 そう。

 クリスマスである。


 既に恋人がいる人達にとっては一つの記念となる大きなイベントだし、まだ相手がいない人でもクリスマスに向けて恋人募集中の看板を建て始めるものだ――もちろん精神的に。


 学校でもチラホラとクリスマスを前にして色恋の話題が耳に入ってくる。


 だからこそ、俺は思った――――


「乗るしかないでしょ、このビックウェーブに」

「どうしたんですか、急に?」


 今日も今日とて懺悔室で恋愛相談。

 果たしてここは本当に教会の懺悔室なのだろうか……という疑問は今更である。


「いや、クリスマスですよクリスマス」

「そうですね、もうそんな時期になりますね……」


 忘れがちだがここは教会。

 やはりクリスマスは一年で最も重要な行事なのだろう。


 感慨深そうに呟くシスターさんに、俺は壁越しに熱意を伝える。


「一年で一番熱い日です、愛が」

「雪が解けてしまいそうな勢いですね」


 俺が『愛』とか口にしたのが可笑しかったようで、シスターさんがくつくつと静かに笑いを溢しているのが聞こえてくる。


 俺も自分で言ってて恥ずかしくなってきた。

 しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。


「今まで焦れったくさりげなくゆっくりとアプローチを続けてきた俺ですが、ちょっとこの波に乗って大きく一歩踏み出そうと思うんです」

「こ、子羊くん……?」


 俺はここで覚悟を決めるように、ふぅ……と細く長く息を吐いて心を落ち着かせてから、静かに宣言した。


「俺、義姉の聖夜の予定をもらいます……!」

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