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【懺悔室のシスターさん】に悩み相談すると決まって聖女な『義姉』が全肯定で甘々に甘やかしてくるけど、俺はその理由をまだ知らない~スクールカースト最底辺からのやり直し~  作者: 水瓶シロン
第五章~筒抜け恋愛相談編~

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第49話 一体どれだけくっつけば寂しくないんですかね?

 生徒会の用事を手伝ったことでいつもより帰路に就くのが少し遅くはなったが、些細なことだ。


 まぁ、正直言えば、放課後は教会に立ち寄って、懺悔室の中でシスターさんに陽葵への恋愛相談に乗ってもらいたかったところではあるにはあったが…………


 しかし、これは自分の問題。

 自分の恋路だ。

 あまりシスターさんに頼りきりになるのは良くないだろう。


 それに――――


「聖先輩、ここ立ちやすいですよ」

「あ、うん。ありがとう……」


 ガタンゴトン、ガタンゴトン。


 生徒会の用事でたまたま下校するタイミングと方向が重なったという大義名分が出来たことにより、堂々と一緒に電車に揺られることが叶った。


 シスターさん、ごめんなさい。

 俺が会いに行かなくて寂しいでしょうが、俺は今幸せです。


 心の中で謝罪と感謝をシスターさんに送っていると、ドアと座席が生み出す直角のエリアでやや窮屈そうにして立つ陽葵が、不可抗力的なごく近い距離から上目を向けてきた。


「もう敬語じゃなくて良いんじゃない?」

「いや、念には念をということで、家に帰るまではこのままでいきましょう」


 右へ左へと目を向けてみても、近くに同じ英誠院学園の制服は見当たらず、フォーマルな格好をした大人の背中や肩しか見えない。


 しかし、もしかするとその陰に隠れているだけで実は生徒がいるなんてこともあり得なくはないので、臆病――ではなく慎重派な俺は、申し訳なく思いつつも陽葵の提案を断ることにする。


「そ、そっかぁ……」


 陽葵が妙に哀愁を感じさせる微笑みを浮かべて、前から後ろへ流れていく景色に横目を向けた。


「仕方ないってわかってるんだけど、なんだか距離が出来ちゃったような感じがして寂しいなぁ……なんて……」

「……っ!?」

「ふふっ、おかしいね。ただ話し方を変えてるだけなのにね」


 ガタンゴトン、ガタンゴトン――駅を離れて電車が加速しているのだろう。


 レールの接合部分を車輪が駆ける音と音の間隔が早くなり、同時に俺の心臓の鼓動と鼓動の間隔も短くなる。


 俺と距離が出来てしまうことに寂しいと感じてくれる陽葵を、どうしようもなく愛おしく思ってしまう。


 この人が好きだ――と、そんなわかりきったことを改めて実感させられた。


 だから、つい偶然を装ってしまった。

 偶然のせいにして、自分の行動に許しを求めてしまった。


 いつも乗っている路線。

 何度も見た外の景色。

 そろそろ線路がカーブに差し掛かって、車体が大きく揺れることも知っている。


 いつもなら揺れに備えてつり革なり手すりなりを強く握り込んで踏ん張る姿勢を取る。


 しかし、俺はいつも行っているその準備をつい忘れてしまった。


 つい、忘れたフリをしてしまった。


 ガタッ――!!


「ひゃっ、司くん……!?」


 突然のことに妃菜が驚く。

 ついさっき家に帰るまでは話し方に気を付けようと言ったばかりなのに、思わず俺を下の名前で呼んでしまったのだから、心の底からビックリしたのだろう。


 その丸く大きく見開かれた琥珀色の瞳に、俺の顔がくっきり反射して映っているのを見て取れるくらい、身体と身体、顔と顔とが接近したのだから無理もない。


 流石にぶつかってしまっては危ないので、陽葵の顔の隣に腕をついて衝突は防いだが、今にして思えばこれはこれで壁ドンと言って差し支えないシチュエーションになってしまっているのかもしれない。


「……そうですね、おかしいですよ。聖先輩」


 俺は静かな声で言う。

 これだけ密着しているのだから、大きな声を出す必要もない。


「えっ……?」

「これだけくっついてるのに、距離が出来て寂しいとか言われても困ります」

「~~っ!?」


 もちろん、陽葵は心の距離を指して言ったのだろう。

 しかし、身体同士の物理的な距離というのもまた、心の距離が如実に反映されるものではないだろうか。


 いくら混んだ電車内とはいえ、心の距離が遠い人間と密着して立てば、居心地が悪いどころか下手すれば気持ち悪いとさえ思うだろう。


 互いにそうなっていないということは、たかが話し方や呼び方が少し変わった程度では何も影響しないほどには、きちんと心の距離を縮められている証拠に他ならない。


 というか、そう信じたい……!

 そうでなければ、本当に義姉弟の関係を超えて恋人になるだなんて、夢のまた夢だ。


 だからこそ、これからはきちんと陽葵に俺のことを一人の男子として見てもらえるように頑張らなければならない。


 そう改めて気合を入れ直したところで、俺は揺れの収まった電車の中で体勢を戻そうと、陽葵と拳一個分程度の空間を作ろうとして――――


 ……キュッ、と。

 陽葵が俺の制服のブレザーの端を摘まんでいて、離れられなかった。


 不思議に思って顔を覗くと、陽葵は頬に朱を差しながらも、どこか不満そうな視線を向けてきていた。


「でも、他の子ともくっついてた……」

「は、はい……?」

「梓沙ちゃんとは、もっとくっついてたもん」


 もん、って言われてもなぁ。


「い、いや、あれは天羽が俺を持ち上げるために仕方なく……」


 俺の弁明が言い訳がましく聞こえたのだろうか。

 陽葵が半目でじーっと睨んできた。


「ふぅーん? 仕方なかったら、誰とでもくっつくんだー」

「誰とでもはくっつかないですけど……」

「梓沙ちゃんは良いんだ?」

「えっとぉ……」

「梓沙ちゃんが良いんだぁ」

「言い方に悪意を感じる……!?」


 つーん、と。

 電車を降りて家に着くまで、陽葵は機嫌を直してはくれなかった…………

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