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種族チート持ちなのに無双できないヒロインは、静かに居場所をつくる  作者: 東雲 小百合
第一章

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24. “電気うなぎ”が可愛い後輩になった件(モブキャラ視点)

モブキャラ・ハドソン先輩視点です。

一ヶ月ほど前、武術上級クラスで一つ事件があった。

あの、エリュアールとかいう異種族の特別生が、急に別人のようになったのだ。


元々、「イールワード様との仲を注視・情報を集めよ」という王女殿下のお達しで、同じ授業を受けている者はそれとなく様子を見るようにと通達があったばかりだった。


だが、エリュアールは武術の実戦でも電撃魔法でこちらを昏倒させてくるような無茶苦茶なやつで、“電気うなぎ”なんて呼び名をつけられていたくらいだ。

「あれはナシだろう」と誰もが思っていた。


それが、突然「もう電撃魔法は使わない」「これからは純粋に武術で勝負する」と言い出し、電撃を浴びせた生徒全員に謝ってまわったのである。


しかも、それまでは下ろした髪を振り乱して戦っていたのが、ちゃんとした髪型で授業に出てくるようになった。

噂によれば、制服のスカート丈まで変えて、まるで淑女のようになったらしい。


(まぁ、イールワード様の影響・・・だよなぁ)


武術に真面目に励むようになり、髪型もスカートの丈も変え、淑女らしい格好になった。

イールワード様と()()()()()()()()の日を境に、だ。


二人きりで何時間も小訓練場にこもっていたらしいが、そこで何があったのか・・・色々と邪推されても仕方ない状況ではある。


報告を受けた王女殿下は静かにため息をついて、「・・・わたくしも、少し考えなければなりませんね」とつぶやかれたという。


あいつーーエリュアールは、一体何を考えているんだろうか。


「あ、ハドソン先輩。おつかれさまです」


頭の中で考えていた人物と出くわし、おれは少し狼狽えた。

エリュアールの制服姿を見るのは初めてだ。


ハーフアップの銀髪は、よく見れば虹色の輝きが走っているが、パッと見には普通のプラチナブロンドのように見える。

髪型といい、ふくらはぎ丈までのスカートといい、ノーア貴族女子の礼法どおりで上品だ。


耳も尖っていないし、目の瞳孔も人間と同じだ。

今のこいつからは、あまり異種族らしさは感じられない。


「エリュアール、こんなところでどうしたんだ?」

「特別生向け授業があるんです」


なるほど、だから制服で高等部棟にいたのか。


エリュアールは「向かう方向が同じなので」と言い、おれの隣に並んで歩き出す。

こういうところが、上級貴族達には慎みがないと批判されているのだろうが・・・おれは、別にいいと思う。


普段、おれのような下位の新興貴族、しかも“強面の筋肉野郎”は「野蛮」「汗臭そう」「成り上がり」などと言われ、ノーア貴族女子からは敬遠されている。

ノーア貴族以外の女子からも怖がられているから、こんな風に女子が普通に話しかけてくるのは初めてだ。


「あ、質問してもいいですか。この前の武術の授業で習った動きなんですけど・・・」


しかも、エリュアールはおれを“武術クラスの先輩”として、ちゃんと敬意を払ってくれる。

実戦で組む時も、うっかり投げ飛ばしたりしても気にした風はなく、さっきのあの技はどうやったのか、なんて質問しにくる。


これがノーア貴族の女子ならそうはいかない。

あいつらは騎士を目指す者として高いプライドを持っていて、おれたち新興貴族男子には「女性への配慮が足りない」「お前たちのように野蛮な者には淑女は任せられない」などとごちゃごちゃ口出しばかりしてくる。

たいして強くもないくせに、だ。


「お前は目の前の敵に集中し過ぎだと思うぞ。集団戦では、一歩引いた視点が必要なんだ」

「やっぱりそうですよね・・・どうやったら、その視点で見れますか?」


こいつはそこそこ強いのに、謙虚だ。

ちゃんと向上心があって、相手を尊重できる。


中等部の女子だろうが、異種族だろうが、それはこいつの良いところだと思う。


・・・正直、ちょっと可愛いと思ってしまう。


「しかしお前、おれなんかと二人で歩いてて大丈夫か?

イールワード様が気を揉むだろ」


でも、おれなんかが何を思おうと、こいつはイールワード様の女なのだ。


そう思って、一線を引くつもりで問うてみたのだが。


「・・・???

なんでアランが出てくるんですか?」

「なんでってお前・・・イールワード様とお前は、その・・・いい仲なんじゃねえのか?」


なんでおれがこんなことを言わなきゃいけねえんだ、という気もしたが、一応おれにもノーア貴族全体の方針ってやつに合わせて動く義務がある。

思わず口にしてしまった以上、「エリュアールとイールワード様との仲について情報を集めよ」というお達しに従うことにする。


「仲は割といいですけど・・・」

「・・・?

いや、そうじゃなくて、その・・・情を交わした仲ってやつなんだろ?」

「ジョウをカワス?ってなんですか?」


なんだか話が噛み合わない。


おいおい、まさか・・・。


「・・・よく二人っきりで、何時間も訓練場にこもってるんだろ?」

「あっ・・・違います!それはそういうのじゃないですよ!!

アランはすごく真剣に特訓メニュー組んでくれてて、色々教えてくれてるんです。

あれをデート扱いしたら、アランに失礼ですから!!」


・・・なるほど。こいつは、マジらしい。

噂と違って、二人はあくまで武術の特訓をしていると・・・。


普段の様子からしても、こいつは嘘がつけないやつだ。

顔を真っ赤にして否定しているあたり、イールワード様に好意を持っているのは間違いないんだろうが・・・。


それにしても、デートって、なぁ・・・。

なんというか「疑われてるのは()()じゃねえよ!」と言いたくなる。


そうだよな、よくよく考えれば、たしかにこいつは()()()()方面に疎そうだった・・・。


「それじゃ、私の教室はこっちなので。

・・・ハドソン先輩、ありがとうございました!」

「おう、また次の武術でな」


エリュアールが走って行く先に、イールワード様が立っているのが見える。

わざわざ教室の前で待っていたのだろうか。


無表情な顔でこちらをじっと見つめるイールワード様は、おれと二人で歩いてきたエリュアールを見て、何を思っているのだろう。

あいつが顔を赤らめたところも見ていただろうか。


(危なっかしいやつらだな・・・知らねえぞ、おれは・・・)


おれは二人から視線を外すと、自分の教室に向かって歩き始めた。

イールワード様の静かな目が、おれの背中を追っているのを感じながら。

ハドソン先輩はいい人。


次回はリュカ視点に戻ります。

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