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種族チート持ちなのに無双できないヒロインは、静かに居場所をつくる  作者: 東雲 小百合
第一章

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22. 「虹色が、減ったな」

若干甘め?の回です(当社比

その日の夕食後、リュカ達女子4人は、“屋根裏”の談話室に集まっていた。


「特別生として〜とかって話もあるけどさ、やっぱりこれじゃない?!」

「ええ〜・・・」

「リュカ、似合ってるよ」


リュカは大きな鏡の前に立たされ、そこに映る自分を眺めた。


いつもはただ下ろしているだけの髪が、メイによってハーフアップに整えられている。

後ろ髪の上半分を結んだだけなのだが、正面から見ると随分顔の印象が違ってみえる。


(スカート、長いな・・・)


見慣れているはずの制服も、スカートの丈が変わると、まるで別物だ。


アイビーグリーンーー暗い黄緑色のダブルジャケットは、襟と袖の折り返し部分だけが焦茶色で、肩から二の腕にかけてパフスリーブになっている。

下には白いブラウスを着ていて、首元には淡い黄緑色のリボンを結んでいる。


いつもと同じその制服が、なんだか気取って見えた。


「スカート、長いね・・・ウケる」

「ノーア貴族的には、この丈じゃないとダメなの!」


いつも膝丈だったスカートは、わざわざ丈を調整してもらって、今はふくらはぎーーミモレ丈になっている。

隣で笑っているレイも同様のスカート丈である。


レイ曰く、エオルテでは制服のスカートは膝丈かそれより短いのが普通で、ミモレ丈だとちょっと“ダサい”らしい。

リュカにとっては、なんだか長いなという程度の感覚なのだが。


「スカート長いのはまだしも、ペチコートが邪魔なんだけど・・・」

「カーテシーしたら裾からちょっとだけペチコート見えるのが普通なの!!」


そう、スカートの下にはペチコートも穿いているのだった。

カーテシーなんかしないよ、と言いたいところだったが、今年は学年ゼミで礼法とダンスの授業がある。


中等部の卒業パーティー(プロム)に向けての準備で、ほぼ確実にダンス用のカーテシーをすることになる。

対策しておくに越したことはないだろう。


ちなみにペチコートの下には、いつものようにスパッツと黒いニーハイを穿いている。

さすがに見えないところはいいだろうということで、これ以上ドロワーズやら靴下留めやらで脚周りがごちゃごちゃするのは避けられた。


「回し蹴りする時に邪魔だと思うんだけど

「淑女はスカートで回し蹴りなんてしないの!!」


剣術と武術も履修して“魔法騎士構成”で単位を取っているリュカからすると、なるべく緊急時に対応しやすい服装の方が都合がいい。

自分は守る側の立場であって、守られる淑女ではないのだから。


ただ、他の“魔法騎士構成”のノーア貴族女子達も制服のスカートはミモレ丈だったことを思うと、騎士でも平時は淑女の礼法にかなった服装をするのがノーア流なのかもしれない。


「だいぶ印象が違うよね。おしとやかそうに見えるよ」

「スカートはともかく、ハーフアップは可愛いね。普通のプラチナブロンドに見えなくもない」

「たしかに・・・なんか、ちょっと人間族っぽい?」


ハーフアップにして、髪の虹色の輝きが少し目立たなくなると、リュカの銀髪もさほど異質な感じはしない。

人間族にたまにいる、プラチナブロンドの女子ーーそういう印象だった。


リュカとしては、髪を下ろしているのが好きなので複雑だが、ハーフアップも悪くはない。


「耳が()()()()()のもよく見えるし、いいよね。ノーア貴族の淑女っぽくして安心感を与える・・・作戦!!」

「作戦て」

「人間族との融和に向けた戦術ってことだね」

「髪型とスカート丈変えただけなんだけど・・・」


メイは昼間の訓練の際に、この作戦を思いついたという。

人間族ーーノーア人達の”普通”に合わせようと努力する姿勢を見せれば、彼らの対立姿勢も少しはやわらぐのではないか?ということらしい。


それだけで変わるほど甘くはないと思うが、やっておいて損はない話だ。


「これでアランくんが気づいてくれたり、褒めてくれたりしたら・・・ねー!!」

「いや、あいつはそういうタイプじゃなさそうじゃない?」

「言うべきことは言いそうだけど・・・こういうのは、どうだろ?」


3人の言葉を受けて、リュカはアランのリアクションを想像してみた。


(・・・「髪を掴まれるリスクが減っていいと思う」・・・とかかな)


神妙に頷いているアランが思い浮かんで、ちょっと笑ってしまう。


「ニヤニヤしちゃって〜」

「じゃ、反応を楽しみにしてよっか!!」



休み明け、特別生向け授業のために高等部棟へ向かう。

もちろん髪型はハーフアップ、制服スカートはミモレ丈である。


昨日も特訓でアランには会ったのだが、特訓ではどうせ訓練服だからということで、髪型とスカートは今日から変えることにしていた。


(食堂ではアラン見なかったな・・・)


いつもは遅めに起きてギリギリに朝食を食べるリュカだが、今日は割と早起きした。

朝食時間が合えばアランに会えるかと期待していたので、会えなくて残念だった。


(まさか朝ご飯を抜いてるとも思えないし・・・いつも何時くらいに朝ご飯食べてるんだろ)


なお、学園では、昼食と夕食は決まった時間に全員でとるが、朝食時間はある程度自由である。

ノーア貴族女子は朝ご飯を抜く生徒も多いらしく、朝の食堂は人が少ない。

もし朝食時にアランに会えれば、普段よりゆっくり話せるはずだったのだが。


「・・・リュカ?」

「わあっ!!」


後ろから声をかけてきたのは、アランだった。

振り向くと、いつもの無表情の中に、わずかに不思議そうな表情が浮かんでいる。


「リュカ・・・おはよう。すまない、驚かせたか?」

「おはよう、アラン。ううん、ちょっと考え事してて・・・びっくりし過ぎちゃったよ」


そう言って笑いかけると、アランの表情が少し変わった。

変わったのだが・・・なんだか、彼の感情が読み取れない。これは一体、どういう気持ちの顔なのだろうか。


いつものように並んで回廊を歩きながら、リュカがアランの様子をうかがっていると、彼がぽつりと呟いた。


「・・・虹色が、減ったな」

「???」


一瞬、反応が遅れてしまった。

ハーフアップにして、髪の虹色の輝きが目立たなくなったことを言っているのだろうか。


ノーア礼法に髪型を合わせた際の副次的な効果だったのだが、そこに着目するとはさすがアランである。


「あ、うん。この髪型なら、ノーア貴族の礼法的にもOKだって、メイが」

「そうだな・・・髪を掴まれるリスクが減っていいと思う」


アランが想像していた通りの言葉を言ったので、リュカは思わず吹き出した。


「ごめんね、なんか・・・アランならそう言いそうだなって思ってた」

「そうか」


まただ。また、この表情。

リュカが笑っている時は「不思議そうな無表情」だったのが、今はまた「感情がわからない無表情」になっている。


ふと、悪戯心が湧いてきて、普段なら言わないようなことを言ってみたくなった。


「虹色が減ったの、寂しい?」

「・・・・・・」


珍しくアランが固まっている。


変なことを言ったから、引いてしまっただろうか?


アランが口元に手を当て、ぼそりと何かを言った気がするが、よく聞こえなかった。


聞き返そうか悩んでいると、アランがこちらを見た。


「・・・たしかに、前の方が虹色が綺麗だった」

「!!?」

「虹色が見えないと寂しい・・・かもしれない」


神妙な顔で首をかしげながら、こちらを見つめているアラン。


髪を見ているだけだ、と思いつつも、リュカは自分の顔に熱が集まるのを感じた。


アランも自分の目を観察された時、こんな感じだったんだろうか。


「ぇ、えっと・・・」

「また今度、髪をほどいた時は、見せて欲しい」

「!!!」


なんだか困ったような、少し可愛らしい表情で放たれたその言葉は、すさまじい破壊力だった。


もちろん、アランには他意はないのだろうが。

彼がそんなに()()()()()だとは知らなかった。


「そっか。じゃあ、今度の特訓の時は元の髪型にするよ」

「わかった」

「アランって虹色好きなんだね、知らなかった」

「・・・そうだな」


その後、リュカはほとんど自分が何をしゃべっているかわからなくなりながら、なんとか教室までたどり着いた。


後々、その会話について聞いたメイが「嘘でしょ!?そんな・・・突然積極的になるじゃん!!」と狂喜乱舞し、レイが「何それ・・・やらしい」と唾棄したので、必死に「そんなんじゃないよ!」と言って回ることになるのだが、それはもう少し先の話である。

次はちょっとストレス回です

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