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種族チート持ちなのに無双できないヒロインは、静かに居場所をつくる  作者: 東雲 小百合
第一章

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21. 思ってたのと違う!(メイ視点)

小訓練場Eについた時から、メイはずっとワクワクしていた。

何せ午後は、リュカとアランの「ドキドキ♡武術訓練」なのだ。


(武術訓練といえば・・・触れ合う身体、縮まる心の距離・・・鉄板でしょ!!)


レイには物語の読み過ぎだと呆れられたが、そう言いつつ彼女もセレスの説得を手伝ってくれた。


セレスが参加しないことに首をかしげているリュカも、やはりアランと二人の方がうれしいだろう。


にまにましているメイに、セレスが小声で話しかけてきた。


「これでいいんですよね?」


メイは目をパチパチと素早く3回まばたきさせて「肯定」の合図を返した。

隣でレイとフィリアが苦笑いしている。


しかし、訓練はあまりメイの期待通りには進まなかった。


(速っ・・・何これ、全然動き見えな・・・えっ!止められた!!?リュカが!?!!?)


型直しでは照れていたリュカも、実戦では完全にスイッチが切り替わり、甘い雰囲気どころではなかった。


それに、おかしいのはアランである。


(リュカ、武術中級で()()だったじゃない!!それをあんな簡単に払いのけるなんて・・・)


あり得ない。


そう思っていると、横からトントンと肩を叩かれた。


「メイさん、力が入り過ぎじゃないですか?」

「・・・だってさ、アランくん、リュカのこと遠慮なく投げ飛ばしたりとか・・・ひど過ぎだよ!」


武術の訓練なのはわかっているのだが、剣術・武術を履修しない“魔法士構成”で単位を取っているメイには、ちょっと乱暴過ぎるように感じる。

もっとこう、ドキドキするような感じを期待していたのに。


同じく“魔法士構成”のレイとフィリアも、心配そうな顔でリュカ達を見守っている。


「・・・明らかにやさしくしていると思いますが・・・」

「えぇっ!?どこが!!?」

「どこがって・・・犯罪者役の時は手を払いのけて短剣を突きつけるだけですし、騎士役の時は投げ飛ばすだけじゃないですか。

特別生授業でのアランさんは、女性相手でも遠慮なく地面に叩きつけたり、腕を捻り上げたりしていますよ」


それはそれでどうなのか、と言いたくなったメイだった。


ノーア人の感覚では、男性と女性が組み合うところからして、まずあり得ないのだが。

完全に男女別では女性騎士の練習にならないということで、一部の武術訓練では男女が組んで戦うこともあるが、女性には()()するのがマナーとされている。


(もう・・・脈があるのか手加減してるのか、どっちなのよ!!)


あのアランの無表情からは、内心は全く推し量れない。


もやもやしている間に、リュカは完封負けしてしまった。

負けたリュカがキラキラした目でアランを見つめているのを見て、メイは思わずこぼした。


「リュカってば、完全にバトルマニアモードじゃない・・・」

「まぁ・・・私はこうなると思ってたよ」

「武術の先輩後輩って意味なら、いい関係を築けてると思うよ」


レイとフィリアの冷静な言葉に、改めて二人を見る。

キラキラした目でアランに礼をするリュカと、落ち着いた表情でそれに応えるアラン。


「師匠!ありがとうございました」「うむ、精進するがよい」・・・そんな音声が脳内再生され、メイは頭を抱えた。


「違うってば!そういうのじゃないでしょ、もう・・・」

「しっ・・・アランくんが何か言おうとしてるみたい」


気を取り直して、二人の会話に耳を傾ける。


「動きはとてもいいと思う・・・ただ、全体的に力のかけ方が軽かった。

魔法で怯ませることを前提した動きになっていないか?」

「・・・たしかに・・・」

「実戦では電撃魔法も有用だと思うが、普段の練習では武術のみの動きに専念した方がいいと思う。

それから、今の2倍くらいは、力を乗せて動いても問題ない」


アランの言っていることは非常に的確だったらしく、リュカがまた目を輝かせている。

続けてアランから、必要なら一緒に特訓しようと持ちかけられて快諾していたが、恋する女子としてはそれでいいのか。


(いやいや、たとえ特訓でも二人が会う機会が増えるなら、それはそれで・・・それで・・・)


よくないってば!と言いたい気持ちをこらえていると、リュカが嬉しそうにこちらに手を振ってきた。


「武術の方、終わったよ!魔法の方やろう!!」

「じゃあ、まずは私からね」


レイがさっさとリュカの方へ向かい、フィリアもその後ろに続いた。


(あーあ・・・結局、アランくんがリュカをどう思ってるのか、わからないまま終わっちゃった・・・)


メイがぶすくれていると、まだ横に立っていたらしいセレスが笑った。


「何よ・・・セレスくんは、リュカに魔法教わらなくていいの?」

「ああ・・・今日は、レイに質問を禁止されているので・・・また今度まとめて聞きます」


いつの間にか、セレスがレイを呼び捨てにしている。

メイはじっとりとした目でセレスを見た。


「セレスくん?なんか知らない間にレイと、すご〜く仲良くなってない?」

「・・・さん付けがウザいと言われただけです・・・」


セレスの目が泳いでいるが、言い訳自体はとてもそれらしい気がする。


「でも、レイに禁止されたことはしないんだ?」

「二人のムードを壊すなと言われました・・・そうすれば、面白いものを見せてやると」

「面白いもの?」


メイが首をかしげたその時、突如として強大な魔力の流れを感じた。


「なっ・・・何!?」

「いくよー!!!」


リュカが立っている場所を中心に、訓練場全体を包むようにして、膨大な魔力が渦を巻いている。


魔力の動きに合わせて、キラキラした霧のようなものが動いているのが見えた。


(な、何あの魔力量・・・こんなところで、あんな魔力を放出したら・・・)


ぞっ、と鳥肌が立った。

あの量と密度で、魔法を使って暴発でもしたら・・・。


リュカがスッ、と指を天に向けた瞬間、魔力が一気に集束し、


ズガァァァアン!!


鼓膜が破れるかと思うような大音量と共に、訓練場に()()()()()


「っっっ・・・!!!」


メイはその場に凍り付いて動けなかった。


「ほら!ちゃんと(まと)だけ狙って、壊れないギリギリの威力で撃ったよ!!」

「いつ見ても、いい魔法制御してるよねー」

「だよね。こんなに近くにいたのに、私達は何ともないし」


リュカ達4人は的のすぐ近くに立っていたはずだが、何の影響もなかったらしい。

あんな膨大な魔力の渦の中にいて、あの雷の落ちた的のすぐ隣にいたのに、だ。


リュカはなんとも誇らしげな様子だし、レイとフィリアも当然のような顔をしている。


「的は・・・無事だな」


アランは相変わらずの無表情で、的を検分している。少しは驚いているのだろうか。

そもそも、的は“魔法では壊れない”はずのものなのだから、無事で当たり前である。


何より、あの威力で手加減したとは・・・本気を出せば、的は壊せるということだろうか。


「セレスく

「素晴らしい・・・っ!!リュカさん、的の魔力耐久値ギリギリを攻めた素晴らしい雷撃でした!素晴らしい魔力量と魔力制御です!!ぜひ僕にも近くで見せてください!!!」


言いたいことが溢れそうでセレスに話しかけようとしたが、彼はメイの言葉を遮ったことにも気づかなかった。

素晴らしいって言い過ぎじゃない?何回言ったの?とメイは思う。


目を爛々と輝かせてリュカ達の元へ走っていくセレスの後ろ姿を見送ると、メイはふぅ、とため息をついた。


(・・・本当にっ、みんな・・・そういえば異種族だったよね!!)


アランは人間族のはずなのだが、あのリュカを完封できるなら人間扱いしなくていいだろう、とメイは思う。


きっと彼らには、自分のこの“根源的な恐怖”を理解できないだろう。


抗う術もないような強大な力というのは、普通は怖いものなのだ。

ただ、彼らにとってはそれが“対抗・制御できる力”であるというだけで。


(もう・・・ちゃんと、()()しないとね!!)


“特別生らしさ”の対策も必要だが、人間族との溝を埋めるためには、きっと彼らも人間族を理解するべきだ。


メイは息を吸い込むと、努めて明るい声で言った。


「ちょっとみんなー!?・・・一回さぁ、人間族の()()について()()しようか!!」

リュカ達がいかに異質(≒異種族してる)か、普通の人間目線で理解できるのはメイだけだと思います。


次はちょっぴりキュン回(筆者比)の予定です。

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