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種族チート持ちなのに無双できないヒロインは、静かに居場所をつくる  作者: 東雲 小百合
第一章

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14. 確信に満ちて (ユミア王女視点)

ユミア王女視点の話。ストレス回です

「ユミア様、お聞きになりまして?イールワード様とあの異種族・・・二人きりで回廊を歩いていたとか」


夜、ユミア王女の寝室には、数人の女子生徒が集まっていた。

学園内への侍従・侍女の帯同は禁止されているため、彼女達は()()()()王女の侍女役を担っているのだ。


「あの異種族・・・なんと、風で乱れた髪を魔法で整えたそうですわ」

「まぁ・・・なんて野蛮な。櫛を使う知性すらないのかしら!」

「淑女たる者、櫛と鏡を携帯して当然ですわ!・・・いえ、アルダーワースでは、ということですけれど」


ユミア王女の美しい髪を(くしけず)ったり、着替えを手伝ったりしながら、女子生徒達は口々に(さえず)っている。


ノーア貴族ならば侍従・侍女が身の回りの世話をするのか当然だが、ここアルダーワース王立魔法学園に通う生徒達はみな、自分で身だしなみを整えて持ち物を管理する。

何年も学園に通っている彼女達は学園の感覚になじみつつあったが、王女の前では「ノーア貴族らしさ」を思い出さなければならなかった。


「そのうえ・・・スカートをめくり上げ、イールワード様に下穿きを見せつけていたとか・・・!」

「な、なんてはしたない・・・その時イールワード様はどうされていましたの?」

「もちろん、紳士として見ないふりをされていましたわ」


王女は口元に二分の笑みをたたえ、女子生徒達の会話を黙って聞いている。


「でも・・・どうかしら。英雄、色を好むと言いますもの。イールワード様もお祖父様のように

「・・・学園に通っていると、ノーア貴族らしさを忘れてしまうようですね」


特に口の軽い女子生徒が何か言いかけた時、ついに王女は口を開いた。


「も、申し訳ございません、ユミア様!!」

「申し訳ございません!!」

「申し訳ございません、ユミア様・・・まったく、あなた達ときたら。学園の流儀を覚えるのは素晴らしいことですが、ノーア貴族としての振る舞いを忘れてはいけませんわ」


侍女役の生徒の中で、最も位が高い生徒が言った。先ほどまで話に加わらず、静観していた生徒だ。

ユミア王女は頷きこそしなかったが、心の中では強く同意していた。


「あなた達が率直な言葉を遣うことは、学園への積極的な適応であり、わたくしへの親愛の表れだと理解しています」

「ユミア様・・・!」

「ですが、わたくしの()()()()を悪く言うことは、さすがに見過ごせません」


ユミア王女はそう言って、口元の笑みを消した。


「あの方がバルダシル様のように奔放な方だとしても、マナ国の首長としてあるべき道へと導くのが、妻の役目です」


それは彼女の一抹の不安であり、本心だった。


かつて、王女だった自分の祖母を捨て、雑種ーー異種族の血を引く平民を選んだバルダシルのように、アランも()()()()可能性がない訳ではない。


祖母は公爵家に嫁ぎ、その娘である母は、父に嫁いで王妃となった。

しかし父は母と婚約する前に、何度かバルダシルの一人娘ーーアランの母親に婚約を打診していたという。


その一人娘は、バルダシルの血筋、およびイールワードの男系男子を絶やさぬためにと、傍系の男を婿()()()()()()、アランを産んだそうだ。


「あの方も何が正しいのかは重々わかっているでしょう・・・重責から逃れるために、軽薄で卑しい女性との火遊びに耽るのは、殿方によくある悪い癖かもしれませんが」


人間族の英雄イールワード家と婚姻を結び、世界に人間族主導の秩序を取り戻すことは、ここ数十年に渡るノーヘイン王家の悲願だ。

ずっとすれ違ってきたイールワード家とノーヘイン王家が、ついに自分の代で婚姻を結べるのであれば、それは何より喜ばしいことだろう。


「わたくしはあの方を信じます。英雄バルダシルの犯した唯一にして最大の誤りを、あの方が繰り返すことはないでしょう」


ふと、ユミア王女の頭に、あの異種族の少女が思い浮かんだ。

自分に「ノーヘインさん」などと話しかけてきた、いかにも思慮の浅そうな少女。


あの少女はノーアの平民のように、常に膝丈しかないスカートを穿いていたらしい。

それ自体は生まれが違えば仕方がないと思っていたが、アランに下穿きを見せつけたということは、最初から身体を武器として使うつもりがあったのだろうか。


(そのような女であれば、そもそもあの方は、目もくれないかもしれませんね。)


ユミア王女は思わずフッ、と鼻で笑った。

周りの女子生徒に影響されたのか、自分も少し率直な言葉を遣ってみたくなる。


「それに・・・異種族には異種族なりの文化もあるのでしょう。見苦しく、何も知らない者達を教え導くのもまた、わたくし達の使命ですわ」

「ユミア様・・・浅はかな私達をどうかお許しください」

「なんて広い御心・・・イールワード様もユミア様に感謝するに違いありませんわ」


王女の着替えが終わり、女子生徒達は各自の部屋へ戻っていく。

自分達は何一つ間違っていないと信じたまま、それぞれの夜が更けていった。

色々気になると思いますが、明日更新の次話で多少安心要素が出ます

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