第44話 いろいろとめんどうくさい場合は決闘になるんだって……
水掛け論。
いったとか、いわなかったとか、どっちもが反対の主張をして、意見を曲げない。
そうなると決着がつかない。
ボクとしてはエリンが証人だと思うんだけど……エリンは『第3者』ではないってことらしい。どっちの味方でもない人のことを『第3者』っていうみたい。
ボクの仲間とみなされて、エリンには証人としての価値がないんだって……。
ボクの仲間でもなく、あっちの4人組の仲間でもない人物の証言が出てくると話は変わってくるみたいだけど……。
アリスティアお嬢さまによると、実はそういうのも信頼してはダメなんだとか。
……お金とか、裏でもらってる可能性もあるから。
まあ、もっと怖いのは……仲間のはずの味方が、お金をもらって証言をひるがえすこと、らしい。
いや、エリンについてはそういう心配はいらない。
アリスティアお嬢さま付きのメイドってことはシュタイン伯爵家の人間だから。
それにエリンがどんな子なのかはボクがよく知ってる。
だから、そこの心配がいらないのは助かる。
「シーアルドくんの話をきいた感じだと、あちらも平民のようですから……」
「あちらの後ろ盾が誓いを受け入れないのなら、決闘になることもなく決着はつくでしょう」
後ろ盾の貴族がどうするか、という部分が大事らしい。
ボクや、あのチンピラ騎士見習いたちが誓いたいと思っても、それを後ろ盾の貴族が認めなければダメ。意味がない。
今回の場合、ボクはもうアリスティアお嬢さまとイセリナ先生に誓って、受け入れてもらってるので、問題ない。
ボクのことなのに、責任はシュタイン伯爵家とデレシーロ侯爵家がとる。ありがたい話だけど……怖い。大きな借りになりそうで……。
向こう側の貴族がどこの人なのかはわからないけど、チンピラ騎士見習いの誓いを受け入れなければ、貴族対平民という構図になって、ボクの不戦勝らしい。
嘘をついてのはチンピラ騎士見習いの方だと認定されて、あいつらが責任をとる。
貴族だと身分を偽るのはかなり重たい罪らしいから、そういう冤罪をかけようとしたってことで罰を受ける。
ただし、罰するのはチンピラ騎士見習いの後ろ盾になってる貴族とのこと。
それって罰を手加減できるような気がするんだけど……恥をかかされた貴族は平民を絶対に許さない、らしい。だからそういう心配はあんまりいらないんだとか。
ボクの場合は……まあ、ジョブが『なんとか魔術師』だという面が大きいけど、アリスティアお嬢さまも、イセリナ先生も全面的に責任を負うとのこと。もちろん、ふたりの家が、という意味で。
そう考えるとこの『なんとか魔術師』ってジョブの力はすごい。
イセリナ先生によると、学園長がこっちに残っていたのならカーインド公爵家も後ろ盾として責任を負ったはず、らしい。
ありがたい話だけど、もう胃が痛いよ……。
そう考えてみると、あんなチンピラみたいな連中のことを……向こうの後ろ盾の貴族がかばうなんてことがあるんだろうか、と思う。
どう考えてもあいつらなんて信用できない。町中で女の子を連れ去ろうとするようなヤツだし。
「……あっちの貴族は、その……後ろ盾として動かないんじゃないでしょうか?」
「あら、どうしてそう思ったのかしら? シーアルド?」
「いえ……あいつらって、エリンを町中で、しかもボクの目の前で連れ去ろうとしたような……そんなろくでもない連中だったので……貴族がかばう意味がないんじゃないかと」
「そういう考え方もありますわね……」
……アリスティアお嬢さま? それはつまり、ちがう考え方もあるってことですよね?
「シーアルドくん」
「は、はい。イセリナ先生」
「世の中には、後ろ暗いことをさせたい、という場合もあります」
「え、ええと……」
「誰にでも、隠し事のひとつやふたつ、あるものでしょう? そういうことです」
イセリナ先生にそういわれて、ボクはドキっとした。
うっ……隠し事……ある。あるなぁ。
本当にいろいろと隠してるし。
「……シーアルドがいうように、その方たちはあまり質の良い方ではないのでしょうけれど、そういういつでも切り捨てられる都合のいい人材というのは、時に必要なこともあるのですわ」
うう、貴族が怖い。
切り捨てられる都合のいい人材って……何?
怖いよ、やさしいはずのアリスティアお嬢さまが!?
「もし、その方たちが騎士として強いのであれば、なおさら」
「……そうすると、あの人たちは弱かったので問題ないような気が……」
「いや、シーアルドが強すぎるって部分を忘れんなよ……」
ナイスクマリーがあきれたようにそういった。
「シーアルドの基準での弱いってさ、ソードアークでも弱いわけだろ? あいつ、騎士学園の第1学年では最強なんだぞ?」
「そうですわね。あちらの後ろ盾がどこの貴族なのかはわかりませんけれど、シーアルドのことを知らずに……その方たちが強いと思っているのなら、ただ決闘で勝てばいいだけ、という考えになる可能性が高いでしょう」
「えぇ……どうすれば……」
「勝てばよいのです」
「そうです。シーアルドくんは決闘に勝てばいいんですよ。負けても責任は取りますから安心して下さいね?」
イセリナ先生!?
ありがたいお言葉のようでいて、すごいプレッシャーです!?
別の意味で安心できません!?
いや、あの人たちに負けるとは思わないけど……。
その時、ボクの頭の中では、サラマン・イスクの話がぐるぐると回っていたのだった。




