第45話 いろいろと考えた結果、ヤるなら徹底的に……。
3日後。
結局、決闘することに決まった。
こうなったら、いろいろと悩んでも仕方がないので……ボクは全力を尽くすだけ。
心に浮かぶのは……サラマン・イスクの人生。
今回の件は『なんとか魔術師』とは関係ないけど、でも、こういうもめ事で恨まれるって可能性は高い。
その結果として……直接もめ事に関係してるエリンが狙われるってこともあるかもしれない。
じゃあ、負けた方がいいのか、というと……そういうことにはならない。
もちろん、負けた場合はボクじゃなくてイセリナ先生たちが責任をとってくれるんだけど、そっちの方が怖い。
そういう意味でも負けるわけにはいかないし……。
勝つのは大前提になってる。当然だけど、もちろんボクとしても負ける気はない。
そして、ただ単に勝つだけで終わらせない。
圧倒的に、勝つ。というか……潰す。
さすがに殺すまではヤらせてもらえないだろうけど……。
決闘という形はしているけど、あくまでも学園生の決闘だから。
殺し合うことまではさせないように審判をするらしい。
めんどうなことになってる。本当にめんどうくさい。
でも、これはヤるしかない。徹底的に。
「では、決闘を始めたいんだが……」
「ちょっと待って下さい」
審判役の騎士学園の先生をボクは止める。
「……何か?」
「あの、みたところ……今から1対1を、4回するんだろうと思うんですけど……」
「ああ、そうなる。だが、キミが不利だとはいえ、あちらは4人いるのでそこは変えられないぞ?」
そこを変えるつもりはない。
4回の決闘とか、全然、問題ない。でも、そうじゃない。
圧倒的で、徹底的な勝利。
それは……。
「4人同時の、1対4の決闘でお願いします」
「は……?」
「格下の弱いザコ相手に時間を無駄にしたくないので」
「あ、いや、それは……キミ、魔法学園の学園生だよな?」
正直なところ、1対1の場合、ボクが相手を徹底的に潰す前に審判がボクの勝利を宣言して止めてしまう可能性がある。
ボクの目的は……神殿の司祭さまクラスの回復魔法でも治せないレベルの大怪我をさせることだ。
都合のいいことに、この決闘は刃を潰した剣。
斬ることはできない代わりに、力づくで潰すことには向いてる。
殺せなくもないけど、殺すようにヤるとあとで問題にされる可能性がある。だから、潰すように戦う。
「てめぇ……俺たちをザコだとぬかしやがったのか……?」
「この前も4対1で……あっさり逃げたじゃないですか? しかも、嘘までついてこんな決闘までするなんてめんどうなんですよ?」
ボクは煽る。4対1での戦いで、審判が途中で……大怪我でも止められないようにするために。
そうすれば少なくとも3人は完全に潰せるはず。
「そもそもボクの方が強いのに、貴族だとか、身分を偽る必要ゼロなんですよ。弱いクセに嘘までついて……本当にザコですね? まあ、そっちが嘘をついてるってはっきりさせるためにも、4人同時でいいですよ? ザコ、なので」
「キミは……」
「先生よぉ、こんなことまで口にしたんだ。4対1でヤらせてもらうぜ……」
「今日は剣があるんだぞ? ナメてんじゃねぇよ……」
「ナメた口ききやがって……ブっ殺す……」
「くひひ、バーカめ……」
審判の先生にすら、この態度だ。チンピラでしかない。
どう考えても嘘をついてるのはこいつらにしか思えないだろうに。
しかも煽られたことで苛立ってるのもわかる。
そんな精神状態で冷静に戦えるとでも思ってるんだろうか?
でも、正直なところ、こっちももう苛立ちは限界にきてる。
どうしてボクはこんなめんどうに巻き込まれるのか。
八つ当たりも含めて……平和な未来のためにとことん潰してやる……。
「……後悔しないな?」
「ええ、もちろんです」
「わかった……1対4での決闘にしよう。それぞれ、もう少し、離れなさい……そう、その位置だ」
ボクと、チンピラ騎士4人が約3メートルほどの距離をとる。
「では、はじめっ!」
「おらあっ!」
「死ねやこらっ!」
「ブッ殺す!」
「でやあっ!」
一瞬で4人の間を軽く開く。
互いの剣がぶつからない適切な距離。
そういう判断力はあるらしい。
そうして、同時にボクへと向かってくる。
でも、遅い。
ボクの目には……まるで歩いてるみたいにみえる。
ボクは一番右のチンピラに一瞬で近づき、まず左足に思い切り剣を叩きつける。
斬るつもりなんかないから、どう当てても問題ない。
強引に、力づくでいい。
骨が折れる感触があり、相手はバランスを崩す。
その瞬間には反動で振り上げた剣を右腕に振り下ろし、さらに剣を握る手を思い切り殴りつけるように叩く。
その全てで鈍いボキバキボキという音が聞こえる。
そいつの手から剣が落ちていくのをみながら、さらに股間を思い切り蹴り上げる。
エリンに手出しなんかさせない。そこもきっちりと潰しておく。
ひとり目の股間を蹴り上げると同時に、その隣のふたり目の左足へと剣を振り下ろしていく。
ボクとチンピラ騎士たちとでは、完全にスピードがちがう。
こいつらはあまりにも遅すぎる。
あとは同じことの繰り返しだけ。
4回、繰り返すだけだ。
ボクにしてみれば……ただの作業でしかない。
「そ、そこまでっっ!?」
審判が叫ぶようにして終わりを告げたけど、ボクは足を止めずにそのまま4人目の股間を思いっ切り蹴り上げた。
きこえていたけど、足を止める気はなかった。
審判のその声以外は何もきこえない。
うめき声すら響かない。
4人のチンピラ騎士は両膝を地面について、前に倒れている。
白目で、気絶したまま。
変なよだれが口から流れ出てるけど、声は出せない状態らしい。
片腕片足を折り、利き手を完全に潰した。
回復魔法で治療しても……まともに剣を握れるとは思えないくらい、思い切り手を潰しておいた。
……あの女神さまのカードだったら回復するかもしれないけど。
ボクにこいつらを癒す気はないから治らないと思う。
そうやって完全に潰したことを確認してから、ボクは後ろを振り返った。
そこには……エリンやアリスティアお嬢さまを含めて、ドン引きしているみんながいた。
にこにこしているイセリナ先生以外は……みんな、顔を引きつらせてる。
あれ?
ボク、何かまちがったかな?
サラマン・イスクみたいな人生にならないようにするには、こうするのが正解だと思ったんだけど?




