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なんとか魔術師かーど〜しよう?  作者: 相生蒼尉
第3章 すでに最強だったの!?

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第39話 デート中に他の女の影はよくない……。



「おっらああああっ!」

「ふっ」


 ソードアークの鋭い剣先をかわして、ボクはソードアークの首元に木剣を寸止めする。

 寸止めしても振り回した勢いのまま、軽く首元に押し当てる形になる。


「ぐっ……」

「あ、ごめん、痛かったか?」

「いや、問題ねぇ……っつ……」


 いつもの朝の訓練だけど、今までとはちがう。


 これでこの朝だけで6戦6勝になった。ずっとボクの勝ちが続いてる。


「……もう1回だ……」

「いや、そろそろ……」

「シーアルド~、ソードアーク~、タオルもってきたよ~」


 エリンがくる頃だからといいかけたところで、本当にエリンがやってきた。


「ありがとう、エリン」

「……おう。ありがとな……」

「どういたしまして。ふたりとも、毎朝頑張ってるよね!」


 エリンからタオルを受け取って、ボクは首にかける。

 そのまま、井戸に近づき、水をくみ上げる。


「ソードアーク、先に使って」

「おぅ、わりぃな……」


 ボクが水桶を傾けて、そこから流れる水でソードアークが頭ごと顔を洗う。

 この寒さの中でも、ボクたちは完全な温まってるから問題ない。なんならソードアークの体からは湯気すら出てる。


 交代して、ソードアークが流す水で今度はボクが頭ごと顔を洗う。

 首にかけてるタオルは濡らさないようにしながら。


「……寒くない? ふたりとも?」

「いや、別に?」

「まあ、これだけ動いたあとなら」


 朝から素振りを繰り返し、模擬戦を6本だ。

 運動量はかなりあると思う。


 今日は休日だけど、普段ならソードアークは騎士学園でもまた訓練を積む。とんでもない運動量だと思う。


 ……だから脳筋になるのかもしれないけど。


「シーアルド! 今日は朝食の後、寮の裏口でね!」

「ああ、うん」


 ……あれ?


「あん? 何の話だよ?」

「いや、休日だから……」

「ソードアークには関係ないでしょ! あたしとシーアルドのデートなんだから!」

「は!?」

「えっ……?」


 ボクはてっきり……ソードアークも一緒なんだと思ってたんだけど……。

 3人で串焼きの屋台にでも行くのかと……。


「ど、どどど、どういうことだよ!?」

「今、いったでしょ? デートだってば」

「な、ななな、なんでシーアルドと……」

「やだ!? そんなこと聞かないでよね! ソードアークのバカ!」


 顔を真っ赤にしたエリンはかわいい。かわいいんだけど……。


「しぃぃぃあるどぉぉぉっっ!! いつか必ずぶっ倒してやるぅぅっっ!!」


 なんか、叫びながら、かつ、泣きながらソードアークが走り去った。


 いや、ソードアークがエリンのことを好きだっていうのはなんとなく知ってたけど……。


 でも、ソードアークってアリスティアお嬢さまとか、侍女のオリーナさんにも、エリンに向けるのと同じ視線を向けてたからなぁ。


「……えっと? ソードアークは一緒じゃないって……」

「だって、シーアルドが誘ってくれたのに、ソードアークは関係ないでしょ?」


 確かにボクがエリンを誘ったけど……ボクの頭の中ではソードアークも一緒だというイメージがあったわけで……。


 でも、今さらそんなこといえなくなった!?

 エリンがすごく楽しみにしてるみたいだし!?


 ……ごめん、ソードアーク。ボクは行くよ、エリンと共に。


 走り去ったソードアークが昨日の何倍もボクに対する闘志を燃やしてた気がするけど、まあ、それはどうにでもなるから……正直、剣の勝負だと楽勝だし……。


 そ、そうか。

 実はエリンとデートだったのかぁ……知らなかったよ……。


 なんか、ボクまでドキドキしてきたな……。


 ……そういえば、エリンのことも、ソードアークとの関係が悪くなるとか思ってたんだよな。


 ソードアークは叫びながら走っていったけど、実際にはそのくらいことしか起きてない。

 こうなってもソードアークとの関係は大して悪くなったような気はしないから、ボクが気にしすぎてたんだろうな。






 学園都市には基本的に3つの学園と3つの寮がある。


 3つの学園とは、王立カンシドレー魔法学園、王立カンシドレー騎士学園、カンシドレー神学校のことだ。ひとつだけ学園ではなく学校だけど。


 王立のふたつの学園の生徒は出身地域別に、東寮、西寮、南寮と呼ばれる3つの寮で寮生活を送っている。


 地域別の寮とは別に、カンシドレー神学校には男子寮と女子寮があって、神官見習いと巫女見習いが厳しい寮生活をしているらしい。

 ボクたちの東寮は特に厳しいきまりとかはない……とボクは思ってる。あるとしても門限くらいかな? 割と自由だと感じるくらいだ。


 住民の3分の1くらいはそれぞれの学園の生徒ってことになる。

 だから学園生たちを中心として、その生活を支えるものが学園都市にはそろってるわけだ。

 だからお店やギルドなんかもちゃんとある。


 むしろ学園生は数年間しかこの都市にいないので、学園生を支えるために暮らしている人々の方がこの都市の住人だといえるかもしれない。


「あっちあっち! あそこの串焼き肉が美味しいんだって!」

「エリンは詳しいね?」

「寮の裏だと、使用人はみんな仲良しなんだよね。だから、こういう情報も教えてもらえるんだよ」


 ボクが誘ったけど、前を歩くのはエリンだ。

 昔、孤児院のお使いでシュタインズゲートの町を歩いた時とは全然ちがうエリンの生き生きとした様子に、ほんの少しだけ戸惑ってしまう。


 ……ボクはアリスティアお嬢さまの護衛役として、魔法学園の登下校がメインだし、あとは外のダンジョンに行ってから魔石を換金するくらいだもんな。


 どうやらエリンの方がボクよりも学園都市の街に詳しいようだ。


「オークのくず肉を使ってるから、味はまちがいなくて、それでいて安いって!」

「なるほど……」


 串焼きを購入して、お店から離れたところでエリンが裏情報を教えてくれる。

 領都シュタインズゲートにいた頃、エリンがごちそうしてくれたから、これはそのお礼でボクのオゴリになってる。


 パクリとひと口。

 確かにこれは美味しい。


「……シーアルドがシュタインズゲートの時のお礼っていってたけど、あたし、気にしてなかったのに」

「ボクも、ほら、ダンジョンに入れるようになったから、お金は稼げるようになったし」


「すごいよね、ダンジョンに入って稼ぐとか……『メイド』のあたしにはよくわかんない世界……」

「それぞれ女神さまにもらったジョブで頑張ることが大事。司祭さまも神官さまも、そんなことをいってたよね? エリンはすごく頑張ってるよ」

「えへへぇ……」


 嬉しそうにエリンが笑う。


 でも、ボクは……自分の言葉に自分で少し傷ついていたりして。


 魔法学園ではまだ魔法が使えないってことになってて、『なんとか魔術師』だというのにまるで騎士見習いみたいに護衛役でダンジョン入りしてる。


 もちろん、護衛は全力で頑張ってるけど……。


 女神さまのご意思みたいなものがあるんなら、ボクは『なんとか魔術師』としてカードの魔法をどんどん使うべきなのかもしれない。


 でも……『雷撃の魔術師』サラマン・イスクの人生の話が怖すぎるんだよな……。


「あ、そうだ! 学園都市にも神殿はあるんだよ! だから、女神さまにお祈りしにちょっといってみようよ!」

「いいね、そうしようか」


 エリンが次の目的地を決めてくれる。

 ボクってこれがデートなんだとしたら、完全にエリンの尻に敷かれてるっていうヤツなのでは?


 そんなことを思いながらも、僕にはエリンをリードすることなんかできない。結局はエリンに引っ張られるようにして学園都市を歩く。


「あれ? 神殿の入口の横に、なんかお店が出てるね? お休みの日だから? いつもはみないんだけど……?」


 エリンの言葉に釣られるように視線を向けると、いくつか机を並べて女の子たちがクッキーのようなものを売っていた。


「あ、でもこのクッキー、美味しそう」


 どうやらエリンのくいしんぼが発動したらしい。かわいい。


「あら? シーアルドさまではございませんか? 先日は大変お世話になりました」


 クッキーの販売をしている女の子のひとりがボクの名前を呼んだ。

 その女の子はよくみると、この前、一緒にダンジョン実習をした巫女見習いの……オーロラさんだった。






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