第36話 幼馴染が実は最強(部分的に)だった件
「え? 騎士学園でヌーヴォルスと決闘した? それってどういうこと?」
「どういうことっていわれてもなぁ? なんか、貴様の友人に恥をかかされた。この恥をなんちゃらかんちゃらっていってた。たぶんシーアルドのことなんじゃねーの?」
ソードアークが早朝の訓練で、そんなことを気楽にいった。
……いや。全然気楽な話じゃない。決闘って気楽なものではないはず。やっぱり騎士学園って脳筋としか思えない。
まさかダンジョン実習の直後にそんな決闘とか……どれだけ脳筋なんだ、騎士見習い……。
あ、待てよ。
そこまでの感じで、昨日の寮では何も絡まれてないな?
なんでだ?
まさか……? 死……?
「それでソードアーク、ヌーヴォルスは決闘のあと、どうなったんだ?」
「ふん、さすがはシーアルドだぜ! オレが勝ったってことは疑ってねーんだからよ!」
まあ、ゴブリンとの戦闘をみたからなぁ……あれでソードアークに勝てるとは思えない。
それに、目の前のソードアークはピンピンしてるし。
「それで、どうなったんだ?」
「ちゃんと寸止めしても、ちょっとは当たるだろ? 決闘だってんで先生がちゃんと審判に入ったからいつもよりも思いっ切りやったら、なんか立ち上がれねぇくらい痛かったみたいで、治療院? とかなんとかってところに連れてかれたぜ?」
治療院って……神殿の関係の施設だよな?
それは、かなりの大怪我だったんじゃ……。
ま、まあ、そのお陰で寮では絡まれなくて助かったけど……。
「……そんな大怪我させたんなら問題になるんじゃ……」
「え? ならねぇだろ? 先生たちが審判して決闘したんだぜ?」
「……いわれてみれば……」
先生が審判までしてたんなら、いいのか?
いや、それでいいのか、騎士学園?
「だいたいよぉ」
「うん?」
「普段の騎士学園の訓練は、別の領地のやつが相手なんだよな。決闘とかいってたけど、シーアルドを理由にしてオレと勝負したかったんじゃねーの? あいつ?」
……ソードアークが、頭を……使ってる!?
「……みてぇなことをネルソンのやつがいってた」
あ、別の人からそういわれただけか。納得。
「なんだっけ……? あいつほんとはシーアルドとやりたいんじゃねーかってネルソンに聞いたら、魔法学園の生徒に決闘を申し込んだらただの恥だとかなんとか?」
それはまあ、そうだろう。
魔法学園では剣に関する授業はない。
そんなところで学んでる人間に剣で挑むなんて、確かに恥さらしだ。
……まあ、それならボクが寮でヌーヴォルスに絡まれることはないのか?
いや。
もし絡まれたとしてもあの剣の腕なら問題ないか。
「そんなことより、勝負だ! シーアルド!」
「はいはい。訓練ね」
話よりも剣、という顔でソードアークはボクに斬りかかってくる。
こんな感じでボクはいつもの朝の訓練をしたのだった。
「おう! 君がシーアルドか!」
「シーアルドくん。彼は騎士学園の学園長をしているノルディック・ホワイトナイト侯爵だよ」
イセリナ先生から学園長室へいくようにといわれてきてみれば、そこに騎士学園の学園長がいた。
意味がわからない。
「……はじめまして。シーアルドです」
とりあえず自己紹介はしたけど、この呼び出しはいったい……?
「座りたまえ」
「おお、座ってくれ!」
騎士学園のホワイトナイト学園長はとにかく声が大きい。
そうでないと騎士見習いたちをいい聞かせるなんてできないんだろうけど……こういう部屋だとすごく頭に響く。
でも、ボクはある意味、ソードアークでこういうのは慣れてる。
ソードアークも基本的に騒がしいから……。
「今回、キミを呼び出したのは……」
「騎士学園に移らないか、シーアルド? おまえのその才能は騎士学園で磨くべきだ!」
どうやらボクは、騎士学園への転校を勧められてるらしい?
それも、騎士学園の学園長直々に。
ボクはちらりと魔法学園の学園長の方をみた。
「……こうなった経緯について、説明しよう」
ボクの意図はちゃんと伝わったらしい。
でも、口を開いたのはホワイトナイト学園長の方だった。
「おまえさんは強い! 剣技も優れとる! だから騎士学園だ! わはは!」
いや、経緯の説明どこに!?
カーインド学園長は苦笑いだ。
この騎士学園の学園長のことは嫌いではないみたいだけど、困ってはいる感じ。
「……今朝、東寮を訪れていたホワイトナイト学園長は、窓からキミと騎士学園の学園生との訓練をみていたそうだ」
「あのソードアークと互角……いや……」
そこでニヤリとホワイトナイト学園長は笑った。
「……手加減して勝ちを譲るなんてな? まさかそこまでの力量があるとは思わなかった! これはもうどう考えても魔法学園よりも騎士学園だろう!」
「……と、ホワイトナイト学園長はこういっているのだが、それは……事実なのかね、シーアルドくん?」
「俺もずいぶん老いたとはいえ、この目はまだ確かだ! みまちがえるはずがない! 公爵よ!」
……直接みて、そういう確信をもったらしい。
ボクとしては手加減というより、そうしないとソードアークがめんどうくさいだけなんだけど……。
これ、どうしようか……?
「……ソードアークとは同じ孤児院で育って……」
「おう! 知ってる!」
「……毎日のようにチャンバラをして遊んでいましたけど……」
「今は木剣での寸止めでやってるな!」
合いの手がいちいちうるさい人だなぁ……。
「……確かに、勝ちをゆずるというか、わざと負けるというか、そういうことはしています……」
「なんと……」
「ほら! いったじゃないか! 公爵よ!」
ホワイトナイト学園長はガバっと立ち上がって拳を握る。
「今の第1学年で最強の『剣豪』相手に余裕かましてわざと負けてやがったってな!」
そして、ボクのことをビシっと指差す。
「明日から騎士学園だ! いいよな!」
いいわけがない。
これだけははっきりとさせておこう。
「あの、お断りします」
ボクはシンプルに断った。
イセリナ先生のいない騎士学園なんかにいく必要性を感じないので……。
それよりも……ソードアークって騎士学園の第1学年で最強だったのか……。




