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なんとか魔術師かーど〜しよう?  作者: 相生蒼尉
第2章 なんとか魔術師のセンパイ

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第32話 おそるべし『なんとか魔術師』という可能性



 どうやらカードで魔法を使ったり、モンスターを倒したりするとボクの魔力の本の新しいページが使えるようになるらしい。


 新しいページになる7ページ目は、上の方にひとつだけカードの枠がある。

 この枠は半円つきだから取り外し可能だ。

 カードの枠の下には大きな枠がページの4分の3くらいに広がってる。


 ここにカードをはめ込むと大きな枠の中に文字が出てくる。

 読めないからたぶん古代神聖文字なんだけど……。


 起句は『仕様シュピッツィフィカシオン』で……起句を唱えるとカードの説明が頭の中に流れる。


 おそらく大きな枠に書かれていることの説明なんだけど、頭に流れる説明はちゃんとボクにも理解できる内容だ。


「……つまり、このページを使えば実質的に古代神聖文字の翻訳ができてるような気がするんだけど……」


 ……うん。


 深く考えないようにしよう。

 あと、シェンエント先生には絶対に教えない。絶対に、だ。


 むしろ、いつかボクが未解読の古代神聖文字の意味をたくさん発表してシェンエント先生を泣くほどくやしがらせてやることに決めた。


 そして、8ページ目。

 ここは今までで一番たくさんのカードの枠があるページだ。


 なんと上中下の3段にそれぞれ3つずつで9つのカードの枠がある。

 しかし、残念ながら半円はどの枠にもついてない。取り外し不可の枠のようだ。


 カードの枠にはそれぞれ数字のゼロがおまけでついてる感じ。


「……なんとなくわかるし、大丈夫だって本能では理解できてるけど、取り外せない枠はそれでも怖いんだよなぁ」


 イセリナ先生を待っている間はどうするか悩んで実験できなかった。

 あの時間は取り外し可能な7ページ目の方の実験をいろんなカードで試してたってこともあるけど。


 こういう時は希少性の低いほうきのカードが役に立つ。


 ボクは勇気を出して左上のカードの枠にほうきのカードをはめ込んだ。

 ほうきのカードが入った枠の下のゼロが1に変わる。


「……枚数? つまり……」


 直感的に大丈夫だというのはわかる。

 ボクは同じ枠にもう1枚のほうきのカードをはめ込んだ。


 数字が2になる。


「カード入れのページか? ポケットに入れておくよりはいいけど……」


 ボクはほうきのカードをどんどんはめ込んでいった。すると、10枚目ではめ込むことができなくなった。

 数字は9になってる。


「ひとつの枠に9枚まで……? それなら……」


 ふたつ目の枠にほうきのカードをはめ込む。

 ちゃんと入って、そっちの枠のゼロが1になる。


「枠が9で、それぞれ9枚だから……81枚のカードが入る? でも別の種類のカードは枠を変えないとダメみたいだな。そうすると最大で9種類か。あ、これ……使える。起句が頭に……『資用サンパティ』」


 その瞬間、最初の枠の数字が9から8に減った。


 自分の魔法は本能的に理解できるというのはまちがいじゃない。


 ボクはページをめくって1ページ目を確認した。

 そこにはほうきのカードが入っていた。


「あのページにはめ込んだカードをこっちに移すための起句が『資用サンパティ』か。ほうきのカードなら2ページ目の方が……あ。それを意識すればいいのか。あと、はめ込んだ枠もふたつ目のまだ1枚しか入れてない方を意識して……『資用サンパティ』」


 2ページ目の枠の中にほうきのカードがスッと現れる。

 1ページ目と2ページ目を開いたままで、8ページに入れておいたカードは移せるようだ。


 ボクは再び8ページ目までページをめくっていく。

 ほうきのカードが入っていたふたつ目の枠が空になって数字はゼロに戻っていた。


 そして、右下にある9番目の枠に1枚だけほうきのカードをはめ込んだ。


「もし、何日か経ってもこのカードが消えなかったら……このページにはめ込んだカードはなくならずに保管できるってことになる。たぶん、そうなんだろうっていうのは直感でわかってるけど……確認は大事だ」


 初めて魔力の本を出せるようになってから、いろいろなページが増えてきた。

 今回はカードの保管ができる可能性も高い。


「……カードさえなくならないように工夫すれば、ボクって……」


 ……危険なくらい強力な魔術師なんじゃないのか? あの人みたいに?


 そう感じた瞬間、ボクの背中をぞくりと冷たい何かが走った。


 それは……この先のボクの人生に対する暗示だったのかもしれない。






☆☆☆☆☆


「……あの時、やはり彼があの場にいたのはまちがいない、か……」

「ええ、そうですね。みまちがえるはずがありません。あの……深い深い闇のような魔力だけは……」


 キャナリー・カーインド学園長は向かい側に座って微笑む教え子をみつめた。


 イセリナ・デレシーロ侯爵令嬢はとても優秀な学園生だった。

 入学当時からその膨大な魔力量は他の学園生を圧倒していて……魔力視を使える学園生が増えた場合によからぬことを企む者が出る可能性があった。


 イセリナの魔力量をめあてに……傷物にしてしまえば手に入れられる、というような類のものだ。生まれる子についても期待できるという点も大きい。


 イセリナ自身の美しさもあって、その可能性はきわめて高かった。


 またイセリナの運動神経が圧倒的に残念なこともあって……魔法でイセリナが自分の身を守れるようになるまでは、イセリナの魔力量を隠す必要をキャナリーは感じたのだ。


 それでイセリナの入学後はすぐに自分の弟子として、キャナリーが直々に魔力量の偽装について教えたという経緯がある。


 イセリナはそのことを心から感謝していた。


 だからこの師弟のつながりは強い。


 シーアルドたちは気づいていないが、イセリナは師としてキャナリーを強く慕っているのだ。

 もちろんそれは恋心などという浮ついたものではないけれど。


 それでもただの上司と部下ではなかった。

 それ以上に厚い信頼関係がこのふたりの間には存在していた。


「姿がみえなかったからまさかと思っていたが……」


「姿がみえなくなる何かの魔法を使っていた、と考えるべきでしょう。これがもし魔力の偽装を覚えたあとだったとしたら……わたしたちは何も気づかないまま『雷撃の魔術師』がたまたま近くにいたのではないかと本気で信じていたと思います」


「イセリナくんがまちがいないというのなら、そうなのだろうな。つまり……」

「つまり?」

「……彼はすでにサラマン殿に匹敵する力を有しているということになる」


 キャナリーは数時間前の光景を思い出す。


 キャナリー自身は『雷撃の魔術師』サラマン・イスクが本当に雷撃の魔法を行使した場面をみたことがあるわけではない。


 だがあれは……どう考えても雷撃の魔法で、それも恐るべき広範囲の範囲攻撃魔法だった。伝え聞く『雷撃の魔術師』の広範囲殲滅魔法の話と同じものだろう。


 威力も十分で、オークは上位種も含めてほぼ全滅しており、オーガの上位種が立ち上がれないほどのダメージを負って瀕死になっていたのだ。


 伝聞でしか知らなかった雷撃の魔法をその目でみて……それが本当にシーアルドによるものなのかどうかは、キャナリーも確信がもてなかった。


 それをイセリナはまちがいないと断言したのだ。


 キャナリーも魔法に関してはこの弟子に全幅の信頼を寄せている。疑問が1ミリもないとはいわないが信じざるを得ないだろう。


「問題は別にありそうですね」

「別の問題とは……? 私には問題がありすぎてもはや何が問題なのか判断が難しいくらいなのだが……?」


 イセリナは師の苦悩をさらりと聞き流した。

 そして、約3年半前の入学時からさほど変化のないかわいらしさでこてりと首をかしげた。


「まず、彼は……あれだけの魔法を使ったというのに、魔力量の変化を感じませんでした」

「膨大すぎる魔力量だからではないか?」

「膨大な魔力があったとしても、あれだけの魔法を使えば揺らぐはずでは?」

「確かに……」


「あくまでも可能性の話ですけれど……彼はあれほどの魔法を極小の魔力で使えるということではないでしょうか?」


 ごくり、とキャナリーはつばを飲み込んだ。

 あの『雷撃の魔術師』でさえ、広範囲殲滅魔法を連発したという話は聞かない。


 だが、シーアルドは……それが可能なのかもしれないのだ。


「そして、彼はなぜ……自分があれだけの魔法を使えるということを隠しているのでしょうか?」

「それは……」


「彼がその力を隠そうとする限り、こちらからはうかつにその点について触れられませんし……」


 キャナリーは絶句した。

 イセリナのいう通りだったからだ。


 あれだけ危険な力を隠している相手に何ができるというのだろうか?


「今はとりあえず……シーアルドくんを信じて待つしかないのでは? とわたしは考えます」

「そう、か……」


「大丈夫ですよ、カーインド学園長。彼はとっても紳士的で、優しい子ですから」


 弟子の微笑みに対して師匠のキャナリーは苦笑いを浮かべた。


(まさか自分の婿にちょうどいいなどとと……考えている可能性はあるか……)


 シーアルドの未来はどうなるのか……相変わらず不透明なままだった。











さて。これにて第1部完!


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