0859・復帰したものの……
「で、タマが表に出て来たのはいいんだけど、盛り上がって昼まで部屋でエッチしてたと……。
そして限界が来たのか、タマはまた引っ込んだってわけね?」
童女が呆れたように言ってくるが、現代の巫女は心ここにあらずといった風じゃ。
それでも答える事はするようじゃがな。
「そう。朝にバレンタインのチョコレートを持って来たら、もう“ホワイト”なお返しをくれた」
現代の巫女は腹を擦りながら言うておるが、完全に頭が茹だっとるのう。
女として満足したからであろうが、珠もちょうどいいタイミングで出て来たものよ。
「…………親父ギャグなのか、それとも子供が出来る事を注意した方がいいのか悩むんだけど?」
「そうは言うても、もう遅いとしか言えんのう。
流石に妾も意識を取り戻した珠から、肉体の主導権を奪う訳にもいかぬ。
更に言えば、孕んでも問題ないならば好きにせよとしか思わんしな。
そうであろ?」
「………まあ、椿の家ならどうにでもしそうではあるけど、本当に良いのかしら?
あんまり良い事とは思わないんだけど……」
「問題ない。
そもそも母がそう言ってたし、なんだったら父も最後には折れる。
それに、お腹が目立ってきたら登校日だけ休めばいいだけ。
それで何も問題ない」
「進級もそれで可能だろうし、授業はVR。
体を動かさなきゃいけない事も特に無し。
たしかに隠し通す事は可能なのよねえ。
更にバックアップ態勢も五條家が完璧にするでしょうし、そうなると本当に問題が無い?」
考えてみると、現代の巫女の家は結構な金持ちであり、多くの所にコネも持っておる。
高校生で孕んだとしても、それぐらいはどうにでも出来るか。
珠の記憶でも本気と取れるような発言を、現代の巫女の母がしておるしな。
彼の者はどちらかと言うと山雷の血筋の確保であろうが、それでも構うまい。
どこで発現するかは妾も分からぬし、発現した所でいつも通り料理を楽しみながら始末していくだけよ。
それが妾のやるべき事でもある故にな。
「ま、とりあえず車を呼んだみたいだから、それに乗って一旦帰りなさい。
チョコレートを持って行っただけなのに帰って来ないんだもの、五條家でも心配しているでしょうし」
「そうかの?
帰って来ん時点で大凡ヤっておるのだと分かると思うがな。
盛り上がったらそんなものじゃろ?
実際そんなものだった訳じゃしの」
「それはそうなんだけど………それぐらい向こうも予想してるか。
なら特に心配を掛けるってのも無いのかな?」
「そうじゃろうよ。
というか、現代の巫女は久しぶりだと言っても、いつまで余韻に浸っておるんじゃ。
そろそろ、その茹だっとる頭を何とかせい」
「大丈夫、問題ない」
駄目じゃの、こやつ。今日一日はボケたままかもしれん。
待たされた挙句の盛り上がりじゃし、久しぶりなうえ不意打ちに近い。
それはボケもするかと思うが………まあ、今日一日だと思えば流すか。
「流石にそろそろ来ると思「ピンポーン」うん、って来たわよ」
「ほれ、そろそろ帰らねばならんぞ。
流石にこのままおる訳にはいくまい」
「仕方ない。
タマが次に復帰するのはいつか分からないけど、その時に期待する」
そう言って椅子から立ち上がった現代の巫女は、玄関に歩いて行って靴を履く。
そして玄関を開けると外に居た運転手に話しかけ、車に乗って帰って行った。
やれやれ、思っておる以上に濃い半日であったわ。
まさかいきなり戻ってくるとは思わんかったでな、最初は焦って少し抵抗してしもうた。
とはいえ珠じゃと分かったから、すぐに渡したがな。
それぐらいに妾でも驚く事であった。
「神様でもタマの復帰時期は分からなかったの?」
妾が昼食作りを始めると、横で手伝いながら童女が話しかけて来た。
「そんなもの分かるはずがなかろう。
前にも言うたが、心とは繊細なものよ。
いつ目を覚ますかなど、神なる身すら分からぬ。
まさかここまで早いとは思わんかったが、それでも半日ではなく、3時間ぐらいが限界じゃ。
思っておるよりも、出て来れる時間が短い」
「神様的には復帰できるようになったら、もっと長いはずだった?」
「そうじゃの。少なくとも一日ぐらいは起きておれるはず。
それが3時間ほどじゃからな、だいぶダメージは大きいのであろう。
それでも復帰の時期が早かったのは朗報であろうよ。
ここから徐々に復帰の期間は短くなっていくはずじゃ」
「あの時は………1月28日? もしくは29日だったはず。
で、今日が2月14日。
思っている以上に復帰が早かったけど、神様の予定と随分違うわね?」
「仕方あるまい。
あれじゃ、愛のパワーとか言えば済むじゃろ。
もしくは性欲のパワーか? どっちにしたところで大した違いなど無いでな。
それが復帰を早めたというところじゃろう。
どちらでも良いのではないか?」
「まあ、早いなら何でもいいと言えなくもないのかもしれないけど、3年と言われてたのよ?
それが半月ぐらいなんだもの」
「そう言われてものう。
普通はこんなに早く復帰せんのだからして、喜ぶべき事でしかあるまい。
そこに文句をつけられても困るのう」
「別に文句をつける気は無いんだけどね。
ただ、思っている以上に早かったなと、そう思っただけよ。
ま、次がいつになるかは分からないんだけど」
「そうじゃの。次がいつになるかは本当に分からん。
半月で一時的に復帰したが、次は1月後と言われても納得ではあるしの。
それでも早い方じゃ」
昼食が出来上がったので盛り付け、童女と食べつつ適当にテレビをつける。
すると、またも大陸のニュースがしておった。
ただし………
「御覧下さい! そこかしこで略奪が起こっております!
人民の怒りが爆発し、多くの所で略奪が始まっております!!」
「あらら、遂に我慢の限界を超えた?
それとも暮らしていけないから?
もしくは便乗?」
「全部じゃろうの。
こんなものは一度始まったら祭りのようなものよ。己も参加せねば損だと略奪に走る。
結局、最後には有耶無耶になるのだからして、それなら奪わねば損であろう。
そういう考え方よ」
「ああ、なるほど。奪わないと損ね。
それは大陸の人達も動くでしょうよ、自分だけ損するなんて事に納得する国というか人種じゃないし」
「じゃの。
だからこそイナゴと言われるのだし………これを見ておればイナゴとしか思えぬであろう。
このような事も歴史上、ようあった土地じゃからな。
軍や兵が略奪したかと思えば、人民が軍から略奪する。
だからお互いに監視して信用せぬ」
「日本の古い時代も似たようなものじゃないの?
武士が略奪してたじゃない」
「武士と共に略奪しておったのだ。武士だけが略奪しておった訳ではない。
つまり大陸は兵と民の奪い合いのようなものじゃ。
しかし日の本は武士と民が協力して、別の武士と民から奪っておるのだ。
そこが大きく違うところと言えるのう」
「そういえば武士の下には民が居るわけで、一緒になって略奪してたのよね」
「正しくは乱取りじゃの。
武士も略奪を許さざるを得ぬという事情もあった。
もちろん率先して奪う武士もおるのだが、大半は足軽雑兵の不満解消の為じゃ。
乱取りという略奪を許可せねば、己の方に力を向けて来る可能性があるのじゃよ。
何より足軽に銭を払う事は多くない」
「え? ………もしかして褒美が無い?」
「無いの。あるのは武士、それも功を挙げた者がほとんどじゃ。
足軽雑兵に褒美などあるわけがない。
だから乱取りという略奪を許したのだ、そうせねば戦に参加せんからの。
つまり雇う銭が無いから略奪を許したという事じゃ。
で、大陸のアレは唯の欲からの略奪じゃの。大半は」
「ああ、本当に生活が駄目で奪うしかない人は多くないって事ね」
「働ける場所が減っておると言うておったから、本当に生活が出来ん者が出て来るのはこれからであろう。
まだそういう者が出て来るには早い」
妾がそう言うと、童女も理解したようじゃ。
大陸が不安定になっておるという情報から、略奪が起こるまでが早いんじゃよなぁ。
もしかしたらワザと起こした者がおるのか……その辺りは分からんの。
妾は大陸の神ではない故、別に責任も無いしの。
ゆるりと見ておればよいだけ。
気楽なものじゃ。




