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0854・品質の話




 魔隠穴の後はバイゼル山で採掘し、その後はウェズベア森へ。

 それなりの人数が熊を一撃で倒しておるが、出来んのに頑張っておる者も混ざっておる。

 妾達は薬の原料を採取しつつ、トレントをブチ殺していく作業を行う。


 ユウヤも言っておったが、品質10++の木材は需要があるので作って稼ぎたいところじゃ。

 特に聖浄塊を買い取る為のお金は幾らあっても構わん。

 仲間達の盾なども作製せねばならんので、まだまだ要るし、それだけお金が掛かってしまう。


 「そういや、品質10++の木材って師匠も欲しがってるんだよな。

 流石に強浄木の品質10++じゃないけどさ。

 良い木材の品質10++って、どうもNPCの間でも相当に出回らないらしい。

 それだけ作るのに数が必要だからだろうけど」


 「あの方も言っていましたね。良い鍛冶には、良い炭が必要だと。

 ですが簡単に出回る物でも無いので、どうしても良い炭で鍛冶をするのは難しい。

 そうも言っておられました」


 「良い炭を手に入れるには、良い木材が必要でしょ。

 だったら木工師か錬金術師から買うしかないんじゃないの?

 でもどっちも作らなさそうな感じ」


 「そうじゃのう。

 品質10++を作るだけでも、相当の数の木材が必要になってくる。

 品質10を作った後に、更に良い品質の部分のみにしていって……じゃからな。

 質の悪い木材が山のように出るのは確実じゃ。

 大量の木材の極僅かな上澄みだけが品質10++になれる」


 「残った多くの部分は質が悪い物でしかない。

 大量の木材を使って極僅かな上澄みを作る作業。

 根気も要るし大量の素材を消費する。

 となると、やりたがらなくても仕方ない。

 素材の無駄」


 「そうなんだよなぁ。

 品質10が5本と品質10++が1本じゃ、割に合わないんだよ。

 実際には10対1くらいの差だと思うんだけどさ」


 「残念じゃが15対1から、20対1くらいじゃぞ。

 そもそも品質10++を作る為には、品質10を沢山作らねばならんのだ。

 出発点に既に品質10を要求してくる」


 「あー………それは厳しいですね。

 大量の木材をゲットしなければ作れないのがよく分かります。

 そもそも手に入る物の品質って6とか7ですもんね。

 そこから品質を10にして、更にとなると………」


 どうやら、ようやく感覚的に理解した感じじゃのう。

 始まりから品質10を要求してくるという事はじゃ、最初の段階で既に厳しいという事よ。

 その上に更に、じゃからな。

 品質10++を作ろうとせぬのも納得しかない。


 NPCですら作らんと言われても、それはそうじゃろうとしか思わんわ。

 もちろん最高の一品の為には作るのであろうが、そのような事は滅多にあるまい。

 金属であろうが石であろうが同じよ。


 もちろん鍛冶師からしたら最高の素材で打ちたいというのは分かる。

 それは分かるのじゃが、用意する方の身にもなれとしか思わんわ。

 それぐらい品質10から上は大変なのだ。

 品質Aに至っては、あのエンリエッタですら嫌がるほど。


 どれだけ大変かを考えたら、妾は無理に品質Aを作る気にはならんほどじゃ。

 そもそも一つ上の品質を作るには、目的の品質の一つ下が山のように要る。

 一つ品質を上げるだけに莫大な素材が必要なのがよく分かるというものよ。


 それも品質が上になればなるほど、倍々のように増えていくのだ。

 それは誰もが嫌がろうし、何より無理にやる事でもない。


 「確かに倍々のように増えていくってなると、品質E辺りから既に地獄か。

 だって品質Eを作るのに品質10++が大量に要るんだもんな」


 「流石にそれを考えると、誰もが品質10で止めるのがよく分かります。

 それ以上はもう趣味の領域のような……」


 「実際の事を考えたら、確かに趣味の領域と言っても間違いじゃない。

 売値が高くても、消費する素材の数を考えたら、おそらく割に合ってない。

 自分の労力も加えたら、もっと合ってないと思う」


 「膨大な数の素材を用意する。これだけでどれほど苦労するか分かりません。

 それこそ、どこでも拾える石で試すくらいですかね?

 それでも拾うという労力が掛かりますが」


 「そうだね。

 何でもそうだけど、損益分岐点を超えたら趣味の領域だと思う。

 そこを超えなくて一番効率が良いのが品質10なんじゃないかな?」


 「そうじゃの。

 だからこそ妾は品質10でプレイヤーマーケットに流しておるのだしな。

 クリムゾントータスの甲羅や火炎龍樹は売れたが、あれも聖浄塊を買う為の資金源でしかない」


 「そんなに高かったのか。

 タワーシールドの値段が怖いが仕方ないと諦めよう。

 聖浄塊製の盾が無いと、どうにもならないみたいだからな。四層目」


 「そろそろ薬の原料も木材も十分だから帰りましょうか。

 薬の原料はアマロで、木材はナミね」


 「そうじゃの。

 品質10++を作っても構わんが、木材を妾に売らんと数が足りん。

 妾一人では数が限られるでな」


 そんな話をしつつ戻り、家に入ったらソファーの部屋へと移動してマイルームへ。

 ラスティアとキャスティとファル以外を戻したら、妾は錬金部屋で精錬を始める。

 プレイヤーマーケットから売り買いし、その後はせっせと精錬をしていく。


 他の物が終わったら、次は木材じゃ。

 品質10を大量に作り、そこからかけ合わせて品質10+へと上げていく。

 それが終わったら品質10+同士を【偏質融合】していき、品質10++を作製した。

 あれだけあった木材を使うても2本しか作製できなんだか。


 妾はその2本をユウヤに優先付きで流し、メッセージを送ったらソファーの部屋へ。

 すると、すぐに現代の巫女が腕を組んできた。


 「遅かったけど、木材で時間が掛かった?」


 「うむ。今日ウェズベア森で稼いだ皆の木材が、品質10++の丸太2本になったの」


 「………たった2本は厳しいね。思っている以上に儲からないのが分かる。

 私達は固まってたからアレだけど、召喚モンスターとか支配モンスターが沢山倒してくれたのに2本かぁ」


 「仕方ないけど、そんなものじゃない?

 それでもあそこには多くのトレントが居るだけにマシでしょ。

 数が少ないところだったら、品質10++が出来なかった可能性もあるんだし」


 「ですね。そこまでして作る意味があるのかは疑問しかありません。

 良い素材を使って作られた物も、いつかは壊れますしね。

 それを考えたら、そこまで無理をしなくても……」


 「確かに無駄といえば無駄だね。

 だからこそ多くの者はそこまでしないのだし、<破滅>殿でさえ興味本位の実験でしかしないのだろうさ」


 「あの<破滅>が面倒というぐらいだから、相当の苦行である事は間違いないかなー。

 とてもじゃないけど、手を出していい領域の事じゃないと思うー」


 どこまでなんじゃと思わんでもないが、それでも彼の者が嫌がるというのは、確かに相当の事かもしれんのう。

 少し考えただけでも、誰もが嫌がるのは当然であろう。

 完全に趣味の領域だと言われればそれまでよ。

 にも関わらず、何故その品質が用意されているのかを考えると怖いがな。


 何かの時に要求されそうな気もするし、何かのイベントでやらされそうな気もする。

 そこら辺りは覚悟をしておいた方がいいかもしれん。


 「カンカン」


 おっと、ファルが呼びに来たので、さっさと食堂に行って昼食じゃ。

 食事の時には食事に集中せねば、食材に失礼というものよ。


 昼食に満足した妾はソファーの部屋からマイルームに戻り。

 全員を召喚したら個室に入ってログアウト。現実へと戻った。




 キッチンで昼食の準備を童女とし、終わったら適当な番組を見ながらの昼食とする。

 するのだが………


 「連日出てるって事は、テレビ局とこいつらって絶対に繋がってるわよね?

 やたら募金とか寄付とか必死に募ってるけどさ」


 「相当に資金繰りが悪化したのであろう。こやつらの同志とやらも相当に減らしたでな。

 大陸の国からの工作資金も入っておるのであろうが、そこは当局がある程度目を光らせておる。

 簡単には行かぬであろうよ」


 「ならこのまま終わり?」


 「完全に終わるかは微妙じゃの。

 また大陸と繋がって似たような事をする阿呆は出て来るじゃろう。

 それでも長く続いたこやつらは終わりであろうな。

 これ以上続けさせる気も無いしの」


 「未だに邪悪な思想に賛同してるってのも狂ってるしね。

 そういう狂ったのは排除しないと上手くいかないでしょ」


 「そうじゃ。病巣は切除せねば回復せん。

 腐った部分を抱えたまま健全にはなれんのだ」


 当たり前の事ではあるがな。


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