0850・戦闘の組み立て
妾は試しで月槍を持って歩く。
そして目の前に敵がいる想定で突くが、そもそも突き刺すような槍ではない。
その為、なんとも言えぬような感じで終わる。
唯でさえ、あまり槍などというのは使わんというのに、その槍の中でも殺傷力の低い物じゃからのう。
そのような事を考えておると即殺鬼が現れたので戦うが、やはりしっくり来んな。
構えれば何かが変わるかと思うたが、特に何も変わる事は無い。
当たり前ではあるが、やはり妾は槍が好きではないの。
これなら棒や杖の方がマシじゃ。
「それでも武器である以上は、それなり以上に使えるがのう!」
ガキン!
即殺鬼の鎌を弾き、引き戻した後に首を突く。
それは左の鎌に防がれたが、やはり【浄化力強化】が付いた武器は嫌がっておるの。
近づく事さえ嫌ならしく自ら離れたわ。
再びこちらの隙を窺っておるようじゃが、あんな隙のある姿を晒してはのう……
妾は再びステップで踏み込みつつ、首元へと月槍を突き出す。
当然嫌がった即殺鬼は鎌で防ごうとするが、妾は素早く穂先を回転させ、本命の引っ掛けへと移行する。
鎌先を月槍の穂先で引っ掛けられた即殺鬼は、そのまま梃子の原理で鎌先を折られた。
ベキィ!
関節部分で見事に折れたが、しかし【身体強化】を全開で使っておるから微妙じゃな。
そこまでせねば折れんのならば、無理して折る必要がない。
これならば素早く倒しにかかった方が早いのう。
妾は一度バックステップで離れると、再びにじり寄っていく。
じりじりと近づいたら、再び一気に首元に突きを放つ。
即殺鬼は左の鎌で防ごうとするが、妾は途中で引き戻し、再度首元に対して突きを放った。
流石に一度スカされたので防ぐ事は出来ず、即殺鬼の首に直撃。
相手を地面に倒す事に成功した。
そのまま妾は槍を引き戻し、次は上段から一気に振り下ろす。
当然、脳天をめがけて振り下ろしており、それは狙いを過たずに直撃。
頭を潰しての勝利となった。が……
「不満じゃ! 大いに不満じゃ!!
こんなもの納得できるか! 使いにくくて仕方がないわ!
対人戦ならまだしも、モンスター相手に月槍なんぞ使えるか!!」
思わず地面に叩きつけたくなるほど使い勝手が悪かった。
引っ掛けや弾く事などにも使えるが、肝心の殺傷能力はお察しレベルであり、鈍器として使った方がマシなレベル。
これはあまりに酷いので、戻ったら素材として別の何かに変えて売り飛ばすか。
そっちの方が有効利用できよう。
もしくは皆の武器でも作ればよい。
槍は捨てて十字架棒を使った方が遥かに有意義じゃ。
この三日月の刃がイライラしてならんのだが、本っ当に使いにくくて仕方がないわ。
あまりにあまりで碌でもない事しか分からん。
槍の最大の武器である突きが役に立たんのだから、最初から攻めの選択肢が狭まっておる。
即殺鬼は嫌がってくれたが、突きの威力が大した事ないので止めの一撃に使えんのだ。
槍であるにも関わらず鈍器にように使わねばならん。
それはつまり、槍なのにも関わらず突きを主体に組み立てる事が出来ぬという事よ。
そこに最大のイライラの原因がある。
槍であるにも関わらず、戦闘の組み立ては鈍器の扱い。
更には槍最大の攻撃である突きが、牽制か押し倒す事にしか使えん。
感覚が普通の槍と違い過ぎて、その感覚の違いでイライラとしてくるのだ。
厄介極まりないわ。
「己で作った物とはいえ、ここまで使えぬのは想定外じゃ。
頭の中ではもうちょっと使える物だと思っておったのだが、想定以上に使えぬとはな……。
ま、それが分かっただけよいか、二度と使わねばよいし、作らねばよいだけよ」
妾は月槍を仕舞って十字架棒を取り出す。
月槍とて武器として作られたという歴史的な経緯があるが、それでも十字架棒の方がマシなのだからのう。
何とも言えぬ。
もちろん非殺傷系の武器として作られた経緯があるので、元々そんな物で戦おうとするのが論外といえばそれまでなのだが、それにしてものう………。
まあ、刺又で戦おうとしたと考えれば、愚かであるという事が分かるというものか。
捕具はしょせん捕具というところであろうな。
決して敵を倒すというものではなく、敵を取り押さえる為の物でしかない。
今の妾は一人であるが故に、取り押さえても意味が無いのだ。
他に戦ってくれる者もおらぬでな。
ならば武器を持って敵を倒さねばならん。
再び即殺鬼が現れたが、妾は十字架棒で相手の首を突く。
当然防がれるものの、気にせずに引き戻して再び突いた。
今度は左の鎌で防がれたが、再び引き戻して突きを放つ。
妾は引き戻す時だけ<瞬撃>を使用しておるからか、即殺鬼は鎌で防ぐので精一杯じゃの。
唯でさえ【浄化力強化】が付いておるからか、いつもより力が出んし動きも遅い。
先程の月槍の時も同じであったが、突きを連打しておる方が手っ取り早いの。
これを続けておると、何れ最後には遅れて直撃を与えられるであろう。
でも妾的に楽しくないのじゃよなぁ。
という事で引き戻したら、今度は振りかぶって振り下ろす。
即殺鬼は両鎌で防ごうとするが………
ベキィ!!
「あらら、両鎌共にお亡くなりになるとはの!
【浄化力強化】の御蔭かもしれんが、こんな隙を逃す妾ではないわ!!」
両鎌が潰れた後、妾は十字架棒で首を突いて転倒させ、そして勢いよく脳天に振り下ろす。
ドゴン!!
その一撃で頭が潰れて死亡となった即殺鬼は倒れて消えていく。
結局のところ、十字架棒でも月槍でも戦い方そのものは変わらんな。
まあ、元々からして鈍器として使う戦い方なので、仕方がないのであろう。
しかし相手の鎌を叩き壊すのは、やはり十字架棒の方がやりやすい。
元々鈍器なのと形状的に殴りやすいのだ。
他の憤死鬼と狂死鬼に対しても何度か使って感覚を確かめておくか。
…
……
………
使い勝手を試したが、憤死鬼も防御ごと壊す形で使うのが手っ取り早かったの。
上の腕を潰せば勝利に近づくし、【浄化力強化】の武器は近づくのさえ嫌がるのだ。
あの反応は戦いの上で隙を作りやすいので助かる。
御蔭でパターンさえ作れば簡単に勝てるようになったわ。
そして狂死鬼はそもそも瘴気を撒き散らすだけでしかない。
それ以外に特徴など持っておらんし、【浄化力強化】の前には弱体化してしもうておる。
当然ながら三種の敵の中で一番簡単であり、大した抵抗も無く倒した。
正直に言って、最初から頭をカチ割りに行けば良かっただけじゃ。
実に簡単な事じゃの。
つまり浄命石の直刀であれば首を落とし、十字架棒であれば頭を潰せば良いだけ。
聖浄塊の小太刀に至っては、相手の瘴気防御をほとんどゼロにしてしまうでな。
相手の動きに関わりなく斬り裂いてしまえばいいだけよ。
それを考えると、やはり聖浄塊の武器が一番簡単に勝てるのう。
相手の防御も何かもを無視して斬り裂けるというのは、本当に楽で強い。
ある意味で真の特効武器と言えるのかもしれんな。
「さて、そろそろ時間も良い頃合いじゃ。
皆と合流して帰るかのう」
妾は時間なのを確認したので、皆を探して移動を開始。
戦っておるならば音がするので分かるはず。
そう思ってウロウロし始めたのだが、あっさりと仲間達を見つける事ができた。
セナも皆と合流しておったのか、今はエストが嫌がらせをしておるのを見ておる。
「敵が前に出ようとする度に【セイントバレット】を顔に放って邪魔をするとは……。
嫌がらせが得意だと言われるはずじゃ」
「カ!」
誇らしげにするでないわ、まったく。それより早う倒せ。
相手がアンデッドとはいえ嬲るのはどうなんじゃ?
あまり褒められた事ではないと思うがな。




